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接客は「日本語」でもOK!プロに聞く「外国人が入りやすいお店にするポイント」
2019.09.30
著者:弥報編集部
監修者:戸嶋 浩子
年々、観光地以外でも外国の方を見かける機会が増えている気がしませんか? 法務省の発表によれば、2018年末の在留外国人数は約273万人で、前年末に比べ約17万人(6.6%)の増加となり過去最高を記録したとのこと。外国人にお客さまになってもらえば売上が伸びるに違いない! 小売店や飲食店など店舗経営をされているみなさん、チャンスです!
「でも、そこには語学というハードルが…」と思ったところに、東京・墨田区を中心に配布された外国人をお客さまにするための接客ガイドがあるとの朗報が飛び込んできました。ひらがなネット株式会社が制作・発行する「まずは日本語でこんにちは!」という小冊子です。
今回はひらがなネット株式会社の代表取締役・戸嶋浩子さん、そして取締役の吉澤弥重子さん、タイ人スタッフの清水エドさんに、日本語でできる外国人への接客方法、外国人客が入りやすいお店にするポイントなどについて教えていただきました。
目次
一度対応してみれば、外国人客に対する苦手意識は払拭できる
「まずは日本語でこんにちは!」を作られたきっかけを教えてください。
戸嶋浩子さん(以下、戸嶋):2015年に東京都中小企業振興公社の「平成26年度 東京都地域中小企業応援ファンド助成事業」の助成金を受けて制作しました。
株式会社としての「ひらがなネット」の設立は2012年ですが、それよりも前から外国人の方に日本語を教えるボランティアをしていました。
その活動を通じて、日本で暮らしている外国人は日本語である程度コミュニケーションできるということがわかっていました。また「外見から外国人だと判断されると、英語圏の出身ではないのに英語で話しかけられてしまうのがとても嫌だ」という声も聞いていました。
吉澤弥重子さん(以下、吉澤):その一方で商店街連合会などから「商店街に外国人のお客さまが増えているけれど、取り込めていない」とも聞いていました。特に個人商店を経営している高齢の方は「外国人の方にどう対応していいかわからないから来られても困る」と敬遠する傾向があるようでした。
一度でも外国人のお客さまに接してみれば苦手意識は払拭できると考え、とにかく一度対応してみようと一歩前に押し出すためのツールとして、この「まずは日本語でこんにちは!」を企画しました。
冊子の中に取り上げる内容はどうやって決められたのですか?
吉澤:もしも自分が初めて日本に来た外国人だとしたら、どういう風に接して欲しいか考えました。例えば、外からお店を見た時に何のお店かわかるか考えてみたら、わからないお店も多い。お店の名前だけでは、お蕎麦屋さんか定食屋さんかわからないなぁと。
戸嶋:それに加えて、当時、日本語を教えたり、生活の仕方を学ぶサポートをしていた日本在住の外国人の方々から聞いたことも入れました。
どういったお店で使われていますか?
戸嶋:飲食店が多いと思います。ほんのひと工夫で外国人でも入りやすいお店になりますから、もっと多くのお店で活用していただきたいと願っています。
「着ますか?」「座りますか?」などの簡単な日本語で伝えてみる
意外と「英語より日本語のほうがわかる」人が多いから、日本語で話しかけようということですね。
吉澤:はい、日本で暮らしている外国人の場合、英語はわからないけれど、日本語はわかる人も多いです。観光客も必ずしも英語がわかるわけではありませんし、日本に限らず現地の言葉で挨拶されたほうが観光客も旅の気分を味わえてうれしいのではないでしょうか。
エドさん、外国人の立場からはいかがですか?
清水エドさん(以下、エド):私は13年前にタイから日本に来ました。日本に来たばかりで日本語がわからなかった頃も、日本語と手ぶり身ぶりで一生懸命伝えようとしてくれればうれしかったですし、たいていのことは理解できました。
エド: 今では日本語もかなり使えるようになりました。でも、日本語で話しているのに、お店の方が英語で返事をして来られることがあります。「なんでかなぁ? 私の日本語が下手なのかなぁ」と悲しくなります。こちらが日本語で話したら日本語で答えてほしいです。
戸嶋:日本人は外国人に対して「日本語ができる」と「できない」の2段階しかないかのように接する傾向があるようです。実際は「少しならわかる」「話すことはできるけれど、読むのが苦手」など様々なレベルがあります。
外国人が少し日本語を使ったら「日本語ができる」と思い込んでしまい、いきなり速い日本語で話されて全然理解できなかったという話もしばしば聞きます。また、ある程度は日本語がわかるけれども、丁寧語や敬語はわからないケースも少なくありません。
エド:私も日本語がまだあまりわからなかった頃、飲食店で「おかけください」と言われたことがありました。その時は冬だったので「コートを掛けるの?どこに?」と思ってコート掛けを探してしまったことがありました(笑)
では、一番簡単に「着る?」とか「座る?」と聞くのがいいのでしょうか?
