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応募ゼロから脱却!今すぐできる「ハローワーク求人票」6つの改善ポイント

2025.06.05

著者:弥報編集部

監修者:五十川 将史

企業がハローワークに求人を出しても、問い合わせや応募がまったくないということは、決して珍しいことではありません。そのまま何もせず、ただ反応を待ち続けてしまうケースも多く見られます。しかし、反応がないからといって、ハローワークや求職者に対して不満や不信感を抱くだけでは、問題の解決にはつながりません。

まずは、現在公開中の求人票が過去に出したものの使い回しになっていないか、労働条件が競合他社と比較して見劣りしていないか、求職者が本当に知りたい情報が十分に掲載されているかなどを確認し、反応が得られない原因を分析・見直していくことが必要です。

今回は、ハローワークを活用した採用支援を専門とするウエルズ社会保険労務士事務所代表の五十川将史さんに「反応がない」「応募がない」求人票の改善策について、具体的な対処法を紹介いただきました。


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「3か月応募ゼロ」は見直しのサイン!求人票はタイミングで磨き直す

ハローワークに求人を出しても、いつ問い合わせや応募があるかは予測できません。しかし、一定期間が経過してもまったく反応がない、あるいは問い合わせはあったものの応募には至らないといった場合には、何らかの対策を検討する必要があります。

ハローワーク求人票の紹介期間は「求人を受け付けた日(求人受理日)」の翌々月の月末までと定められています。例えば、5月8日に求人を受け付けた場合、紹介期間は7月31日までとなります。この期間が1つの見直しのタイミングといえるでしょう。

もちろん、紹介期間が終了しても同じ内容で再掲載することは可能です。しかし、3か月間で思うような反応が得られなかったという事実を踏まえると、求人票の内容自体に改善の余地があると考えるべきでしょう。

また、見直しのタイミングとして意識したいのが「離職者が増える時期」です。例えば、雇用保険の資格喪失が多いとされる4月を控えた3月をはじめ、6月、9月、12月といった節目の時期には、転職を検討する人も増える傾向にあります。これらの時期を見据えて求人内容をブラッシュアップしておけば、求職者の目に留まる可能性も高まります。

さらに、ハローワークからの問い合わせ内容も、見直しのタイミングを図るうえで参考になります。問い合わせがあったということは、求職者が求人に関心を持ったものの、内容に疑問を感じた、あるいは必要な情報が不足していた可能性があります。多くの求職者は、こうした疑問を解消できないまま応募を見送ってしまいます。

つまり、問い合わせ内容は他の求職者も同様に感じている「説明不足のサイン」ともいえます。実際に寄せられた質問や疑問点を踏まえて、説明や情報を具体的に補足・修正していきましょう。

「応募ゼロ」からの脱却!求人票の見直しで押さえたい6つのポイント

応募がない場合、最初に考えるべきは「なぜ反応がないのか?」という原因の分析です。

賃金や労働条件が競合他社と比べて見劣りしていないか、求人内容が企業側の一方的な「自慢話」になっていないか、応募要件や選考のハードルが高すぎないか、必要な説明が不足していないか、そして企業の魅力が求職者にきちんと伝わっているか。

こうした点を求職者の立場に立って見直すことで、意外な盲点や改善のヒントが見えてくるでしょう。

ここでは、求人票を見直す際に特に押さえたい6つのポイントを紹介します。

1.労働条件の見直しだけに偏らない

求人に反応がないと、真っ先に「賃金が安いのでは?」「休日が少ないのでは?」といった条件面の問題に目が行きがちです。もちろん、他社と比べて条件が大きく劣っていれば見直しは必要です。しかし、賃金や休日数といった条件はすぐに改善できないことも多いため、「これ以上は無理」と早々に諦めてしまう企業も少なくありません。

とはいえ、求職者が応募を決める基準は、条件面だけではありません。仕事内容や働き方、社内の雰囲気、成長機会などを重視する人も多くいます。したがって、条件だけにとらわれず、求職者の多様な価値観やニーズに応える視点で見直すことが、応募につながる第一歩になります。

