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スモールビジネスでもできるお金がかからない市場調査

2021.03.23

著者:弥報編集部

監修者:山路 達也

「市場調査は、大手の企業が実施するもの」と考えられがちですが、実はスモールビジネスこそ実施するべきものです。

潤沢な資金がないスモールビジネスでは、商品開発や新サービスを次から次へとリリースすることはできません。よって少しでも成功の確率を上げるためにも、市場調査は必須といえるでしょう。

市場調査にはお金がかかるというイメージも強く、中小企業ではなかなか実施できないと思われるかもしれません。しかし中には、それほどお金をかけずにできる市場調査もあるのです。

そこで今回は、スモールビジネスが市場調査を行うべき理由や実施メリット、安価に市場調査を行う方法などについて、株式会社HATAGO CONSULTING代表取締役社長である山路 達也氏に解説してもらいました。

スモールビジネスにとってなぜ市場調査が重要なのか?

市場調査とは簡単に説明すると、ビジネス全体に関する情報を収集する手段です。業界全体とターゲット市場に関する、すべての重要な情報を取得することを主な目的としています。

情報の種類としては顧客の購入行動や市場パターン、および競合他社の長所と短所などが代表的です。これによりビジネス成功の基盤を形成します。また最大限の可能性を引き出すために、リソースをどこに投資するかも分かるでしょう。

さらに、収集された情報は新しい市場や機会の特定にも役立ちます。

一般的な市場調査ではどんな調査を行うのか

市場調査を行う手段の種類は、「定量調査」「定性調査」「一次調査」「二次調査」の4つに分けられます。

定量調査

「定量調査」とは、アンケートやフィールドワークなどで得られたデータを集計・分析する統計的な調査方法です。人数や分量といった明確な数値の大小で判断できる点が、定量調査のメリットになります。
定量調査は市場調査の中で、最も一般的な手法といえるでしょう。

定性調査

「定性調査」とは対面インタビューなどを行うことで、ターゲットの意見や反応を調査する調査方法になります。したがってマーケティングできていないデータの収集や、製品・サービスに対するターゲットの反応を確認することで、次の打ち手を導き出すヒントを得るのが定性調査の主な目的です。

一次調査

「一次調査」とは社内外の情報ソースを活用することで自社の製品やサービス、機能改善などに役立つ情報を取集する調査方法です。一次調査におけるデータ取得方法としては、個別インタビューやグループインタビュー、観察などさまざまな方法が挙げられます。
一次調査は特定ターゲットにスコープできるため情報価値は高いのですが、コストが高くつく点がデメリットといえるでしょう。

二次調査

「二次調査」は一次調査とは異なり、第三者が入手済のデータである二次情報を活用した調査方法です。二次調査のデータソースにはWebサイトや雑誌、政府などが提供するデータなど無料のものから、マーケティングやコンサルティング会社が販売している有料のものがあります。
既に集計・分析済みのデータも多く、ターゲット市場のデータがすぐに入手できるため費費用対効果が高い反面、調査内容が汎用的でターゲットに特化されていないもあるというのが、デメリットといえるでしょう。

スモールビジネスを行う企業が市場調査を実施するメリット

ビジネスを展開するうえで、市場調査は非常に重要となります。

市場調査を実施することで「競合分析」「顧客のフィードバック」「新製品のアイディア」「市場動向の把握」「価格設定の補助」「消費者ニーズ発見」といったマーケティング戦略を立案するためのデータが得られ、競争力や収益の増加につながるためです。

そもそも収益が出ない施策に投資したいと考える企業はありません。限られた予算で取り組んでいる中小企業にとっては、なおさらでしょう。

また、こうしたデータが得られることで、企業側には以下のようなメリットもあります。

ビジネス上のリスク軽減

市場調査で市場動向や消費者ニーズが把握できれば、ビジネス上のリスクを軽減できます。
昨今の先行きが不透明な市場状況において、新規事業やサービスを成功させるのは至難の業です。
よって市場調査を行うことで、安定したマーケティング施策の実施や顧客メカニズムの策定を行い、ビジネス成功の確実性を上げることが重要になります。

マーケティングや販促の最適化

市場調査によって市場やターゲットを絞り込めれば、マーケティングや販促を最適化する方法が把握できます。そのため、費用対効果の高い施策の実施が行える可能性が高くなるのです。

市場での競争力向上

市場動向や競合他社の状況、顧客や消費者のニーズを正確に把握できれば、自社製品やサービスの市場における競争力を向上できます。顧客満足度を上げ、競合につけ入る隙を与えないようにするためにも市場調査は非常に重要です。

市場調査を行うべきタイミング

企業が市場調査を行うタイミングは事業計画や戦略の策定時、新規事業・サービスの検討時、マーケティング・販促施策の検討時などです。
しかし多くの企業が市場調査を軽視しているのが、現状といえるでしょう。特に企業側がサービスの提供を急いでしまった場合に、そのような思考に陥りがちです。その結果、ビジネスと顧客の間にギャップが生じてしまいます。
適切な情報に基づいた意思決定を行い、ビジネスの失敗を回避するためにも、上記タイミングにおいて市場調査を実施してください。また調査結果を組織計画と統合することで、ターゲット市場の変化にも適応しやすくなります。

中小企業が市場調査を行う方法

ネット調査は、ある程度のネットリテラシーがあれば安価に実施することができます。場合によっては、自力で調査することも可能です。

例えば、Web検索であれば「Google Trends」を使うことで、自社商品やサービスなどが検索トレンドに入っているかどうか調査できます。またSNSであれば「#銀座」「#料理屋」「#日本料理」「#和食」「#割烹」などというように、関連ハッシュタグ検索で競合調査が可能です。

