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コロナ借換支援が延長!2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援策【教えて!吉田先生】

2025.01.09

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

年末・年度末に向けて資金需要が高まり、2024年11月28日に「事業者支援の促進及び金融の円滑化に関する意見交換会」が開催されました。そこで政府、経済産業省、金融庁などから官民金融機関等に対して、中小企業・小規模事業者に対する資金繰り支援や経営改善・事業再生支援などの要請が発せられました。同時に2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援策も公表されました。

本記事では、これらの支援策について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生にお話を伺い、具体的な内容や中小企業が取るべき対応について解説します。

※本記事は2024年12月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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今後の資金繰り支援はどうなりますか?

現状、コロナ禍から脱している事業者もいますが、まだまだ脱することができていない事業者も多いと思われます。経営課題は、人手不足、賃上げ、原材料費高騰などにシフトしており、経営改善・再生、成長促進など、多岐にわたる経営課題に対応できるような資金繰り支援策になっています。

また、2024年6月7日に公表された「今後の中小企業向け資金繰り支援について」にて案内されているコロナ禍関連の支援策は、予定通り終了するものもあれば、新たに創設される支援策(現時点において詳細は不明)などもあり、多岐に渡ります。12月末で終了予定だったコロナ借換などの支援策も期間が延長しています。

以下、2025年1月以降の資金繰り支援策の全体像とスケジュールを確認してください。

〈2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援の全体像〉

民間金融機関(信用保証制度)による支援策はどうなりますか?

以下の4つの支援策となっています。

  1. 経営改善サポート保証(コロナ対応)→2025年3月まで延長
  2. コロナ借換保証(石川県内一部地域)→2025年3月まで延長
  3. プロパー融資を引き出す保証制度→創設予定
  4. 小口零細企業保証(100%保証)→小規模事業者に対して借換等を支援

1の「経営改善サポート保証」(コロナ対応)について、コロナ禍で措置された支援策ですが、2025年3月まで延長します。終了後は、経営改善・事業再生に取り組む事業者の資金繰りを後押しする「経営改善サポート保証」(経営改善・再生強化型)を新設して、経営改善・再生計画を策定したうえでの借換などを支援します。

なお、「経営改善サポート保証(経営改善・再生強化型)」は、「100%保証で借換、保証料0.3%、上限2.8億円、保証期間15年」という概要になっています。

2の「コロナ借換保証」について、能登半島地震の影響が残る地域(石川県内一部地域)においては、2025年3月まで継続することになります。

3の「プロパー融資を引き出す保証制度」(仮称)は、新たに創設される制度です。人手不足に対応する省力化投資など、多岐にわたる経営課題に対応した資金繰りを支援します。「80%保証、保証料引下げ、上限2.8億円、保証期間10年」という概要となっています。

総合経済対策(2024年11月22日)によると、中小企業に対する民間金融機関のプロパー融資を促進するために、中小企業に対して民間金融機関が行う信用保証付融資にかかる保証料を引き下げる、協調支援型の信用保証制度のようです。

4の「小口零細企業保証」(100%保証)については、引き続き小規模事業者に対して借換などを支援していきます。

政府系金融機関(日本政策金融公庫など)による支援策はどうなりますか?

以下の3つの施策となっています。

  1. 日本公庫等のコロナ特別貸付→2024年12月終了
  2. 日本公庫等のコロナ資本性劣後ローン→2025年2月まで延長
  3. 日本公庫等のセーフティネット貸付→2025年3月まで延長

1の「コロナ特別貸付」は、予定通り2024年12月で終了します。終了後には、その用途の多くが借換であることを踏まえて新たに「危機対応後経営安定貸付」が創設され、支援が実施されます。

2の「コロナ資本性劣後ローン」は、2025年2月まで延長します。終了後には「通常資本性劣後ローン」について、省力化投資に取り組む事業者を対象に追加するなどを見直し、引き続き支援が実施されます。

3の資材費等の価格高騰対策として実施している「セーフティネット貸付(利益率▲5%→金利▲0.4%)」は、2025年3月まで継続されます。その後の継続等に関しては現時点では不明です。

政府から官民金融機関にどのような要請がされたのですか?

今回の要請は省庁名ではなく、「内閣総理代名」や「所管大臣名」で発せられており、より強い要請と判断することもできます。全6ページ9項目に渡り丁寧に要請されています。以下、重要箇所について簡潔に解説いたします。

まず「資金繰り支援策」については、「資金需要の高まる年末、年度末を迎えることを踏まえ、融資判断に当たっては、それぞれの事業者の現下の決算状況・借入状況や条件変更の有無等のみで機械的・硬直的に判断せず、事業の特性、各種支援施策の実施見込み等も踏まえ、経営改善につながるよう、丁寧かつ親身に対応すること」という主旨の要請がされています。これは毎回繰り返し発せられている要請です。

また「条件変更、借換」については、「申込みを断念させるような対応を取らないことはもちろんのこと、事業者に寄り添った迅速かつ柔軟な対応を継続すること」という主旨の要請がされており、新たに創設される制度なども活用しながら、事業者の返済負担軽減を図るよう要請されています。

その他、「経営支援」や「経営者保証」に関する支援要請など多岐に渡る内容となっていますので、一度、目を通してみてください。

(参考)
「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合的経済対策」を踏まえた事業者支援の徹底等について要請しました|経済産業省

なお、本要請は「要請」であって政府からの「強制」ではありません。よって最終判断は金融機関に委ねられています。しかしながら、あまりに要請の主旨に反するような対応をされた場合は、この要請文を参考にしながら粘り強く交渉をするのも一案です。

今後、これらの施策を活用したい場合はどうすればよいですか?

まずは、支援策についてしっかりと調べてください。そして自社が該当するかどうか、また要請文の内容などについても内容を把握しておきましょう。なお、申請手続きの際は、事業計画や再生計画などについて、しっかりと作成してください。不安な場合は、顧問税理士やその他専門家などからアドバイスを受けることをおすすめいたします。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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