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脱・ダラダラ採用!中小企業が採用活動を成功させるための実践アプローチ

2025.01.21

著者:弥報編集部

監修者:佐藤 裕康

少子化の影響によって新卒採用・中途採用、共に売手市場化が進んでいます。「若手を確保できない」という悩みを持つ経営者も多いことでしょう。特に専任の採用担当者がいない中小企業の場合には、経営者自らが採用活動に動いているケースもよく見受けられます。今回は、株式会社ジェイックの佐藤裕康さんに、中小企業の採用における応募者集めのポイントを解説いただきました。ぜひ参考にしてみてください。


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求人方法を選ぶうえで大切な3つの要素と「ダラダラ採用」のリスク

採用活動を成功させるためには、以下の3つの要素を掛け合わせて最適な求人方法を選ぶことが重要です。

  1. 応募者に求めるスキルや経験
  2. 自社の採用力(どれぐらい応募が集まるか?)
  3. 人材の必要性

まず「求めるスキルや経験」が高く、「採用力」が低ければ、採用難易度は上がります。具体的なことは後述しますが、その場合には、費用を投下する、または成果報酬型のサービスをうまく使って求人方法の網を広げることが必要になります。

また、求めるスキルや経験にこだわりすぎることで採用が難航するケースも多いです。必要な人材を確保できないリスクを軽減するためにも、柔軟性を持って基準を決めましょう。

次に、「人材の必要性」も求人方法を選ぶうえで欠かせない要素です。求人方法を選ぶ際、採用人数が少なく、例えば「年間で2~3名採りたい」といった中小企業の場合、採用に費用をかけたくない心理が働きやすいものです。経営者としては大切な考え方ですが、費用のかからない手法は採用成功までに時間や手間がかかることが多く、「ダラダラ採用」になる危険を伴います。

特に、現在の採用活動において、

  • 採用ターゲットが採用競争の激しい属性(若手、ミドルの即戦力人材、有資格者など)
  • 自社の母集団形成力が高くない(知名度がない、待遇は大手よりも低いなど)
  • 採用の必要度が高い(現場に負荷がかかっている、1年以内には必ず採りたいなど)

といった状況であれば、費用がかかる求人方法を使っても短期間で採用を成功させることがおすすめです。

ダラダラ採用になると、最も貴重な経営資源である「経営層の工数と意識」がいつまでも採用活動に割かれる状態になります。「良い人がいれば採りたい」という姿勢を続けると、経営層の重要なリソースが採用活動に割かれ続け、他の経営課題に支障をきたす可能性があります。

例えば退職者の補充が必要であったり、数年以内にシニア層の大量退職が見込まれる、事業拡大のために若手人材が不可欠といった状況があったりする場合には、採用の必要性を正しく認識し、早急に対応することが求められます。現場の人手不足が続けば、既存メンバーのモチベーション低下や離職のリスクも高まり、企業全体に悪影響を及ぼす可能性があるためです。

採用の必要性が高い場合には、思い切って費用を使うことを決めて、速やかに採用活動を成功させましょう。

求人方法を選ぶ際の基本的な考え方

採用活動を成功させるためには、採用人数やターゲットに合わせた適切な求人方法を選定し、効果的に活用することが重要です。特に採用人数が少ない場合は、応募者の数を増やすことよりも、ターゲットとなる応募者とどのように接点を持つかに注力することがポイントとなります。

専任の採用担当者を持たない中小企業では、応募者1人ひとりとの密なコミュニケーションが採用成功のカギを握ります。採用枠が3人であれば、3人の応募で3人を面接し、全員採用できる状態が理想です。母集団を増やすことに労力をかけるのではなく、限られた応募者と接触し、直接対話を通じて自社の魅力を伝えることが効率的な採用活動につながります。この「接近戦」を通じて、応募者の志望意欲を高めることで、無駄を省いた採用が実現します。

