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成功確率1割?中小企業が新規事業を成功に導くためのポイントとは

新型コロナウイルス感染症の影響で先が見えづらい状況となり、本業が今後継続的に続くものと楽観視できる企業は少ないと思います。中小企業においては、なおさらでしょう。

大企業に比べフットワークが軽く、柔軟に新規事業にチャレンジできるイメージの中小企業ですが、本業と並行しながら新事業における成功をつかむのは至難の業といえます。そこで今回は、経産省 認定経営革新等支援機関として中小企業経営者の支援を実施している株式会社彩 代表の西川 邦広氏に、中小企業が新規事業を始める際に注意するポイントや、成功する確率を上げる方法などについてお話を伺いました。

西川 邦広(経産省 認定経営革新等支援機関 株式会社彩 代表)

経産省 認定経営革新等支援機関として中小企業経営者の支援や、個人向けのファイナンシャルプラニングの提案を行っている。東京外国語大学卒業後、ゼネコン(海外プロジェクト、不動産開発など)、証券会社(企画、企業投資/企業再生、再生エネルギーファンド、不動産ファンド、ODAコンサルタント、海外現地法人、内部管理など)を経て2019年に独立。千葉県産業振興センターよろず拠点で中小企業経営者向け相談業務他公的機関での支援業務、ITベンチャーの内部統制整備支援にも取り組む。中小企業診断士、CFP/FP技能士1級。

中小企業が新規事業に取り組んで成功する可能性は?

――中小企業が新規事業に取り組んで成功する確率は、どの程度なのでしょうか?

中小企業の新規事業成功率を定量的に評価するのは、なかなか難しいものです。ここでは、少し古いデータとはなりますが、日本政策金融公庫の『中小企業の新事業展開に関する調査』を参考までに取り上げたいと思います。

同資料によると、中小企業が新規事業に取り組んだ場合、成功と失敗が半々程度に見えます。一方で、明確に「成功」と答えているのは1割ほどですから、シビアにジャッジすると一勝九敗といえるかもしれません。ちなみに、有名なユニクロの柳井会長の書籍でも「一勝九敗」とされていますね。

また、2017年版「中小企業白書」によると、実に約3割の企業が「成功した」と答えています。しかし、こちらも定性的なデータになりますし、いつの時点で評価するのかによっても異なるでしょう。よって、この結果をもって新規事業の取り組み可否を判断するという発想は適切ではありません。

これまでの私の経験からも、新規事業の成功率は1割から3割程度と考えておくのが心構えとして良いのではないでしょうか。

――成功の基準を定義するのは難しそうですね。

新規事業において何をもって成功とするのかは、その計画や目標しだいで異なります。またどの段階で判断するかでも、大きく結果が変わってくるでしょう。特に研究開発に時間を要するモノづくりを始め、ヘルスケア、IT事業に関しては、短い期間で成否を判断することは適切ではありません。

例えば、私自身の企業勤務時代に立ち上げた新規事業は、5年くらいで成果が見えだしました。そして、10年後には派生事業へと変化していたため、新たなビジネスチャンスを作る機会としては成功と考えられます。しかし、もし3年目で判断していたら、失敗とみなされる可能性が高かったでしょう。

ただ、2017年版「中小企業白書」のデータからも分かるのですが、成功を「利益率の改善」とした場合、新事業展開を実施している企業は実施していない企業と比べて、経常利益率が増加傾向にある事実もあります。つまり、新規事業の開発に取り組んだ会社のほうが、経営にプラス効果が生まれている可能性が高いのです。

新規事業開発を阻む壁は悩みすぎて動けない企業姿勢にある

――中小企業はもちろん、あらゆる企業において新規事業が成功しにくい要因はどこにあるとお考えですか?

「どうやって新規事業を始めたら良いのだろう」と悩んで、最初の一歩が踏み出せない企業が多いのだと思います。

そもそも個々の経営者は自分で事業を起こして商売をしているわけですから、新規事業をやりたいという意欲を持ち合わせをています。しかし目の前の事業のやり繰りに追われ、どのようにはじめの一歩を進めたら良いのか迷う方が多いのでしょう。それが心理的なハードルになっているところがあります。

特に中小企業の場合は、資金や人材などのリソースが大企業のように潤沢ではないため、最初から一定の制約があることが大前提になります。そのため、まずは「資金をどうする?」という部分が、どうしても課題になってくるでしょう。ヒト・モノ・カネ・情報のうち、どうにもならないケースが多いのが「カネ」というわけですね。

とはいえ、日々の資金繰りに苦しまれている事業者も多いので、仕方ない部分はあります。実質的に大きな金額でない場合でも心理的なハードルが高くなっている印象はあります。

――本業に手いっぱいで新規事業開発にリソースが割けないという中小企業も多いと思いますが、うまく両立するための秘訣などはありますか?