吉澤:いいえ。日本語学校でもボランティアの日本語教室でも、最初は「着ます」「座ります」というように「ます」を付けた形で習います。「着る」「座る」という動詞自体はすぐには教わりません。ですから、「座る?」は「座りますか?」より難しいです。
なるほど! 「着ますか?」「座りますか?」が一番わかりやすいんですね。
メニューや包装などのちょっとした工夫や気遣いが入りやすさや口コミに繋がる
こちらの冊子には「やさしい日本語で」以外にもいろいろなアドバイスが載っていますね。
吉澤:はい。ちょっとした工夫で外国人がお店に入りやすくなるポイントを掲載しました。飲食店の場合は外国人の方向けの「おすすめ」メニューを絞るのがポイントです。数点の「おすすめ」を決めて、それだけは簡単な日本語で説明できるようにしましょう。写真は、ぜひ載せてください。
エド:初めてのお店だったら、ちょっと高くても「おすすめ」を頼みます。写真はないとわからないことも多いですね。
初めて日本に来た時、蕎麦屋さんに入ってみたところ、メニューが全部漢字で書かれていて何もわかりませんでした。幸い、そのお店は外に見本が並ぶショーケースがあったので、店員さんと一緒にそれを見にいって注文しました。ショーケースがなかったら何を頼んでいいかわからなかったと思います。
吉澤:物販店の場合は、包装に気をつけましょう。以前、浅草寺の仲見世でお手伝いをしたことがあります。欧米の方は「そのままでいい。包みも要らない」と言われることが多いのに対し、アジアの方は「ひとつずつ包んでほしい」と言われることが多かったです。小さなことのようですが、大切なのは相手の希望を「気にしている」のが伝わることです。
エド:外国人の間でお店の口コミは広がります。「お店の人が優しい」という口コミは多いですね。そう書いてあると安心して入れますし、行ってみたくなります。
メニューもコミュニケーションツールとして活用
他にもいろいろなツールを作られていますが、外国人の方向けのメニューもありますね。
吉澤:「ひらがなネット」の所在地の東京都墨田区の依頼で90軒ほどのお店の英語メニューを作りました。これを店内で使うだけでなくお店の外に掲示しておくと、外国人の方が見て入って来られます。
裏面には食品のピクトグラムを入れ、イスラム教徒やベジタリアン、アレルギーのある方が指差しで食材の確認をできるようにしました。また、お店の方とのコミュニケーションを楽しくするための日本語も載せています。
戸嶋:メニューを作ったお店のひとつに高齢の女性の方が切り盛りされているお好み焼き屋さんがあります。最初は「外国の人にどう対応していいかわからないから来られても困る」とおっしゃっていました。
でも一度、外国人のお客さまが来られて、お好み焼きが美味しいと喜んでもらえてからは日本語で堂々と楽しそうに接客されています。今では外国人向けの口コミサイトで評判を読んで、海外からわざわざ訪れる方もいらっしゃって、多国籍のお客さまでいつもにぎわっています。
素敵なお話ですね。でも、こういうメニューを作るのは大変ではないのですか?
戸嶋:ご自分で作られる場合は、東京都に「EAT TOKYO」というメニューの翻訳サイトがあります。メニューを作成するには固定電話の番号を登録する必要ありますが、翻訳自体は誰でもできます。
戸嶋:多言語メニューやPOPの制作は、無料で利用できるウェブサイトなどをうまく使うことから始めるのがよいと思います。もちろん、手書きでもよいです。言葉の不安は、スマホの翻訳・通訳アプリの精度が上がっていますので、言葉が通じず困った時に使うと便利です。
ただ、いちばん大事なのは「歓迎」の気持ちを全面に出すことかと思います。「こんにちは!」と明るく、元気に声をかけることで、外国人のお客さまもお店に入りやすくなるのではないでしょうか。
ひらがなネット株式会社
本社所在地:東京都墨田区亀沢2-19-7
設立:2012年
従業員数:6名
撮影:Atsushi Watanabe
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
戸嶋 浩子(ひらがなネット株式会社)
ひらがなネット株式会社代表取締役社長。東京都目黒区出身。自身が「外国人」として海外に暮らした経験から、帰国後に外国人に日本語を教えるボランティアを開始。ボランティア活動を通じて感じた課題の解決のために、2012年ひらがなネット株式会社を設立。在住外国人向けの講座や、外国人の交流事業、冊子の制作など、外国人とのネットワークを生かした、多文化共生・インバウンド関連事業を手掛ける。
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