2.ターゲットの明確化(「だれに届けたい求人か」を具体化する)

求人票を作成する際には「だれに応募してほしいのか」というターゲット像を具体的にイメージすることが欠かせません。例えば「年齢・経験・資格不問」といった条件は、一見、間口が広く応募しやすいように見えますが、実際には「だれに向けた求人か?」がぼやけてしまい、印象が薄れてしまいます。

「今は異業種で働いているが、資格取得を目指してキャリアチェンジしたい人」「子育てがひと段落し、短時間勤務から仕事復帰を考えている人」といった具体的な人物像を想定すれば、求人内容もそれに合わせて的確に設計することができ、応募の確率も高まります。

3.求人票を分けて訴求力を高める

1つの求人票で「経験者歓迎・未経験者も可」や「資格あれば尚可・無資格でも応募可能」としているケースも多く見られます。しかし、経験者と未経験者、有資格者と無資格者では、本来、業務内容も賃金も異なるはずです。結果として「どっちつかず」の求人内容になってしまい、どの層にも響かないという事態に陥りがちです。

募集対象が複数ある場合などは、いっそのこと求人票を「経験者向け」「未経験者向け」などと分けて、それぞれ届けたいターゲットに特化した内容にすることで、求職者にもわかりやすく、より訴求力のある求人票になります。

4.アピールポイントの再整理

求人票には、自社の魅力を伝えるアピール材料が欠かせません。しかし、「業界シェアNo.1」「創業◯年の老舗企業」といった会社の実績ばかりを並べてしまうと、「企業目線の自慢話」になってしまうこともあります。求職者が本当に知りたいのは、「働く人にとっての魅力」です。

例えば、未経験者であれば「指導体制が整っている」「資格取得を支援してくれる」といった安心材料が響きますし、子育て中の求職者であれば「残業の有無」や「有給休暇の取得実績」などの情報が応募判断のカギになります。「だれにとっての魅力なのか」を意識して、アピールポイントを整理・強調することが重要です。

5.求職者が「働く姿」を想像できる情報を盛り込む

求職者は、求人票を見ながら「会社で働いたときの自分の姿」を想像しています。そのため、仕事内容や勤務体制、職場の雰囲気などをできるだけ具体的に伝えることが大切です。

仕事内容の例

「○○業務全般」とだけ書かれていても具体的な内容は伝わりません。「入社後3か月は◯◯業務を担当し、先輩のOJTを通じて独り立ちを目指します」といった記述があると、リアルな働くイメージが湧きます。

勤務体制の例

シフト制ならモデルパターン、会社カレンダー制なら年間休日や長期休暇の日程などを具体的に記載することが、応募の後押しになります。

職場の雰囲気の例

「明るい職場です」だけではなく、「職場改善の提案制度があり、昨年は新入社員のアイデアが採用され、社長賞を受賞しました」といった具体例があると、イメージが鮮明になります。

6.求職者の不安や疑問に応える情報を

求職者は、仕事内容や条件のほかにも、「この会社で働いて大丈夫だろうか?」というさまざまな不安を抱えています。そうした不安を解消する情報も積極的に伝えましょう。

〈具体例〉

  • 資格取得の支援制度
  • 業務災害時の任意保険への加入状況
  • 退職金や退職金共済制度の有無
  • 託児所・保育所の有無
  • 入居可能住宅の提供状況(社宅・借り上げ住宅など)

これらの情報は、特にUIJターン希望者や遠方からの求職者にとっては重要な判断材料となります。自社が力を入れている制度や取り組みが求人票にきちんと盛り込まれているか、今一度確認してみましょう。

求人票の見直しは一度やって終わりではありません。見直し後も反応が乏しければ、それは「まだ求職者に刺さっていない」というサインです。改善と検証を繰り返すことで、求人票の精度は徐々に高まり、やがて「応募につながる求人票」へと育っていきます。

