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『頭がいい人、悪い人の話し方』著者に聞く 話し方の「型」を知ろう
2021.04.08
すっかり市民権を得たZoomなどを使ったWeb会議。今や「対面よりも、Web会議のほうが多くなった」という方もたくさんいらっしゃると思います。また、オンラインでの商談や社内メンバーとの1on1面談と、Web会議の用途も広がりつつある状況です。
しかし、Web会議では相手の表情や雰囲気を読み取れない中で、意思疎通を図る必要がありますから、対面と比較するとより高いコミュニケーション力が求められます。そのため、簡潔でスマートな表現や説明スキルの必要性をこれまで以上に感じている方も多いでしょう。
そこで今回は、『頭がいい人、悪い人の話し方』、『頭のいい人の「説明」はたった10秒!』の著者である樋口 裕一氏に、簡潔でスマートに話す方法などについて伺いました。
目次
長い説明はNG!簡潔に話すことの重要性
『頭のいい人の「説明」はたった10秒!』でも語られていましたが、樋口さんが考える「簡潔に話す・説明する」ことの重要性やメリットについてお聞かせください。
簡潔に話さなくてはならない理由は、「話が長いと相手に伝わりづらい」からです。多くの方は長くていねいに説明するほど、相手に内容が伝わりやすいと思っています。しかし、それは大きな間違いです。どんなに頭の良い方であっても、30秒以上文脈を追うのはなかなか厳しいでしょう。そのためワンパラグラフは長くても30秒以内でなければ、相手に内容を理解してもらえない可能性が高くなるのです。
一方で、話が長いということは情報がたくさんあるということにもなるのですが、そうなると1つの情報が持つ重要性が薄れてしまいます。つまり、何が一番大事なことなのか分からなくなってしまうのです。
よって、相手に大事なことを分かってもらうためにも、簡潔に話すことが非常に重要だと考えています。
また「話す」という状況は、基本的に1人では成立しません。もちろん講演やインタビューは別ですが、ほとんどの場合は対話によって成り立っています。ですから、相手の質問に的確な回答をするためにも1つ1つの対話を短く、簡潔にする必要があるのです。
簡潔でスマートに話す・説明するためには、どのようなポイントを押さえれば良いのでしょうか?
大事なポイントは2つです。
1つ目のポイントは、私が「型」と呼んでいるものです。論理的に話すための型を理解して、それを活用することが重要になります。
皆さんがよく使われているのが「頭括型(とうかつがた)」と呼ばれるもので、「結論は○○です。なぜなら▲▲だからです」と最初に結論を述べ、その後説明を加える型です。そして、もう1つが「尾括型(びかつがた)」で、「理由は▲▲です。だから○○です」と先に説明をして、後から結論を話す型になります。この2つの型を使い分けることで、論理的に話ができるようになるでしょう。
2つ目のポイントが、具体性と抽象性を意識することです。具体的な事例や例え話を示すと同時に「つまり」「こういうこと」「要するに」と、内容を抽象化して話しましょう。
型を使って論理的に話すことと、具体と抽象を使い分けること。両者をほどよく織り交ぜていくことで、相手に理解してもらいやすい話ができるのです。これら2つを守っていれば、基本的には簡潔な話ができると考えています。
実際のコミュニケーションの現場では、とっさに話したり説明したりしなくてはいけないケースも多いと思います。そのような場合に、簡潔でスマートに話すために心がけるべきことはありますか?
簡潔に話すといっても難しく考える必要はなく、まずはざっくり話すことを意識するべきでしょう。
その後で詳細を説明していく流れであれば、だれでも論理的に話せます。最初から詳細に話そうとすると、逆に伝わりにくくなってしまうのです。
例えば、何か尋ねられたときに「Yes」「No」でまず答えるというのも1つです。また、結論や概要などをざっくり話した後、相手の顔色や反応を見ながら必要に応じて説明を加えていくのも良いでしょう。
この「ざっくり」→「詳しく」という頭括型の流れを繰り返すことで、相手に理解してもらえるようになります。これが一番大切なことです。特に、自分が話下手だと認識されている方は、結論から先に話したほうが理解してもらいやすいでしょう。
ただし例外として、相手にためらいがあるときや気を悪くしてしまったときは、結論を急がず後に回したほうが良いケースもあります。
話がわかりにくい人、説明が伝わらない人の特徴
話が分かりにくい・説明が伝わりにくい人にはどんな特徴があるのでしょうか?
話が伝わりにくい方の特徴には、大きく3つあります。
1つ目は型が不明確で結論と説明がごちゃごちゃになり、何を伝えたいのか分かりづらいパターン。2つ目は、具体と抽象を織り交ぜずにいつまでも抽象的なことばかり言う、もしくは具体例ばかり話して結論を言わないパターンです。そして3つ目が、余計なことを話してしまうパターンとなります。型通りに最初に結論を話して説明していけば良いのに、途中で思いついたことをつい言いたくなってしまうケースです。別の話を挿入することで論点がずれてしまい、訳が分からなくなってしまう可能性が高くなります。
例えば、途中で自慢などを挟むケースです。それで話がずれてしまった結果、本当に伝えたい内容が伝わらなくなってしまいます。
相手に話が伝わっていないと感じた場合は、どのように挽回していくべきなのでしょうか?
