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小規模事業者でも利用可能?クラウドファンディングについて【教えて!吉田先生】

2024.08.20

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

資金調達といえば金融機関から融資を受けたり、補助金や助成金などを利用したりするのが一般的ですが、新たな資金調達方法として「クラウドファンディング」というものが注目を集めています。近年、コロナ禍や震災などで小規模事業者などがクラウドファンディングを利用して資金調達をする事例が、メディアで紹介されているのを目にした方も多いのではないでしょうか。

しかし、クラウドファンディングとは何か、実際のところよくわかっていない事業者も少なくないかと思います。今回はクラウドファンディングについて財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。

※本記事は2024年7月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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クラウドファンディングとは何ですか?

クラウドファンディング(crowd funding)とは「群衆」(クラウド)と「資金調達」(ファンディング)を組み合わせた造語です。明確な定義があるわけではありませんが、一般的には「不特定多数の人々からインターネットを通して少額の資金を調達する」というイメージになります。

支援者(資金提供者)とプロジェクトの実行者(起案者)の間に入って、マッチング支援する事業者のことを「プラットフォーム」(クラウドファンディングサイト)といいます。

クラウドファンディングは「寄付型」、「購入型」、「融資型」、「株式型」、「ファンド型」などに分かれているのが一般的です。また、近年「ふるさと納税型」というタイプも実施されています。

小規模事業者の資金調達として利用が多いものについて解説すると、まず「寄付型」ですが、主に公益団体などが利用するもので、プロジェクトに対して資金提供者が寄付を行う形態です。全額寄付ですので、商品やサービスなどのリターンは発生しません。

「購入型」は、資金提供者がモノ(商品、グッズなど)やサービス、体験、権利などのリターンを得られる形態です。

「寄付型」「購入型」には、以下のようなプラットフォームがあります。

「融資型」は、個人投資家から小口の資金を集め、借手企業に融資する形態です。支援者は金銭的なリターン(利息)を得ることができます。

主に、以下のようなプラットフォームがあります。

「株式型」は、未公開の株式を提供して資金を集める形態で、株式会社が実施するスキームになります。

以下のようなプラットフォームがあります。

クラウドファンディングは「どのタイプ」が「どのくらい」活用されているのですか?

2021年の中小企業白書によりますと「融資型」の規模が最も大きく、2019年時点で1,152億円、「購入型」・「寄付型」は2020年の上半期のみで223億円となっており、コロナ禍以降、2020年に入って急速に拡大しています。現状では、決して大きな規模とはいい難いですが、確実に拡大しているといえるでしょう。

〈国内のクラウドファンディングの市場規模の推移(種類別)〉

また、震災などで被災にあった事業者においても利用は増えています。2024年(令和6年)能登半島地震で被災した企業の中では、クラウドファンディングを活用して資金調達をした事業者もいます。クラウドファンディングは、被災事業者が早期に事業を再開するための有効な資金調達方法の一つだといえるでしょう。

また能登半島地震においては、中小企業基盤整備機構が「能登半島地震クラウドファンディング協力企画」を実施いたしました。大手3社のプラットフォームが参加しており、各社とも運営手数料を無料とし、決済手数料5%のみで利用できました。

(参考)
中小企業基盤整備機構とクラウドファンディング企業3社が連携し、令和6年能登半島地震の被災事業者が行う資金調達(クラウドファンディング)を支援する企画を実施いたします|中小企業庁

クラウドファンディングのメリット・デメリットについて教えてください。

最大のメリットとしては、融資や補助金など以外にも資金調達の選択の幅が拡大したということでしょう。そして、プラットフォームを通して多くの人にプロジェクトの告知などができるという点も大きなメリットです。

また、プロジェクトの反応を確認できるため、テストマーケティングとしての活用もできます。例えば、新製品開発を検討しているものの、その製品にどれほどの反響があるか不安という場合もあるでしょう。こうした時に、クラウドファンディングでどの程度の反響があるか試すというのも大変有効です。注目され、すぐに支援者が現れれば、それだけ魅力的なプロジェクトであると自信をもって新製品開発を始められますし、逆の場合はプロジェクトを見直し、ブラッシュアップさせることもできます。

デメリットは、目標としていた資金調達額を達成できないこともあるということです。また、購入型などの場合、プロジェクトが実行不可となった際やリターン遅延の際には、支援者にその理由の説明をして、状況によっては返金しなければなりません。プロジェクト公開時には、他社にアイデアやコンセプトなどを盗まれるリスクもあります。

クラウドファンディングはどのようなフローで進められますか?

クラウドファンディングの型やプラットフォームによって異なりますが、購入型を例に説明いたします。基本的には以下のような流れになります。

  1. プロジェクト/新規事業などの事業計画の概略、計画立案をする。
  2. クラウドファンディングを利用するかどうかの判断をする。
  3. 利用するクラウドファンディングサイトを検討、選択、申請する。
  4. プロジェクトのページを作成して、掲載する。
  5. 資金調達を開始、プロモーション活動などを行う。
  6. 成功したらプロジェクトを実行する。

事業者は、まず2の「クラウドファンディングを利用するかどうかの判断をする」について検討してほしいと思います。

クラウドファンディングの実施については、安易に「金融機関から融資が断られたから」「このままでは資金ショートするから」というような理由での利用は、困難なケースが多いといわざるを得ません。実際にクラウドファンディングサイトで掲載されているプロジェクト内容などを確認し、慎重に判断するようにしてください。

小規模事業者でも利用できますか?活用したいときにはだれに相談すればよいでしょうか?

型などにもよりますが、クラウドファンディングは基本的に小規模事業者でも利用可能です。購入型などでは、プロジェクトのテストマーケティングとしての活用もできますし、特に被災にあった小規模事業者などにおいては、借入などで事業再開をするとさらに借入金が増大するリスクもありますから、クラウドファンディングをおすすめします。また2024年(令和6年)能登半島地震に際しても政府はクラウドファンディングの支援を実施いたしました。

(参考)
中小企業基盤整備機構とクラウドファンディング企業3社が連携し、令和6年能登半島地震の被災事業者が行う資金調達(クラウドファンディング)を支援する企画を実施いたします|中小企業庁

クラウドファンディングを検討する際には、顧問税理士に相談してみてください。なお、顧問税理士の顧問先などで、クラウドファンディングを実施したことのある顧問先企業などがあれば紹介してもらい、お話しを聞くことができれば参考になるでしょう。

また、プラットフォーム(クラウドファンディングサイト)にも相談することは可能です。専門のスタッフなどが相談に応じてくれます。実際にプロジェクト作成の際にも専門スタッフが支援してくれるので、安心して利用できるでしょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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