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デジタル手続法導入の鍵となる「マイナポータル」を活用しよう
2020.11.02
著者:榎並 利博
行政手続きの電子化を目的とし、2019年に成立したデジタル手続法は、企業活動にどのような影響を与えるのでしょうか。資本金1億円以上の企業に対しては、すでに2020年度から一部手続きの電子申請義務化がスタートしています。今後、中小企業や個人事業主に対しても電子申請が義務付けられることが予測されることから、体制を整えておくことが必要です。
今回は、手続きのデジタル化の鍵となるマイナンバー制度に着目しながら、中小企業や個人事業主への影響、そして求められる対応について解説します。
目次
電子申請の玄関口「マイナポータル」
コロナ禍において「特別定額給付金の申請で、初めてマイナポータルを使った」という中小企業事業者や個人事業主の方も、多かったのではないでしょうか。そして実際に使ってはみたものの、マイナポータルが今後どのような形で自分の事業に必要となるのか分からなくて、漠然と不安を感じている事業者も多いというのが実情だと考えられます。
マイナポータルは、マイナンバー制度の一環として構築された内閣府のオンラインサービスです。元々はどの機関に対して、どのような個人情報を提供したかを国民に開示する手段としてスタートしたサービスでした。現在はマイナンバーをより有効に活用するべく、あらゆる手続きがマイナポータルを電子申請の玄関(ポータル)に完結できるよう、展開しています。
では、中小企業経営者や個人事業主が直接関係する部分について、確認しておきましょう。
「就労証明書作成コーナー」で事務手続き削減
まずは、就労証明書作成コーナーについて見ていきましょう。就労証明書は、自治体ごとに様式が異なります。そのため、就労証明書を作成するために、これまでは従業員が居住地で就労証明書様式を入手する手間が必要でした。現在は、マイナポータルの就労証明書作成コーナーに各自治体の就労証明書がアップロードされているため、企業が様式を簡単にダウンロードし、用意することが可能となっています。
また、これまでは手書きで作成していた就労証明書も、パソコンで必要事項を入力し、従業員に証明書を交付することができるようになりました。このようにマイナポータルを活用することで、企業側・従業員側双方にプロセス簡略化という効果をもたらしています。
「法人設立ワンストップサービス」で手続き簡便化を実現
法人設立ワンストップサービスは、法人登記後の手続きをワンストップで行うことが可能となるシステムです。具体的には、法人設立届出、給与支払事務所等の開設等届出、消費税の新設法人に該当する旨の届出、青色申告の承認申請など、多くの申請手続きを一括で完了できます。オンラインで手続きが完結するため、24時間365日どこにいても手続きをすることができ、これまでその都度各省庁へ出向き、行っていた複雑な手続きをワンストップでできるようになりました。
現在、すでに法人登記後の手続きに関しては、ワンストップサービスが開始されているものもありますが、2021年2月からは登記時における定款認証・設立登記手続きなどがデジタル化される予定です。詳細は、内閣府ホームページ検索窓より『マイナポータルにおける「法人設立ワンストップサービス」の提供開始について』と検索し、ご確認ください。
青色申告・年末調整もマイナポータルで便利に
青色申告に関して、2020年分の所得税確定申告から青色申告特別控除額が現行の65万円から55万円へと引き下げられることをご存知でしょうか。その代わり、基礎控除額が10万円アップとなります。ただし、マイナンバーカードを使ったe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行うと、引き続き65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。つまり基礎控除額と合わせると、従来よりも10万円控除額がアップするということになります。このように個人事業主も政府が進める電子化に協力すると、大きなメリットが得られるのです。
また、2020年10月からマイナポータルと連携し、年末調整の手続きも簡便化が予定されています。中小企業・個人事業主や従業員にとっては申告書作成が簡単になると同時に、書類保管が不要になることも期待されています。
生産性と利便性向上に欠かせない手続きのデジタル化
安心・安全で高い利便性を持つマイナンバーカードとマイナンバー制度利活用は、デジタル社会における基盤となることがお分かりいただけたでしょうか。今後、契約や請求といった手続きの電子化が進むにつれて、中小企業や個人事業主がマイナンバーカードで発行した電子証明書を利用して行う手続きの増加が予想されます。その時になって慌てないためにも、備えられる準備は進めておくべきです。
デジタル手続法に対応するために、中小企業や個人事業主が求められる準備としてはパソコンやネットワークなどのITインフラ整備が挙げられます。未来を見据えて、できるだけ早いタイミングで書類の電子化など、できることから着手しましょう。複雑な部分もあり、導入時には戸惑うこともあるかもしれませんが、これからの企業活動には欠かせない基盤となります。実務担当者の方は、自信の業務にどのような影響が及ぶかをしっかりと掴み、業務効率化の一環として前向きに取り組みましょう。
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この記事の著者
榎並 利博(デジタル・ガバメント研究者)
前・株式会社富士通総研経済研究所、主席研究員。1981年東京大学文学部卒、富士通株式会社入社。住民情報、財務・地図情報など自治体におけるシステム開発に従事。1996年株式会社富士通総研へ出向し、デジタル・ガバメントや地域活性化をテーマとした研究に従事。電子政府やマイナンバーに関する著書・論文・講演等多数。直近の著書として『デジタル手続法で変わる企業実務』(日本法令、2020年4月)を出版。
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