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仕事の見える化→棚卸し→色分けの3ステップで「いつも忙しい人」「いつも時間がない人」を卒業しよう!

2020.02.04

著者:高塚 苑美

あなたの会社は「忙しい人」で溢れていませんか?『超一流の手帳はなぜ空白が多いのか?』(SBクリエイティブ)の著者が中小企業経営者のためのタイムマネジメント施策を教えます。仕事の「見える化」→「棚卸し」→「色分け」の3ステップで、まずは経営者自らが「時間がない人」を卒業しましょう。

「時間がない」「バタバタしていて……」が口癖になっていませんか?

「いやぁ、最近忙しくて……」

「ごめんね、ちょっとバタバタしていて……」

これらの言葉、しばらく連絡ができなかったときや予定が詰まっているときなど、安易に使っている人が多いのではないでしょうか。

首都圏で暮らしていると朝夕の通勤時間帯など、確かに時間のなさそうな人で溢れています。しかしながら、1日はどんな人にも24時間。自分よりも多くの仕事をこなしていそうなのに余裕がある人もいれば、いつも慌ただしそうにしている人も。

今回は特に中小企業の経営者が知っておきたいタイムマネジメント施策について解説します。

タイムマネジメントのはじめの一歩は、時間の「見える化」から

ある企業の営業部署にコンサルティングで関わっていたときのことです。私は経営幹部の皆さんと月に1度お会いするのですが、前月にお願いしていた課題を提出できない人が数人いらっしゃいました。大抵いつも同じ人たちで、理由を聞くと「先月は忙しくて……」「ちょっと今月はバタバタしていて……」というお返事でした。

そこでタイムマネジメントのはじめの一歩として実施したのが、時間の「見える化」です。まず図1のように、ある1日(24時間)の時間の使い方を円グラフに書き込んでもらいました。(皆さんもぜひここから一緒に進めてみてください)

睡眠時間が6時間、通勤は片道45分ずつで計1.5時間、仕事の時間はお客さまとの商談が1時間、役員会に1.5時間……というように順に埋めていきます。すると、ほとんどの方が途中で「あれ?」と言います。「あれ?」の続きは「おかしいな。もっと何かしていたはずなのに書くことがない」ということです。

実際に書き込んでみるとわかりますが、大半の方は、図1にカラーで示した通り、何に使ったのかわからない時間が出てきます。これを1週間分、1カ月分と考えると……。決して少なくない時間がどこかへ消えていることに気づくのです。

毎日分刻みで行動し、それを自分で管理できている人はごく少数です。問題はその良し悪しではなく「見える化」によって自分の現状や組織の現状に気づくこと。つまり、組織にタイムマネジメントを取り入れる、と大げさに考える前に、まずは自分が本当に使っている時間はどれくらいで、使途不明の時間がどれくらいで、それがどこかへ消えてしまっていることを知ることが大切なのです。

タスクを洗い出し、次に大きなタスクは細分化する

時間の使い方を振り返ったところで、次は今あなたが持っているタスクを洗い出してみましょう。予定は手帳やアプリに入れていると思いますが、できればバーティカル(縦軸)で見られるものがおすすめです。理由は先ほどの円グラフと同様、見える化できるからです。

メモ用紙でもなんでも構いませんので、今持っているタスクを全て書き出します。書き出せたら、それぞれのタスクにかかる所要時間を図2のように記入します。

こうして所要時間を記入すると、手帳を見ながら「水曜日の9-10時で提案書作成をしよう」「木曜日の昼食会前に面接官スタッフのトレーニングをしよう」など、空いている時間にタスクが入れやすくなりますよね。

では、ここで質問ですが、一番下の「事業計画作成6.0時間」というタスク、皆さんならどのようにスケジュールに組み込みますか?

「期日に間に合うよう、空いている日や時間を見つけて手を付ける」と思った方は、もしかしたら期日に間に合わなかった経験があるかもしれません。これを防ぐためには、図4のように、大きなタスクを1時間程度で収まるタスクに細分化することです。細分化することで、先ほどと同様、手帳で見つけた空き時間に入れることが可能になります。

仕事を任せたのに期日にいつも遅れてしまう人や、大事なことが抜けていたり、進捗が見えない部下はいませんか?それは上司の任せる仕事が大きすぎて、部下が細分化できていないためにミスが起きているのかもしれません。経験豊富な上司にとっては細分化なんて当たり前。しかし、経験値の違う部下にはわからないステップもあるのだと思います。ぜひこの機会に仕事の任せ方についても見直してみてください。

時間に3種類の色をつける

ここまでで、時間の見える化→タスクの洗い出しと細分化→予定に入れる、という流れができたかと思います。もちろん、それだけでは業務時間は短縮されませんので、時間の使い方に優先順位をつけることも大切です。

よくお金に色をつけるために、「入金専用」「出金専用」など、銀行口座を分けることがありますよね。経営者にとって、お金は入ってくるもの、出ていくもの、貯めるもの、と分ける習慣はできていると思います。