利用する採用媒体や採用チャネルも、「相手と直接会えるか」「1対1で魅力を伝えられるか」という点を基準に選定しましょう。知名度や業界人気などに左右されやすい大手の求人サイトや求人広告よりも、応募者と対面で話せる可能性の高い採用イベント、人材紹介、成果報酬型のダイレクトリクルーティング(スカウトサービス)の3つが有効です。

特に採用イベントは、直接応募者と顔を合わせ、自社の魅力をダイレクトに伝えやすいという良さがあります。人材紹介会社の担当者に自社の魅力を伝えてもらうのもよいですが、やはり、魅力を一番理解している経営者自身が直接話す方が効果的です。採用イベントの中でも、「合同企業説明会」や「選考直結型の就活イベント」があげられますが、後者は説明会と選考がセットになっているため、応募者と企業の希望が合致すれば、迅速に採用プロセスを進められる利点があります。

費用面でも、採用支援会社が行う「選考直結型の就活イベント」は成功報酬型であり、参加費用はかからないことが多く、自治体などの行政が行う場合は、無料で参加できるケースもあります。先ほど「採用の必要性が高い場合は費用を使うことも大事」と述べましたが、選考直結型の採用イベントは、この点でも利用しやすいといえます。

このように費用をかけることにより、短期間で採用できる確率は高まりますが、一方で中長期的な採用活動においては、費用をかけずに行えることも多々あります。短期的には費用を投下して効率良く採用しながら、中長期的には費用のかからない手法を実施し整備することでコストを抑えていくのがよいでしょう。

費用をかけずに行える施策として、まずは無料の作成ツールを使った採用サイト(応募ページ)の作成が挙げられます。現在、採用サイト(応募ページ)がないようであれば、必ず作りましょう。またSNSを活用した情報発信や、社員、取引先、知人に人材を紹介してもらうリファラル採用も効果的です。これらの方法は即効性こそありませんが、実施しておくことで将来的に採用コストを削減し、成功率を高める基盤を築くことができます。

採用ターゲットに合わせた求人方法の選び方

次に採用ターゲットに合わせた求人方法の選び方について、「若手人材」「キャリア層・専門性を持った人材」「年齢・経験不問」の3つの場合について説明します。

若手人材の場合

若手採用には、若手人材に特化した採用サービスが有効です。掲載料が発生するナビサイトよりも、成果報酬のエージェントを複数利用する方法がおすすめです。成果報酬型は、費用が発生するタイミングが採用成功時となるため、コストを効率的に管理できます。また若手人材を採用する際には、ターゲットの設定を少し柔軟に見直すことで、一気に採用が進む場合もあります。この具体的な方法については、次章で詳しく解説します。

キャリア層・専門性を持った人材の場合

次に「キャリア層」や「専門性」を持った人材の場合も、ある程度ターゲットに特化した採用手法を選ぶとよいでしょう。特に、資格や専門知識を持つ人材を求める場合、総合型の求人サービスを利用するとターゲット外の応募や推薦が増え、その対応に多くの時間を割くリスクがあります。こうしたケースでは、特定分野に強い人材紹介サービスや、業界に特化した求人媒体の利用が効果的です。

また、高い専門性を持つ人材には相応の条件を提示する必要があるため、採用コストが高くなる点も念頭に置き、効率的に進めることが求められます。

年齢・経験不問の場合

年齢や経験を問わない場合は、費用対効果の観点からハローワークの活用が最適です。ハローワークは利用に費用がかからず、さらに求人内容によっては助成金の対象となる場合もあります。採用ターゲットが広い場合には、ハローワークを主軸としつつ、他の求人手法を組み合わせることで、より多様な応募者と接点を持つことができます。

ターゲットに応じて採用手法を使い分けることで、効率的かつ的確な採用活動が実現します。それぞれの手法の特性を理解し、適切に選定することで、採用成功への道が開けるでしょう。

