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小規模事業者がノンバンクを活用するのは危険か?知っておきたい3つのセオリー
2019.02.21
「ノンバンクは高金利だから利用すると会社は倒産する。怖いお兄さんが出てきて厳しい取り立てに合う……だから絶対に利用したらダメ!」
というイメージを持っている小規模事業者さんもいらっしゃることでしょう。しかしながら、決してそんなことはありません。今回はスモールビジネスでのノンバンク活用のポイントについて解説いたします。
目次
そもそもノンバンクって何?
ノンバンクとは、その名の通り「銀行ではない金融会社/貸金業者」のことをいいます。つまり、「預金業務を行わずに融資などを行う金融会社」と定義しても差し支えないでしょう。一般的には、「消費者金融」のイメージが強いと思われますが、信販会社、クレジットカード会社、リース会社などもノンバンクです。
ちなみに、金融庁は以下のようにノンバンクを分類しています。
<金融庁による貸金業者の業態分類>
①消費者向無担保貸金業者
消費者向貸付残高が合計貸付残高の5割超で、かつ、消費者向貸付残高のうち無担保(除住宅向)貸付残高が最も多いもののうち、⑥~⑫のいずれにも該当しないもの。
②消費者向有担保貸金業者
消費者向貸付残高が合計貸付残高の5割超で、かつ、消費者向貸付残高のうち有担保(除住宅向)貸付残高が最も多いもののうち、⑥~⑫のいずれにも該当しないもの。
③消費者向住宅向貸金業者
消費者向貸付残高が合計貸付残高の5割超で、かつ、消費者向貸付残高のうち住宅向貸付残高が最も多いもののうち、⑥~⑫のいずれにも該当しないもの。
④事業者向貸金業者
事業者向貸付残高が合計貸付残高の5割超で、かつ、⑤~⑫のいずれにも該当しないもの。
⑤手形割引業者
事業者向貸付残高が合計貸付残高の5割超で、かつ、事業者向貸付残高のうち手形割引残高が5割以上(全国事業者金融協会に加盟しているものにあっては2割5分超)のもののうち、⑥~⑫のいずれにも該当しないもの。
⑥クレジットカード会社
日本クレジットカード協会に加盟しているもの(⑦~⑫と重複する場合には⑥が優先する)。
⑦信販会社
包括信用購入あっせん業者又は個別信用購入あっせん業者として登録を受けているもの(⑧~⑫と重複する場合には⑦が優先する)。
⑧流通・メーカー系会社
電気機械器具関係の一般社団法人等、自動車関係の一般社団法人等に加盟しているもの(関係会社が同法人に加盟している場合も含む)または、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、日本商店連盟、日本専門店会連盟に加盟しているもの(関係会社が同協会等に加盟している場合も含む)(⑨、⑪と重複する場合には⑧が優先する)。
⑨建設・不動産業者
建設・不動産関係の一般社団法人等に加盟しているもの(⑪と重複する場合には⑨が優先する)。
⑩質屋
質屋の許可を受けているもの(⑧、⑨、⑪と重複する場合には⑩が優先する)。
⑪リース会社
公益社団法人リース事業協会に加盟しているもの。
⑫日賦貸金業者
日賦貸金業者として登録されているもの(⑧~⑪と重複する場合には⑫が優先する)。
⑬非営利特例対象法人
上記にかかわらず、非営利特例対象法人として貸金業登録されているもの。
※出典:金融庁「貸金業関係資料集の掲載について 賃金業の業態分類」より
ノンバンクの資金調達の仕組みについて
現在、以前のような積極的な“無担保”ローンは、一部のノンバンクを除いて、ほとんど行われていません。現在のところ、不動産担保融資、売掛債権担保融資(ABL)、などの“有担保”型の融資を行っているノンバンクが多くなっています。
一般的にノンバンクが行っている資金調達の仕組みとしては
- 無担保融資/連帯保証付き融資
- 不動産担保融資(土地・建物などを担保にする)
- ABL・動産担保融資(売掛債権・在庫、機械、車などを担保にする)
- 手形割引(取引先から受け取った手形を期日前に現金化する)
- その他、担保融資(有価証券、保証金など)
- ファクタリング、カードローンなど
が挙げられます。また最近では、ファクタリング事業者が急増しています。ファクタリングとは、売掛金を買い取ってもらうことによって早期現金化する手法です。ファクタリングについては、別の機会に詳しく解説させて頂きますが、一部、法外な手数料を請求する事業者もいるそうです。ファクタリングを利用する際は、顧問税理士や専門家にご相談することをお勧めします。
ノンバンクを利用すると会社は倒産するのか?ノンバンクって闇金?