ハローワーク窓口も活用!客観的な視点で求人票をブラッシュアップ

求人票を出してもなかなか応募がない場合は、一度ハローワークの窓口に出向き、相談してみるのも有効な方法です。ハローワークでは、「応募がない」「求人票の内容はこれで良いのか」といった悩みに対して、事業主向けのサポートを行っています。

例えば、相談を通じて得られる情報には以下のようなものがあります。

  • 募集職種に対する求職者の登録状況(人数や年齢層など)
  • 対象職種に必要な資格を保有している求職者の数
  • 地域内における求人倍率や求職動向
  • 同じ職種の他社求人における平均賃金・労働条件

これらの情報を基に、自社の求人票が現在の求職者層とマッチしているかを再確認できます。例えば、「若手を採用したい」と思って求人を出していても、実際にはその地域で若年層の求職者が非常に少なく、中高年が大半を占めているといったケースもあります。

このような場合には、対象とする年齢層の見直しや、仕事内容・待遇の再検討が必要になるかもしれません。

また、同職種の他社求人との比較も重要な視点です。自社の賃金や待遇が、求職者の希望水準と比べてどうか、客観的に把握できることは大きな判断材料になります。さらに、ハローワークの担当者からは、「求人票にどのような改善点があるか」といった具体的なアドバイスを受けることもできます。

本来であれば、こうした情報は求人票を作成する段階で確認しておくのが理想です。しかし、思うような反応が得られなかった場合には、紹介期間の一区切りのタイミングなどで、改めてハローワークのサポートを積極的に活用しましょう。客観的なアドバイスを基に求人票を見直すことで、より多くの求職者の目に留まりやすくなり、応募につながる可能性を高めることができます。

繰り返しの中に成長あり!求人票は「育てる自社メディア」

ハローワークに公開されている求人票の多くは、紹介期間(最長で3か月)を過ぎて再掲載する際にも、内容を変更せずにそのまま更新されているケースが少なくありません。しかし、これが機会損失の原因になっているケースも多いのです。

なぜなら、求職者の立場から見れば、何度見ても同じ内容の求人票は「またこれか」と感じられ、スルーされてしまう可能性が高くなるからです。一方で、内容が少しでも変わっていれば、それだけで「何か新しくなったのかな?」と再び関心を引き、応募のきっかけになることがあります。

つまり、紹介期間が終わった後の「更新」は単なる延命措置ではなく、求人票を改善する絶好のチャンスなのです。一度出した求人票で思うような反応が得られなかったとしても、それは失敗ではありません。むしろ、どこを見直すべきかのヒントを得たという点で、次につながる「スタート地点」ともいえます。

「募集職種の魅力が伝わっていないのではないか」「表現が硬すぎてイメージが湧きにくいのではないか」「条件が相場とかけ離れているのではないか」などといった視点から内容を見直すことで、求人票をより求職者の目線に寄り添ったものにブラッシュアップできます。

このような改善を繰り返すことで、結果的に求職者からの問い合わせや応募が増えるだけでなく、自社内にも「どうすれば人が集まる求人票がつくれるか」といった実践的なノウハウが蓄積されていきます。これは、採用活動を持続的かつ戦略的に行っていくうえで、大きな財産となります。

求人票は、単なる採用の手段ではなく、自社の魅力を伝えるメディアでもあります。どんなに魅力的な企業であっても、その良さが求人票にうまく表現されていなければ、出会いたい人材には届きません。試行錯誤を恐れず、常に求職者目線を意識しながら少しでも改善を積み重ねていけば、やがて「会いたい人材」と出会える可能性は大きく広がっていくはずです。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

五十川 将史(ウエルズ社会保険労務士事務所 代表)

1977年、岐阜県生まれ。明治大学卒。大手食品スーパーの店長や民間企業での人事担当者、ハローワーク勤務を経て、独立。ハローワークを活用した採用支援を専門としている。商工会議所、労働局、社会保険労務士会などでの講演実績も多数あり、これまでの受講者は1万人を超える。著書に『中小企業のためのハローワーク採用完全マニュアル』(日本実業出版社)、『ハローワーク採用の絶対法則』(誠文堂新光社)などがある。

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