- 人材(採用・育成・定着)
「採らない勇気」も必要!中小企業が有望な人材だけを採用するためのヒント
2018.07.09
著者:弥報編集部
監修者:倉並 愛
監修者:山中章裕
求職者からの応募がたくさん集まったとしても、魅力的な人材を採用できなければ採用成功とは言えません。入社後に活躍する人材を採用するためには、自社の魅力を存分にPRしつつ、採用選考をじっくりと進めていくことが理想的です。そこで今回は、魅力的な人材を獲得するために、応募から採用のプロセスの中でどんな施策をするべきなのか、前回の記事「超売り手市場でも人は集められる!船井総研のコンサルタントが明かす小さな会社の採用戦略」に引き続き、中小企業向けの採用支援で数多くの成功事例を持つ株式会社船井総合研究所の山中さんと倉並さんのお二人にお話しいただきます。
目次
中小企業こそ会社説明会を!たった一度の面接で採否を決めない勇気
船井総合研究所の経営コンサルタントは、Indeedなどの採用ツールを戦略的に活用し中小企業の支援を行っています。これまで応募がゼロだった企業にIndeed経由で応募が殺到することがありますが、採用活動は応募者数が多ければうまくいくという話では必ずしもありません。
山中さん:Indeedに関して言えば、応募者にとってはエントリーシートや職務経歴書が不要だから応募しやすいという面があります。会社側としては、そこからの絞り込みをどのように行うのかが採用成功のカギです。中小企業のお客さまは、1回の面接で採否を決めてしまうことも多いですが、これは控えたほうがいいと思います。
会社と応募者が、お互いのことを理解していないまま採用が決まってしまうと、入社後に「思っていたのと違った」という話になりがちです。だからこそ、採用フローを見直すことが大事であり、その第一歩として、船井総合研究所では会社説明会の開催を勧めています。
山中さん:会社説明会を開催する狙いは、主に会社や仕事に対する理解を促すことです。座談会を開いて現役の社員と話す機会を設けるのもよいでしょう。これによって応募者は会社を知ることができますし、会社側も応募者のことを知ることができます。もちろん説明会や座談会を開くためにはそれなりの準備が必要ですが、ミスマッチを減らすための効果的な打ち手となることは間違いないと言えます。
大谷選手を獲得した日ハムのように、熱意と理詰めで魅力的な人財を口説き落とせ!
潤沢なリソースを持つ大企業と比べると、中小企業は採用コストの負担割合がどうしても大きくなります。だからこそ、採用活動はより慎重に進めるべきだと山中さんは言います。
山中さん:採用面接では「採用してはいけない人」を見定めたほうがいいとアドバイスしています。向上心がない、メンタル不調がある、すぐ会社を休むなど、入社後にその人の問題に気づいてしまった…では遅いわけです。そのため、採用してはいけない人をふるい分けする「不適性検査スカウター®」などの利用を勧めることもあります。
採用選考を行い魅力的だと思える人に内定を出しても、まだ安心することはできません。求職者の転職に関して本人以外の家族や周囲からの意見など、それらが原因で内定を辞退されるケースもあるからです。
倉並さん:ただし、転職に家族が関与するのが必ずしもマイナスに働くとも限りません。例えば、地方の中小企業が内定者の両親に向けて「お子さんを大切に預かります」というメッセージを込めた手紙を送った結果、都内の大手企業の内定を辞退してその企業に入社したというケースもあります。ご家族にとっても安心と希望を感じてもらえるような自社の魅力をしっかりと伝えるといった対応をしておいて損はありません。
また、大人数をさばくために採用活動が決められたマニュアル通りに画一的になりがちな大手企業と違い、一人ひとりの応募者としっかり向き合うことができる中小企業の優位性も存分に活かさない手はありません。そして、「中小企業だからいい人が集まらない」ではなく、「中小企業だからこそいい人をとるべき」だと倉並さんは強調します。
倉並さん:高校生時代からアメリカのメジャーリーグ志望だった大谷翔平選手が、最終的にはメジャーリーグではなく北海道日本ハムファイターズを選んだ裏側には、球団からの粘り強い交渉がありました。後にメジャーリーグへ渡った際に大谷翔平選手が語った「メジャーリーグへ進むための新しい道筋を、北海道日本ハムファイターズに教えてもらった」という趣旨の言葉からかもわかるように、「将来メジャーリーグで活躍するために北海道日本ハムファイターズでの経験が不可欠である」と納得させることができたから、入団が決まったのではないでしょうか。これと同じように、魅力的な人材に対して、企業から積極的に働きかけて、口説き落とす覚悟を持つべきだと思います。
大手にはない、中小ならではの明るい未来を見せられるかどうかが勝負の分かれ目
誰もが自分の将来のビジョンが描ける環境で働くことを望んでいます。だからこそ、北海道日本ハムファイターズが大谷翔平選手と交渉したときと同じように、会社のビジョンや育成スケジュール、入社後にどんなキャリアビジョンを描くことができるのかなど、その人にとって「望ましい未来」を見せられることが理想です。
中小企業は組織がコンパクトだからこそ、「トップとの距離が近い」「昇進ペースが速い」といった求職者にとってのメリットもあります。結果として大手企業よりも稼げる可能性もあります。優秀な人材を獲得するためには、そうしたプラス面をうまく伝えていきたいところです。
山中さん:中小企業はより一層人材採用で妥協することはできません。焦って採用した結果、期待通りに働いてくれなかったとしても人件費はかかり続けます。これは中小企業にとっては大きな負担となるはず。同じ給料でも、人によって仕事の能力や成果が全く異なるので、妥協することなく考えられるすべての手を打つことを、強く勧めたいですね。
一方で、人手不足のときは求職者から応募があるだけでうれしくなってしまうものです。面接でも応募者のできるだけよいところだけを見つけて、採用しようとしがちです。もっとも、それが悪いわけではありませんが、せっかくお金と時間をかけて採用活動を行うわけですから、よいところも悪いところも見定めた上で、全力で優秀な人材を獲得しにいきたいところ。採用戦国時代を勝ち抜くための戦略を入念に練ってベストを尽くせば、きっと結果はついてきます。
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この記事の著者
弥報編集部
弥生ユーザーを応援する「いちばん身近なビジネス情報メディア」
この記事の監修者
倉並 愛(株式会社船井総合研究所 人財マネジメントコンサルタント)
社員15名の中古車販売店における新卒採用導入プロジェクトや、社員100名規模の新車ディーラー店新卒採用支援及び新卒社員戦力化研修など、幅広い企業規模の採用コンサルティングを経験。採用支援プロジェクトにおいては、採用単価5,000円未満で中途即戦力人材を採用するなど実績を上げる。
この記事の監修者
山中章裕(株式会社船井総合研究所 シニア経営コンサルタント)
2008年船井総研入社後、士業、物流、産業廃棄物業、医療、パチンコ、広告、等様々な分野のコンサルティングを経験。会計事務所のみならず、法律事務所、司法書士事務所、行政書士事務所、社労士事務所等、あらゆる士業のコンサルティングをもっとも得意とする。
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