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金融機関を納得させる「損益計画」の作り方【教えて!吉田先生】
2025.01.28
金融機関から融資を受ける際には、原則として事業計画や損益計画が必要になります。損益計画は、売上・利益の計画ですから、融資審査における重要なファクターの一つです。金融機関に納得してもらう損益計画表の作成が融資を受けるためには必須となります。
とはいえ「損益計画とは?」「作成のポイントは?」「金融機関の着眼点はどのようなところ?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。今回は金融機関が納得する損益計画の作り方について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。
※本記事は2024年11月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。
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目次
損益計画は融資申請の際には必ず必要なのでしょうか?
損益計画とは、今後の売上高と利益の計画を示すものです。ある事業を行ううえで金融機関に融資の申請をする際、「融資を実行したら売上高や利益がどうなるのか?」について金融機関は知る必要があります。融資審査において、大変重要な資料になりますので、じっくりと熟考して作成しなければなりません。
ただし、あらゆる融資申請において損益計画が必要かというと、そうでない場合もあります。超優良企業で金融機関から「借りてください」とお願いされるケースや、コロナ禍で実施されたコロナ貸付やゼロゼロ融資などの緊急融資では必須資料ではありませんでしたが、通常の融資においては原則として必要になると理解しておきましょう。
金融機関が納得する損益計画とはどういうものですか?
金融機関は融資審査の際に提出された事業計画・損益計画といった資料の内容を精査します。そして「この計画通りに売上高を獲得することができるのだろうか?」「支出は適切だろうか?」「利益計画はこれで十分だろうか?」「計画の信頼性はどうなのだろうか?」「返済に問題はないだろうか?」などを経営者にヒアリングをしながら精査し、判断しています。
融資審査は、損益計画のみで判断するわけではありませんが、最も重要な資料の1つです。
体裁については、金融機関としてもわかりやすいため、弥生会計などで作成した決算書の「損益計算書」と同じような形式で作成することをおすすめします。1か所の数値を変更すれば全体の数値も自動的に変更されるように作成し、何度もシミュレーションをして最終の数値を決定しましょう。
売上高の試算に関しては、詳細に作成してください。例えば、○月の売上高を単に「100万円」と記入するのではなく、その100万円の内訳を表に落とし込みます。「単価」を50円上げたら、全体の数値も変更できるようなイメージです。その数値の根拠となる販売計画や営業戦略、支出計画などについては、事業計画書で解説をするようにしてください。
根拠のある数値の損益計画を作成するためにはどうすればよいですか?
金融機関が最も納得する数値は「実績」です。よって、過去の損益計算書の実績数値をベースに作成してください。例えば、前前年度の年商1億円、直近の年商1.2億円の企業があったとします。次年度の年商予測が1.3億円であれば、実現可能性が高いと判断できるでしょう。もし、計画が2億円であれば、「本当にそんなに売上が上がるのか?」とシンプルに疑問を感じます。
日本政策金融公庫などが公表している経営指標なども、参考にしましょう。また、同業他社の売上動向が調べられるのであればそういう情報源も役に立ちます。
〈参考:日本公庫「小企業の経営指標調査」製造業〉
例えば、上記「製造業」の「売上高経常利益率」の平均は5.9%(黒字かつ自己資本プラス企業平均値)となっています。これまでギリギリ黒字だった企業の損益計画の「売上高経常利益率」が20%を超えるような数値になっていたら金融機関はどう感じるでしょうか。もし、そのような計画の場合は、金融機関が納得できる根拠説明が必要になります。
経営指標については、さまざまな機関から公表されています。日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」については無料で見ることができますので参考にしてください。顧問税理士に確認してみるのも有効な手段です。
計画通りに推移しない場合、説明を求められますか?
一気に売上利益が急増するような計画や業績回復するような計画については、その根拠が明確であり、金融機関を説得させられるのであれば問題ないでしょう。あまりにも極端な場合、金融機関としては「これまでの実績・業績がこれくらいのなのに、なぜ急にこのような計画になるのだろうか?」と疑問を感じることが予測されます。金融機関としては、融資をしたら返済してもらわなければなりません。本当に返済してもらえるのだろうか?という前提があることを忘れないようにしてください。
また、計画通りに推移しない場合は、必ずしも金融機関から詳細な説明を求められるということはありません。実態として、担当者がすべての担当企業の細かい数字の推移まで目を配ることができないためです。しかし定期訪問時や追加融資相談、また返済などが滞った際には説明が求められます。その際は計画と結果の差異と今後の改善についての説明が必要です。
なお、常に損益計画通りに100%確実に実行できるわけではありません。よって計画の8割を推移するような前提で策定する意識を持ってください。8割ほどの達成水準であれば、その段階から改善策を講じて計画に近づけることも可能なケースもあると思われます。
なかなか思うように作成できない場合、だれに相談をすればよいのでしょうか?
まずは、顧問税理士に相談しましょう。ほとんどの税理士が損益計画についてのアドバイスをしてくれるはずです。もし、その分野が苦手な顧問税理士の場合は、融資や資金調達の専門家に相談してみてください。
損益計画を見て、金融機関は事業の将来性はもちろん、経営者としての能力を見極めます。融資を受けるためにも、じっくりと作成に取り組んでください。
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弥報編集部
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吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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