求人方法の広げ方と管理の注意点

前述の通り、採用人数が少ない場合には、応募者数を増やすことにこだわるよりも、採用ターゲットとどう出会うかにフォーカスすることが重要です。しかし、採用ターゲットと出会いやすくするためには、出会いの機会を増やすための「網を広げる」工夫も必要です。そのため、複数の求人方法を柔軟に検討することが効果的です。

求人方法の複数利用を検討するとき、特に注意すべき点は費用負担と採用活動のバランスです。例えば、ナビサイトの掲載料、合同企業説明会の参加費、ダイレクトリクルーティングの基本料など、契約時点で費用が発生するサービスを使うと、結果が出ないうちに予算を使い果たしてしまうリスクがあります。

一方で、成果報酬型の人材紹介サービスや採用イベントは、採用が成功した場合にのみ費用が発生するため、リスクを抑えながら活動を広げられる利点があります。成果報酬型サービスは採用単価が高くなる傾向がありますが、リスクを低減しつつ採用成功率を高める点で、複数利用を検討する価値があります。

なお、複数のサービスを利用するときは、応募者への連絡が遅れないように注意してください。採用活動において対応スピードは、応募者の志望度や会社イメージに直結します。また、人材紹介サービスを利用するときに、人材紹介会社への連絡を迅速に行うことも大切です。人材紹介会社も、対応が遅い会社は採用決定しにくいため、徐々に人材の推薦を減らしたり、人材に企業を紹介しなくなったりする傾向があります。せっかく網を広げても、網に大穴があったら本末転倒です。特に経営者が直接採用活動を行う場合は、自分が対応できる範囲をしっかり見極めたうえでサービスを選定することが求められます。

最近は、複数の紹介会社に一括で求人を依頼して、窓口も一元化できるサービス(circus AGENT、クラウドエージェント、リクまどα など)もあります。無料の求人ページ作成サービスや、Googleフォームとスプレッドシートなどで応募・選考管理を一元化するといった選択肢もあります。こうしたツールを活用すれば、少人数で採用活動を行う場合でも、効率的な運営が可能になるでしょう。

このように、複数のサービスを検討・利用しながら、自社にとって特に採用成功率が高い2~3つのチャネルを見極め、そのチャネルの提供企業との関係を深めていくのがおすすめです。2~3つのチャネルであれば応募者の対応漏れも生じにくいですし、提供企業の担当者と定期的に情報交換をすることも容易です。結果的に効率良く採用できるようになるでしょう。

変化する採用市場に合わせた戦略を

中小企業の採用活動で、よくジェイックに相談いただくケースが、「キャリア層や専門スキルのある30代は採用が難しいのはわかっている。そこで自社で育てることを前提に新卒・若手採用に切り替えたが、まったく採れない。ハローワークに求人を出しても若い人が来ない。有名なナビサイトへの掲載もしたけど応募がない」といったご相談です。

現在の採用市場、特にキャリア層や専門人材、新卒、若手の採用難易度は、5~10年前と比べると圧倒的に上がっています。当時の感覚で採用活動をしていると「いつまでも終わらないダラダラ採用」になりがちです。

今回紹介した求人方法の選び方を参考に、採用市場の変化に柔軟に対応しましょう。自社に合った「ターゲット人材と出会う仕組み」を構築することで、採用の成功率を大きく高めることができます。適切な戦略と行動を通じて、採用の課題を1つずつ解消し、自社に最適な人材を迎え入れる体制を整えてください。採用活動の成功が、会社の成長につながる大きなステップとなるはずです。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

佐藤 裕康(FutureFinder®メディア事業部長)

ジェイック入社後、中途採用支援からキャリアをスタート。その後は、マーケティング部門の立ち上げ、組織マネジメントを経て、2016年にダイレクトリクルーティングと求人メディアの2つの特徴を併せ持つ新卒採用メディア「Future Finder®」の立ち上げを担当。2020年に同事業部の事業部長に就任。

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