これらを調査したうえでオンラインコンテンツの制作や改修などを行い、インターネットの検索順位向上に役立てます。

予算が限られた中小企業がコンテンツ投下量に見合った予算を策定する際、「どこにコンテンツを配置していくか」「置く場所はどこが最適なのかという」といった調査を、検索キーワードやハッシュタグを活用して判断するのが一般的です。

例えば「Indeed」などと同様の求人媒体展開を検討している企業があった場合、「求人」というキーワードで結果を出すために、どの程度のコンテンツ量や予算が必要かを確認すると、中小企業では不可能なレベルだということが分かると思います。したがって中小企業はそことは別のポジションを取る必要があるわけですが、その勝負できるポジションを見つけるためにGoogle Trendsやハッシュタグを活用します。

一方キーワードを検索した結果、広告がついているかどうかも重要なチェックポイントです。広告がついていた場合は、その単価がいくらなのか確認して自社の広告予算で勝負できるか確認しましょう。特にスモールビジネスの場合は、広告が既に貼られているキーワードで勝負するのは危険だと思います。

なおウェブサービスを利用した「Questant」や「Fastask」といった安価な市場調査サービスについても、ターゲットに対して求めているアンケートデータが徴収できているかを判断して、取捨選択をしましょう。

さらに国や行政が提供するデータや各種企業・機関のオープンデータなども、マーケット規模を把握するうえでは必要なデータになります。数字を考慮し、自社のビジネスポジショニングを導くことが可能です。競合の施策を調査することで、よりブラッシュアップしたオンライン戦略を策定することが、最も重要なポイントになります。

市場調査と単純なアンケートとの違い

市場調査は、過去の流れや現在までの状況を確認する手段になります。一方、今後の流行や展開を予測する手段がアンケートです。

そのため、目的に応じて両者を上手に使い分けていく必要があるでしょう。また、市場調査は基本的に情報を数値化しますが、アンケートでは顧客や見込み客が考えている思いとして言葉を収集する点がポイントです。

市場調査結果の分析方法

市場調査で収集したデータは、新たなセールス方法の発見にも役立ちます。

例えば、キャンペーン実施時に取得した成功事例のデータを分析して、顧客が成約するまでのステップや体験価値を調整することで、成約率を上げることができるでしょう。また、市場調査のデータから見込顧客の詳細が分析できれば、チャネルごとに最適な販売施策を設計することも可能です。

一方SNSやブログ、ランディングページ、メルマガなどから取得したデータも、有効活用できます。

例えばFacebookやGoogleディスプレイネットワーク(GDN)経由で獲得した顧客の成約率が高い場合などは、広告予算決定の判断材料に使用できます。

そして、SNSで得られたデータとアンケートや電話などで得られたデータをクロス分析することで、顧客が他社のどんなサービスや商品を利用しているかの情報なども得ることが可能です。これにより顧客に対して一貫性のある商品や、サービスの提供がしやすくなるでしょう。

以下で、小売業と飲食業における市場調査データの活用事例を紹介します。

小売業の事例

小売業に関しては、アパレルのクライアントの事例を見ていきましょう。
どの年代のどういったカテゴリに対してターゲットを絞っているかという点が重要になるのですが、「地名 カジュアル」「地名 年代」「20代 トレンド」といったGoogle TrendsやInstagram上のハッシュタグ投稿数を確認して、競合とどういった差別化を図るべきかを検討します。
また、ユニクロなどの大手と被らないようなポジショニングをどうしたら取れるのかという点にも留意した、差別化できるキーワード選定も重要です。もちろん、店舗への来店促進課なのかECへのランディングかによっても、大きな違いがあります。

飲食業の事例

飲食業の市場調査の事例としては、銀座にある割烹料理のお店でデジタルマーケティングに落とし込むための市場調査を定期的に実施しています。
具体的には、「銀座 料理屋」「銀座 日本料理」「銀座 和食」「銀座 割烹」といったGoogle Trendsの傾向や、Instagram上のハッシュタグ投稿数などを計測したうえで、どれに広告予算を投下するかを決めました。
競合調査を実施し、競合と差別化をつけるためのブランディングと類似ターゲット顧客に対するマーケティング戦略を策定することにより、新規顧客開拓のチャネルを設けて、ロイヤルカスタマー化する施策が実行できるのです。

上記を実施するために自社データを活用したメールマーケティング、リターゲティング広告などで顧客化につなげていきます。1つ注意してほしいのが、市場調査を定期的に行っておかないと活きたデータ活用にならないということです。

ちなみに、飲食業界は他の業界に比べてデジタル化が非常に遅いため、現在はデジタル化できているだけでも差別化が図れている段階と考えていいでしょう。

昨今の先が見えない市況においては、顧客ニーズや企業側が行う戦略が目まぐるしく変化しています。世の中の流れに柔軟に対応するためにも、定期的な市場調査を行うべきなのです。

この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

山路 達也(株式会社HATAGO CONSULTING 代表取締役社長)

米フォーブス誌でフォロワー2200万人を誇るNo.1インフルエンサーと評される、キアラフェラーニのキャスティングの仕掛け人。ミシュラン8年連続獲得実績「ぎんざ山路」の経営を手掛ける。株式会社HATAGO CONSULTING

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