「金利の高いノンバンクを利用すると企業は倒産する」
このように主張する一部の専門家や有識者もいますが、必ずしも正しくはありません。確かにノンバンクを利用している事業者の多くは業績が思わしくないかもしれません。つまり「銀行や信金から融資を受けることができないのでノンバンクを利用せざるを得ない。よって、金利の高いノンバンクを利用している事業者はいずれ倒産する確率が高い」という見方ですね。
業績の良い事業者なら、現在(2019年2月現在)のところ、銀行などから1~2%くらいで借入ができているケースもありますが、ノンバンクの金利は10%前後です。確かに、これだけの金利を払ってでも借入をするということは、相当業績が悪い!と判断することもできないこともありません。
また、闇金とノンバンクを混同している方も多いのではないでしょうか。闇金とは法的な認可を受けずに高金利で貸し付けを行っている違法事業者のことです。いわゆる「トイチ業者」などは、ほとんどが闇金です。トイチとは、借入金利が「十日で一割の金利」のことです。トイチで資金を借りざるをえない事業者に関しては、残念ながら倒産が近いのかもしれませんね。
よって、ノンバンクとトイチなどの闇金を同一視してはいけません。小規模事業者の資金調達の選択肢を狭めてしまいます。ノンバンクは利用方法を間違わなければ小規模事業者の強い味方になります。そのポイントを次に解説いたします。
ノンバンク利用の「3つのセオリー」とは?
ノンバンクを利用する際には、以下の3つのセオリーについてしっかりと理解した上で判断してください。これは私(吉田)が勝手に主張しているだけで、専門家によって様々な意見がありますが、一定の判断基準にはなるでしょう。
- ノンバンクの担当者と会ってみること
- ノンバンクからの資金調達に頼らない(できれば総額の10%以内)
- 短期で返済、決算前に返済するのが理想
まずは、できればノンバンクの担当者と会ってみてください。会ってみると分かりますが、決して怖いお兄さんが出てきたりしません。お互い顔を合わせてみる、ということはとても大切なことだと思います。むしろ銀行などより懇切丁寧に納得できるまで利用の仕方について説明してくれる担当者さんもいます。
次にノンバンクからの資金調達に頼らないことです。ノンバンクを頭から否定してはいけませんが、やはり、通常の借入より金利が高いです。よって、借りやすいからという理由だけでノンバンクに頼ってはダメです。目安として、借入総額の10%以内には押さえてください。どんなに多くても20%以内です。それ以上の借入をすると資金繰りに支障が出てくる可能性が高くなります。
そして、短期かつ決算前に返済するようにしてください。決算をまたいで借り入れをしてしまいますと、原則として決算書に借入先としてノンバンクを記載しなくてはいけません。そうすると借入先の銀行などにノンバンクを利用していることがばれてしまう可能性があります。やはり決して印象はよくありません。
また、ノンバンクから長期にわたって借入する場合もありますが、まずは、決算前に短期(3ヶ月以内、長くても6ヶ月以内くらい)で返済することを心がけて計画的に利用してください。
業績が悪化してしまった際には無理してノンバンクから資金を借りるのではなく、銀行などからの借入金の返済を一旦ストップするという方法もあります。これを条件変更/リスケジュール(リスケ)といいます。いったんリスケをしてしまうと原則として銀行などから借入をすることができなくなりますが、ノンバンクからは借入をすることができる場合もあります。
無理してノンバンクから借りずにリスケをして、その後、必要に応じてノンバンクの活用を探る、というのも一案です。そういうケースに陥った場合は、ぜひ顧問税理士や専門家にご相談してください。
AIを駆使したノンバンクもある!
現在、AI(人工知能)を使った融資手法が浸透しつつあります。日本においては2019年春~秋にかけて、大手金融機関などが実施する予定です。
AI融資とは、融資の審査を人間が行うのではなく、AI(人工知能)が行うこと。貸し手側からすると、とても効率的です。また、銀行などの従来の融資のように審査に数週間かかるのではなく、早ければ数日内に融資が実行されます。
AI融資においては、銀行や信金、信組より、どちらかというとノンバンクの方が先行していますが、今後、AI化が進展すると、“融資”は、いわゆる銀行や信金、信組などの独占的な業務でなくなるのかもしれません。近い将来、大手の一般企業などが取引先支援のためにAI融資支援サービスなどを行う時代がやってくるかもしれませんね。
この記事の著者
吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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