【節税知識】借入金や減価償却が節税に!?しくみや注意点を税理士に聞く

2022/08/15更新

この記事の監修赤塚 法生(公認会計士 税理士)

借入金や減価償却に節税の効果があることを知っていますか?

しくみを簡単に説明すると、借入金も減価償却もどちらも「費用(損金)」として計上できるものがあり、費用計上することで利益(所得)を圧縮し、結果として節税につながるかたちです。借入金の場合は「利息」を、減価償却の場合は「減価償却費」を、それぞれ経費として費用計上することで利益を抑えることができます。

特に減価償却の方は、数年にわたって経費計上できるうえ、処理の際に現金支出を伴わないため大きな節税効果が期待できます。

今回は、あまり知られていない借入金や減価償却の節税効果を公認会計士・税理士の赤塚 法生さんに伺いました。

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借入金が節税につながるって本当?しくみやメリット・デメリットを知る

借入金が節税につながると聞きました。どうして節税になるのでしょうか?

借入金の支払利息を損金(法人税上)や必要経費(所得税上)に算入することで、その分利益を抑えられ、節税となります。お金を借りただけ・返済するだけでは節税になりません。利率が高ければ高いほど節税効果は高くなります。

だからといって節税目的で利率の高い借入先から資金を調達しようとするのは避けましょう。

節税目的での借り入れを避けるべき理由を教えてください。

そもそも、節税目的では金融機関もお金を貸してくれません。金融機関は「運転資金が必要なのか」「設備投資の資金が必要なのか」「借入金が活用されているかどうか」も見て、判断するからです。

また、支払う利息が多いのは大きなデメリットです。

例えば、1万円の支払利息を払うケースで実効税率(実際の税金の負担割合)が30%だとすると、10,000円×30%=3,000円の節税効果があります。しかし、10,000円−3,000円=7,000円分は、お金が出ていくことになります。必要な借り入れなら、利率を少なくして支払うお金を少なくしたほうが良いでしょう。

さらに、自己資本比率が低くなるというデメリットもあります。

自己資本は企業価値と考えられます。適正な自己資本比率を大きく下回ると、取引先の金融機関から「自己資本だけで会社をまわすことができず、倒産の危険があるのではないか」と判断されてしまいます。そうなると「借入ができない」「利率が高くなる」など、他の不利益にもつながる可能性があります。

ちなみに、適正な自己資本比率はどのくらいでしょうか。

業界や会社の規模によって異なりますが、自己資本比率は中小企業であれば最低でも30%、できれば40%は確保すると良いでしょう。借入金を60%におさえることで、健全な会社と判断される可能性が高くなります。

ここまでの話ですと、借入金は利用しない方が良いように思います。やはり、借金をしないに越したことはないのでしょうか?

いいえ。スピーディな資金調達という意味では借入金のメリットは大きいため、重要な選択肢の一つと考えていいでしょう。借入金をまったく利用せず、資金が足りないからと事業を展開しないというのもお勧めできません。自己資本で事業を行う姿勢は大切ですが、自己資本だけで事業を拡大させるには、限界があります。

避けるべきは「節税目的での借り入れ」であり、借入金そのものではありません。

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実は節税効果の大きい減価償却。上手に節税につなげるための注意点3つ

減価償却にも節税効果があると聞きました。どのようなしくみで節税につながるのでしょうか?

減価償却費を経費として計上することで数年にわたって利益を少なくすることができ、節税につながります。

そもそも減価償却とは「資産が時間の経過によりその価値が減っていく」という考え方に基づいて、決められた年数(耐用年数)新規タブで開くで分割した金額を毎年計上することです。つまり、設備投資など資産の購入金額が高額であるほど、減価償却による節税効果も大きくなります。

加えて、減価償却費を計上するときに現金支出がないことも、減価償却の節税効果が高い理由になります。

減価償却をうまく節税につなげるための注意点を教えてください。

減価償却をうまく節税につなげるには、耐用年数と減価償却方法、購入・事業供用のタイミングに注意しましょう。

節税の観点から考えると、耐用年数は短いほうが望ましいです。耐用年数が短ければ、その年の経費となる減価償却費が多くなり、その分税金を少なくできます。

ただし耐用年数が短くても、耐用年数の長いものと合算して計上すると、長い方に合わせて減価償却されるので注意が必要です。例えば、電気設備や内装は耐用年数が短く、建物は耐用年数が長く設定されているのですが、電気設備や内装を購入した際に建物と合算してしまうと、建物の方の耐用年数に合わせて減価償却することになります。そうすると、毎年の減価償却費が少なくなってしまいます。

減価償却の耐用年数を短くする方法として、資産購入時に車であれば中古車、建物であれば木造を購入するという方法もありますから、検討してみてください。

減価償却の方法には「定額法」と「定率法」がありますが、方法によって節税の効果に違いはありますか?