先ほどもお話したように、中小企業の場合はそもそも新規事業開発に割ける人材や資金などが限られています。ですから、そのリソースをどう新規事業に活用するのかが出発点と考えてください。

ただ、ここで悩んで立ち止まってしまうと、企業として新たなる一歩を踏み出すことはできません。限られたリソースで、創意工夫しながらいかに新規事業開発を進めていくかを前向きに考える姿勢こそが必要なのです。

しかし、そうはいっても悩んだり、立ち止まったりしてしまう方も多いと思いますので、人の力や知恵を借りることをお勧めします。例えば、我々のような企業に相談したり、これから参入しようと思っている市場の先駆者に相談したりするのも、1つの方法です。中小企業庁の配下にある各都道府県産業振興センターなどの公的機関が市役所などと連携して、新規事業の無料相談窓口を準備していることが多いので、そちらも有効活用してもらいたいですね。

第三者にはまた違った視点もありますし、異なる分野での経験が解決策のヒントなることもあります。また他者に説明するために、自分の考えを論理立てすることで、整理することにもつながります。

一方で他社製品やサービス、ITツールなど、レバレッジ(てこ)となるものを探すことも大切です。事業提携や、場合によってはMAも視野に入ってきます。そのためには、新規事業を立ち上げていくうえでの課題分析が必須です。

――ちなみに、西川さんのところに相談にやってくる方々は漠然と「新規事業を始めたいのだけど、どうしたら良いですか?」といった形で相談に来るのでしょうか?

意欲先行で意外と何も考えずにやってくる方もたくさんいます。「何かやりたいのだけど、どうしたら良いですか?」「開業届けって必要ですか?」というレベルの方も多いです。

そういう場合、個人事業か法人か、準備できる運転資金、初年度の収支計画、製品やサービスの提供方針、対象顧客の選定、販促方法、資金繰りと会計処理など漠然として考えているものを整理していきます。

事業意欲を尊重しますが、実現へ向けた道筋を示すお手伝いをしています。

中小企業が新規事業を成功させるポイント

――現業の延長や隣接市場などから新規事業をスタート検討する場合、リスクが少なそうに見えますが、実際にはどうなのでしょうか?

現在事業を行っている市場に隣接した市場で新規事業を展開したほうが、当然ながらリスクは少ないです。土地勘がある場所で事業を行うわけですから。既存製品を別の市場に持っていくことが、最もリスクの低い新規事業かもしれません。この場合は、販路開拓に近いですね。

経験的に建築会社が中華料理店を始めるといったケースがないわけではありません。しかし、このケースでは実はお父さんが昔やっていましたというパターンであったり、そもそも若いころに執務経験がありいずれ自身で手掛けたてみたかったというように、まったくノウハウがないわけではないのです。

したがって新規事業の成功の確率を上げる方法としては、「隣接した市場に商品やサービスを提供すること」が有効だと考えられます。

特に従業員が数名の中小企業の場合は、何年間か事業をやっていれば取引先などお客さまとの信頼関係もある程度はできあがってくるものです。特に経営資源が限られている中小企業が実施するわけですから、この顧客基盤や取引基盤を活かさない手はないと思います。

――「そもそもどうやって新規事業を立ち上げれば良いの?」という企業も多いと思いますが、アプローチのパターンなどはありますか?

まずはだれかに相談して動き出すことが、大切だと思います。結局、あれこれ考えていても時間だけが過ぎるだけで、何も改革が進まないことが多いものです。

つまり、まずは経営者として新規事業に至る道筋を作ることが必要と考えてください。だからこそ、どのように進むべきかを示すための「事業計画の策定」が重要になるわけです。

「いつ何を行って何を実現するのか」という計画がなければ、新規事業を始めても成功したか失敗したか判断できません。苦しいかもしれませんが、新規事業で成功したいのであれば「現状分析」を突き詰めていくことが必須でしょう。

何よりも新規事業の成功を目に見えるようにすることで、次の一歩へ踏み出す力になります。

――ちなみに事業計画には、売上や原価、販管費といった係数目標から、事業やサービスの内容や開発スケジュールといったロードマップなどが含まれるのでしょうか?