相手の話している内容が理解できないケースの1つが、具体と抽象が不明瞭なケースです。そのため相手が理解していないと感じたときには、「具体的には、こういうことです」「つまり、〇〇ということになります」という話し方を織り交ぜながら、相手の理解度を確認していくと良いでしょう。
逆に抽象的な話ばかりしてしまった場合には、「例えば、こういうことです」といったように事例を示すことが必要です。おすすめとしては、最後にこれまで話した具体的な内容を抽象化して結論を明確化する方法があります。加えて、相手の理解度や、目上や目下といった立場、専門度合いに合わせた最適な具体と抽象を選ぶことも大切なポイントになります。
また、相手が明らかに理解できていない表情を浮かべているときは、具体性を理解していないのか、抽象性を理解していないのかを見極めなくてはなりません。そのような時には話す際の相手側のリアクション、特に相槌に注目してみてください。相槌は、相手の理解度を図る非常に有効な尺度になります。相手の相槌を見れば「自分の話を相手はどのくらい理解し、共感しているか」を把握することができるのです。
「話が長い人」も存在すると思うのですが、聞いている側が「ちょっと何を言っているのか分からない……」となった場合、話者に対してどう切り返すべきでしょうか?うまく要点を聞きだすポイントはありますか?
相手が話している内容が理解できないときにも、先程からお話している
- 具体→事例、例え話
- 抽象→つまり、こういうこと、要するに
「例えば、〇〇になります」
「つまり、▲▲ということです」
というポイントを意識して、相手に質問しましょう。
相手の話が分かりづらい場合は、具体性と抽象性のどちらかが欠けていることが多いので、この部分をたずねるのが効果的です。
したがって、
- 「例えば、どういうことですか?」
- 「つまり、こういうことですよね?」
といった具合に話者にたずねるのが良いでしょう。
また、相槌は相手への同意や共感を示すと説明しましたが、共感したくない場合だけでなく内容が理解できない場合も、あえて相槌をしないという方法もあります。いちいち「理解できない」「反対だよ」と言わなくても、相槌をしないことでそれが伝わることが多いものです。
ケース別・話し方・説明のポイント
最近はWeb会議を使ったリモート商談を行う企業が増えています。商談や営業を行う際、顧客と話す際に注意するべきポイントがあれば教えてください。
まず「業績が良い」「御社のこの点が優れている」といったように、相手をとりあえず褒めることです。その後、「さらにうちの商品を使えば、御社の長所をいっそう引き出せて、競合と差をつけられる」と伝えましょう。
褒められた相手は当然嬉しくなりますし、相手が会社のことをよく理解してくれると感じます。相手企業はそのように自社に対する理解が深い企業から提案された商品を導入し、その結果実績が出れば万々歳ですし、プレゼンした側は信頼を勝ち取ることができます。
逆に、「良くないものを、改善してあげる」というスタンスだと、毛嫌いする方もいることを覚えておく必要があります。上から目線にならないようにするためにも、まず褒めることが大切になります。的確に褒め、相手をきちんと理解していることをアピールしましょう。
また「言質を取る」ことも大切です。「先日、〇〇とおっしゃっていましたよね?」「この商品を導入すれば実現できますよ」といったパターンです。つまりお客さまに興味を持ち、お客さまの目線に立って困っていることや課題を理解して、それを解決する提案をします。
テレワークを行っていると、人に会わない・話さない時間が多くなります。そのため、人によってはメンタルを壊すケースもあるそうです。そこで1on1など部下と面談を行う際に、注意するべきポイントについて教えてください。
意気消沈している部下に立ち直ってもらいたい場合、自分の失敗談を話すことが簡単でおすすめです。
具体的な失敗談を1つ2つ話してあげるだけで、十分です。逆にアドバイスは、それによって余計にへこむ可能性もあるので、むしろなくても良いと考えます。
基本的に悩み事相談の際には、話すのではなく「聞く」ことが主だと考えましょう。つまり悩みに対する解決策を提案するのではなく、寄り添い、話を聞くことが重要であり、それだけで十分なことも多いのです。
もし何か伝えようとするのであれば、短期的な仕事を与えるという方法があります。だれにでもできる仕事を、「いつまでにやってください」と与えて、褒める機会を作るのです。
このとき重要なのが、仕事内容のバランスを見極めることです。だれにでもできることですが、改善しようと思えば人によってはいくらでも良くできる内容の仕事を選ぶようにしましょう。長期的な仕事や達成が難しすぎる仕事の場合、途中で相談者が嫌になって投げ出してしまう可能性があるためです。また、逆に易しすぎるとすぐに終わってしまい、慢心してしまうこともあります。
ですから、やるだけなら簡単ですが、やればやるほどいろいろなことができるもの。例えば文章を書くというのもその1つですね。何かしら奥の深い、でも最低限はすぐにできるような単発的な仕事が最適です。
もちろん、ほとんどの方ができてしまうので、「できるじゃん!自信をもって次も頑張ろう」という話につなげられる効果がありますね。また、その結果を第三者が褒めていたと伝えるのも、効果的です。
分かりやすく、伝わりやすい話し方をするだけで、相手に与える印象は大きく変わります。人材育成やクライアント対応など、あらゆる面において話し方は大変重要な役割を担っているということを知っておいてください。
この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
樋口 裕一(多摩大学名誉教授・白藍塾塾長)
1951年生まれ。多摩大学名誉教授・白藍塾塾長。「小論文の神様」と呼ばれ、文章術に関する著書多数。著書に250万部のベストセラーになった『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)のほか、『頭のいい人の「説明」はたった10秒』(青春出版社)、『「頭がいい」の正体は読解力』(幻冬舎)がある。
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