設備購入初期に多く節税したい場合は、定率法を選択するとよいです。

定額法は、毎期同じ金額で減価償却していく方法です。定率法は、逓減的な減価償却を行う方法で、初期に多くの減価償却費を計上することができます。通年での減価償却費はどちらも同額になります。

原則では「法人は定率法」「個人事業主は定額法」となっています。原則と異なる方法で減価償却を行いたい場合は、事業年度が始まる前に「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書新規タブで開く」を税務署に提出する必要があります。

購入・事業供用のタイミングで節税効果は変わるのでしょうか?

変わりますが、いつの資産購入が最適なのかはケースバイケースです。迷ったら資産購入を検討する段階から、どのような資産をいつ購入するか、税理士に相談すると良いでしょう。

減価償却費を多く計上することで節税につなげたいのであれば、年度初めに資産を購入したほうがよいでしょう。

減価償却は、事業供用の日から計上できます。事業年度の途中で購入して事業供用した場合は、その月から月割りで計算します。購入・事業供用が年度末だと1か月分~2か月分しか減価償却できず、年度始めだと11か月分~12か月分の減価償却が可能です。例えば会計年度が1月~12月の会社で、資産購入を検討する月が1月だった場合は、すぐに購入したほうが減価償却費を多く計上でき、節税になります。

また、資産を購入すれば購入時に消費税の仕入税額控除を行うことになります。仕入税額控除を多くできれば、その年度の消費税節税にもつながります。例えば、年度明けに購入予定の資産がある場合、購入時期を早めて年度末に購入すれば、その資産にかかる消費税をその年度の仕入税額控除とすることができ、節税になるのです。

特別償却や本則課税への変更も?まだある意外な節税対策

借入金と減価償却以外で、あまり知られていない節税対策を教えてください。

「特別償却」と「税額控除」も節税につながります。特別償却は、一定の条件を満たした企業が通常の減価償却とは別に経費を追加計上できるもので、経済政策の観点から認められている制度です。税額控除は、税金を直接減らすことができる方法で、上限金額が設定されているケースが多いです。

現段階では中小企業が機械などを取得した場合、中小企業投資促進税制新規タブで開くにより特別償却または税額控除を利用することができます。中小企業投資促進税制が利用できる会社は、特別償却、税額控除でいくら税額が安くなるのかをそれぞれ計算して、どちらか有利な方を選択するのが良いでしょう。

計算した結果安くなる税額が同じ程度であれば、税額控除をおすすめします。特別償却は、あくまでその年だけ特別に償却して費用計上するので、決算書の年度比較時に同じ経営内容であっても利益が異なり、比較しづらくなってしまうためです。

どちらを選ぶべきか判断が難しいときは、税理士に相談してください。

上記以外にも節税対策になるものがありましたら教えてください。

消費税に関して、簡易課税ではなく本則課税を選択することで節税につながることがあります。

簡易課税では、事業区分により売上のうち仕入税額控除できる割合が決まっています。一方の本則課税は、支払った消費税額を仕入税額控除することが可能です。大きな設備購入があると支払う消費税額が大きくなるので、簡易課税で計算した仕入税額控除額より本則課税で計算した仕入税額控除額の方が高くなる可能性があるのです。

売上が5,000万円以下で簡易課税を選択している事業者で、設備投資の金額が300万円を超えるようであれば、本則課税への変更を検討してみてください。事業者によっては簡易課税を本則課税に変更することで、消費税の還付を受けられる可能性もあります。

ただ、簡易課税を本則課税に変更するには、消費税簡易課税制度選択不適用届出書新規タブで開くを税務署に提出する必要があります。提出後は2年間、簡易課税に戻すことができません。そのため、売上規模、簡易課税の業種、仕入税率を考慮して、消費税を2年間トータルで計算して検討する必要があります。

複雑な計算となりますが、大幅な節税につながるケースもありますので、大きな設備投資は事前に税理士に相談することをお勧めします。

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この記事の監修赤塚 法生(公認会計士 税理士)

三重県津市出身。神戸大学大学院経営学研究科 卒業 修士(経営学)
経営コンサルティング会社、監査法人を経て、赤塚公認会計士事務所を設立し、現在に至る。クライアントは製造業、建設業、卸・小売業、飲食業などの一般事業会社および個人事業主のほか、医療法人、社会福祉法人、一般社団法人、土地改良区など多岐にわたる。三重県津市内の曹洞宗寺院で住職を務める僧侶でもある。赤塚公認会計士事務所新規タブで開く

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