そうですね。どちらの方向に進むかというロードマップから、その方向にどれくらいのスピードで進むべきなのかという点までを記したものになります。

また踏み出す前に、これから始めようとする事業がどのようなものかという環境分析は不可欠です。例えば、市場にはどのような競合がいて、どのポジションで実施するのか、そもそも利益が上がる事業なのか、市場は成長傾向なのかといった点を見極めてからでなければ、大きな成果は得られないでしょう。

事業の立ち上げには、既存の経営資源をどう振り分けるか、必要な人材や資源、資金を適切に配分した実行計画が不可欠になります。また、メンバーや資金を集めた後は、仮説を立て検証・評価し、計画を何度も修正するプロセスも必要です。

しかし、これらはあくまでも理論上の話です。商品やサービスが具体化できたら、市場ニーズを想定して最小規模で製品化し、限定した顧客に対して販売するテストマーケティングを行いましょう。その結果から、売上や顧客からの反応をフィードバックして、軌道修正を行うプロセスが必要です。

本格的な市場投入を実施する前に、こうした試行錯誤を繰り返すことで、事業が成功する可能性を高めることができるでしょう。

――事業計画の策定やPDCAサイクルを回すような作業は、先ほどお話した何も考えていない方にとってはかなりハードルが高い印象を受けるのですが?

厳しい言い方にはなりますが、事業に関しては自分の頭で考えるしかありません。細かいことはだれも教えてくれないと考えてください。

意欲だけでは十分ではないので、きちんと事業計画を作ってから新規事業の立ち上げに臨むべきです。特にモノづくりの企業に多いのですが「良いものさえ作れば売れるはずだ」という思い込みを抱いている方がいらっしゃいます。

これは現在のマーケティングにおいては、非常にレアケースでしょう。やはり、市場が何を求めているのかが分からない限り、良いものを作ったとしても売れるかどうかは分かりません。したがって新規事業を始める際には、自分の取引先に相談したり、顧客に話を聞いたりすることで、彼らが何を望んでいるのか確認することから始めてみるのが良いでしょう。

――中小企業が新規事業で成功する確率を上げるためには、どのように取り組むべきでしょうか?

中小企業は自分たちが持っている顧客を含めた経営資源を、最大限に活用するべきだと思います。場合によっては、顧客のクレームなども新規事業の種と捉えることも重要です。

また、顧客を通じて新しい顧客を開拓するネットワーク作りも必要です。最近、私のお客さんにもよく言うのですが、「連携すること」が大事ですね。

中小企業は同業他社と連携することを嫌がる傾向が強いので、異業種との連携がお勧めです。例えば、モノづくりの企業はマーケティング面で流通企業と連携するといったパターンが挙げられます。

お互いの強みを活かし、相互に顧客を増やしていければ、新規事業成功の確率を上げられるでしょう。また企業間でディスカッションした際に、新しい事業が生まれる可能性もあります。

つまり、自社に足りないものは他社の力を借りて、レバレッジ(梃子)を利かせる必要があるわけです。また、最近はクラウドファンディングを資金調達だけでなく、テストマーケティングに活用するケースも増えています。さらにクラウドファンディングを利用する場合は、各自治体によっては補助金も出ていますので有効活用してもらいたいですね。

――その他にも成功の確率を上げる手段はありますか?

M&Aも1つの方法だと思います。最近は後継者不足で廃業する事業者も多いので、事業承継をM&Aで実施するという方法です。

こちらも補助金などが活用できますので、今は特にお勧めですね。既に事業化されているものを購入するわけですから、新規事業のリスクを大幅に削減することが可能になります。

また、最初の設備投資も少なくて済みますし、既に顧客がいて売上も上がりますので、先行投資を抑える意味でも有効な施策といえるでしょう。

――政府も企業の新規事業開発を励行するために予算を使っていると思いますが、有効活用できそうなお勧めの公募などはありますか?

政府、自治体や公的機関によって支援策が出されていますが、その支援策も大きく分けて、補助金・助成金・融資といった経済的な支援や専門家による助言・相談といった支援、また、セミナーを通じた研修機会や交流会開催に拠る同じ環境にある人との交流機会を作る支援など、さまざまです。

ただし、それぞれ募集条件や期間などが異なりますので、適宜情報を入手することが必要になります。商工会議所を始め、自治体であれば公益財団法人があり、例えば首都圏の場合は、東京都の東京都中小企業振興公社、千葉県産業振興公社などが挙げられます。

加えて、中小企業基盤整備機構のサイトJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」いうWebサイトもお勧めです。現在公募をかけている中小企業向けの支援制度が掲載されていますので、ぜひ活用してください。

弥報編集部
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