では、時間はどうでしょう。お金とは異なり、時間が増えることはありませんが、それでも色分けしてみることが大切です。

分け方はお金と同じで、先ほどの円グラフや手帳を見ながら、この3つに色分けしてみましょう。

①消費(グリーン)

アポイントや会議、ルーティンワークなどの既に決められたものを消化する時間。またはクレーム処理や事故対応など、突発的な出来事に対応するための時間

②投資(ピンク)

自己啓発や学習、人脈形成、社内のリスク対策、体調管理など、今やっておくことで未来のためになる時間

③浪費(イエロー)

なんとなくスマホをいじりながら過ぎてしまった時間、付き合いの飲み会やゴルフコンペ、移動時間中のゲームなど、今のためにも未来のためにもならない時間

色分けをしてみたところで、ほとんどの方はお気づきだと思いますが、タイムマネジメントのポイントは「投資」の時間を増やすことです。目に見えるお金は、元手をうまく使って投資すれば増えていきます。しかし、時間の場合は、今の1時間が将来の何につながるのかが見えません。そのため、戦略的に時間を作っている人は少ないのです。

例えば、情報セキュリティや防災対策。普段は問題が表面化しませんが、万が一、情報漏洩が起きたり、災害が起これば、時間的・費用的に大きな損害が生じます。

また、経営者の健康管理も同じ。中小企業の場合、経営者が全決定権を持っているケースがほとんどでしょうが、その経営者がもし急な病気で倒れてしまったらどうなるでしょうか。会社はあっという間に存続の危機に陥りますよね。この事態を防ぐには、日ごろから「もしこの人が休んだら、業務は誰がカバーするだろうか」など、仕事が属人化しないようにマニュアル整備や人材育成を進め、リスク対策をしておくことが大切です。

つまり経営者が会社を健全に経営していくためには、浪費はなくす、消費は減らす、そして経営者自身にも、会社にとっても、「投資」になる時間を優先的に入れることが重要なのです。

タイムマネジメントが経営資源を豊かにする

最後に、そもそも組織はなぜタイムマネジメントをしなければならないのか、その目的について考えてみましょう。

結論から申し上げると組織のタイムマネジメントの目的は、経営者が成果を出すために必要なリソース(資源)を豊かにするためです。

会社の経営資源と言われると、経営者がすぐに思いつくのはおそらく「ヒト・モノ・カネ」の3つでしょうか。現在は新たに「時間・情報・知的財産」の3つが加わるとも言われています。

タイムマネジメントは言葉通り捉えれば「時間の管理」です。経営者は自分のビジョンを達成するために、従業員を雇用し、その時間や能力を借りるわけです。ただ、その人が能力を発揮できるかどうかは、人間関係を含めた職場環境によって決まります。

つまりタイムマネジメントの最大のポイントは、従業員が力を発揮しやすい心理的・物理的に満たされた職場環境を、経営者が先回りして整えていくことです。そのために使うのがお金という資源であり、経営者自身の時間です。

例えば、最近人気のRPA(Robotic Process Automation)は、バックオフィス業務をソフトウェアに組み込まれたロボットが代行する仕組みのことです。私も導入のサポートを行うことがありますが、実は導入前にやっておかなければならないのが、業務フローを確立しておくことです。RPAは標準化されたルールに則って業務を遂行するため、同じ業務なのに人によって手順が違ったり、書式が違ったりするとルールにならず導入できません。

そのため、ベンチャー企業などで「経営が少し落ち着いたらルールを作ろうと思っていた」という状況ですと、RPAの導入前に大掛かりな業務の棚卸しが発生します。最初からマニュアル化しておくことが一番の近道ですが、起業当初はどうしても忙しく、時間を「消費」してしまうため、緊急ではないけれど重要な「投資」には手が付けられないのです。

だからこそ、これから組織の働き方改革や生産性向上を目指す経営者の皆さんには、今回の内容を実施する時間を、まずはご自身の予定に入れていただきたいと思います。それが、経営者として成果を出すために最も大切なタイムマネジメントなのですから。

この記事の著者

高塚 苑美(営業戦略コンサルタント)

株式会社グローバルセールスパートナーズ代表取締役
輸入車業界のトップセールスとして8年間で800台の販売記録を持ち、現在はその経験を活かし、コンサルタントとして活動。農家から自治体まで幅広いクライアントを持ち、女性の目線を活かしたブランディングやビジネスモデル・プロデュースを手がける他、講演家としても活躍。女性が健やかに暮らせる社会づくりをテーマに、国内外にてSDGsのプロジェクトにも関わっている。主な著書に『超一流の手帳はなぜ空白が多いのか?』(SBクリエイティブ)、『クルマを売りたいなら、クルマの話はやめなさい!』(すばる舎)、『数字が一生伸び続ける人の習慣ノルマに追われ続ける人の習慣』(すばる舎)などがある

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