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知っておきたい「借換」とは?基礎知識や注意点などについて【教えて!吉田先生】
2024.08.06
コロナ禍において政府が実施した「コロナ貸付」や「ゼロゼロ融資」の元金返済が2023年7月以降開始されています。政府は「返済できない場合は借換を」と告知をしており「借換」という用語が一般的になりましたが、事業者の中には借換の意味を実はしっかり理解できておらず、戸惑われている方もいると思います。まずは用語の意味を正しく理解し、どのように手続きをすればいいのかを知ることが大切です。
今回は、コロナ借換に限定した解説ではなく「借換」に関する基礎知識について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。
※本記事は2024年6月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。
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目次
「借換」とは何ですか?「一本化」(おまとめ)とは違うのですか?
借換とは、ある金融機関から融資を受けて、他の金融機関から受けていた既存の借入金を返済することです。毎月の返済負担を軽減する効果があります。借換とは別に「一本化」や「おまとめローン」という表現がありますが、ほぼ同意で使われていると理解してもよいでしょう。
厳密には、一本化(おまとめ)とは、複数の金融機関から受けている融資に関して、別の金融機関から融資を受けて返済をしてしまうようなパターンを一本化(おまとめ)といいます。また、ある金融機関から複数の融資を受けている場合に、それを一本化する場合も一般的には「借換」「一本化」などと表現しています。
事業融資の実務においては「複数の融資をまとめてより良い条件にする」「より良い条件の融資に乗り換える」という主旨で「借換」や「一本化」という表現を使っているのが実情です。
借換の効果について詳しく教えてください。
借換の効果は毎月の返済を減らすことができるということです。また、同時に追加融資を受けられるケースもありますし、業績が安定している事業者なら金利の引き下げも可能なケースがあります。
上の図を見ていただけると一目瞭然ですが、このようにまとめると毎月の返済が約1/2になるようなケースもあります。
借換に公的制度はありますか?
多くの小規模・中小企業は主に公的融資制度を利用していると思います。その場合、借換をする際には原則として、公的融資制度を借換することになります。日本政策金融公庫(国民生活事業)には、具体的に「借換に関する融資制度」はありませんが、ケースにより借換は可能です(中小企業事業には「公庫融資借換特例制度」という制度があります)。
信用保証付き融資の場合は、具体的な制度が用意されています。主な借換に関する保証制度は以下となります。
1.借換保証制度
最も古く一般的な借換の保証制度です。複数の保証付き融資を一本化する保証制度であり、追加融資も可能となっています。
(参考)
資金繰りの改善をお考えの方|一般社団法人全国信用保証協会連合会
2.条件変更改善型借換保証制度
条件変更などをしているため新規融資を受けられない事業者向けの借換制度が、条件変更改善型借換保証制度です。本制度も追加融資が可能となっています。
3.コロナ借換保証制度
ゼロゼロ融資の借換などに利用することが可能な保証制度になります。2024年6月末まで利用可能でしたが、能登半島地震の影響が残る地域においては継続されます。
(参考)
民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。|中小企業庁
4.プロパー借換保証制度
2024年3月15日より開始されている借換保証制度です。経営者保証ありのプロパー融資を受けている事業者が対象となり、経営者保証を提供しない本制度に借換をする保証制度になります。
(参考)
プロパー融資借換特別保証制度(略称:プロパー借換)|東京信用保証協会
上記以外でも、2024年6月末に終了予定だった「コロナ経営改善サポート保証」・「コロナ資本性劣後ローン」(ともに借換に利用可能)は2024年12月末(予定)まで延長されることになりました。
また、各都道府県の自治体制度融資などにおいても、同様の借換保証の制度が実施されている場合があります。概要や要件などについては、それぞれの地元自治体のWebサイトなどから確認するようにしてください。
借換にはどのようなパターンがありますか?
主に以下のようなパターンがあります。
- 同じ金融機関の借入を条件の良い融資制度に借換(または複数の場合は一本化)するケース
- 異なる金融機関において借換をするケース
- 短期の借入を長期に借り換えるケース
- 長期の借入を短期に借り換えるケース
- プロパー融資を公的融資に借換するケース
- 公的融資をプロパーに借換するケース
特に注意していただきたいのは「プロパー融資を公的融資に借換するケース」です。プロパー融資とは、信用保証を利用せずに金融機関が直接融資をするスキームになります。この方法で借換ができれば、金融機関としてはリスク転換できるのでありがたいというのが正直なところでしょう。しかし、民間金融機関のプロパー融資を公的融資に借り換える「旧債振替」は、原則として禁止されています。
借換の注意点について教えてください。
業績が好調な事業者は、業績の思わしくない事業者と比較すると、借換はやりやすい傾向にあります。また、業績の良い事業者は条件の良い借換をすることができるケースも多いので、より好条件を引き出そうと“やりすぎ”ないように注意してください。過度な借換要求は、金融機関としても対応が難しい場合もあります。金融機関との関係も考慮のうえ、検討しましょう。
業績が思わしくない事業者の場合は、しっかりとした事業計画や再建計画などを作成して金融機関に相談してください。例えば、コロナ関連融資の借換においては「借換を拒絶される」ケースが多発しています。コロナ関連の“融資”の時ように、手続きさえをすればほぼ無審査で対応をしてくれる、というものではないと肝に銘じておきましょう。
借換をしたい場合は、どういった窓口に相談をすればよいですか?
金融機関や信用保証協会も相談窓口となっていますが、できれば顧問税理士や融資、資金調達の専門家に相談することをお勧めします。金融機関としては、ケースによっては借換に積極的な姿勢で応じてくれないところもあるでしょう。
また、自行にとって有利な提案をしてくるケースもあります。金融機関に相談・申し込みをする前に、できれば専門家に相談することを強くお勧めします。安易に自己判断のみで対応するのはあまりお勧めできません。
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吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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