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PCR検査や健康診断の費用は経費になる?判断ポイントを税理士が解説

新型コロナウイルス感染症の感染拡大とともに、PCR検査が業務上必要になることが増えました。編集部にもPCRのような検査費用を会社で負担すべきかどうかの質問が寄せられています。基本的には、業務上必要な出費は経費にできますが、判断が難しいケースもあるでしょう。

今回はPCR検査の費用の取り扱いを主軸に、みんなの会計事務所の代表である松本 佳之さんに「医療関連にかかる経費処理」についてお伺いしました。健康診断の費用やマスクの購入費、会社の常備薬が経費になるのかなどにも回答していただきましたので、ぜひお読みください。


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松本 佳之(税理士・公認会計士、みんなの会計事務所 代表)

「税理士のノウハウを会社成長の力に」をモットーに、大阪で起業支援、中小・ベンチャー企業の支援や税務の他、個人確定申告、相続・相続対策等の税務業務を手掛ける。みんなの会計事務所


PCR検査の費用は会社が負担?「業務上の必要性」と「公平性」が判断のポイント

――検査費用や医療関係の費用は、会社の経費となるかどうかの判断が難しいように思います。判断のポイントを教えてください。

1つ目のポイントは「業務上必要か」という点です。会社の経費となるものは、利益や所得を得るために必要な出費に限られます。業務上必要かどうかを判断する際は、一般的にはどう考えられているか(社会通念上、妥当かどうか)も考慮しましょう。

「社会通念上」という考え方は、税務署の判断基準としても用いられるものです。税務調査の中で、会社の経費とされていても本来は本人負担ではないかという指摘が入るケースもあります。国税庁のホームページで、ある程度一般的な事例を調べられるので、参考にしてみてください。

2つ目のポイントは「公平性」です。業務上必要な出費を、Aさんの分は会社が負担し、Bさんの分は自己負担、となると一部の人のみの経済的利益を図ったと考えられてしまいます。したがって、従業員全員にとって公平かどうかを考える必要があります。

判断に難しい場合は専門家である税理士に相談してください。


――以下、具体的にお伺いします。まず、PCR検査の費用を税務上、会社の経費とすることはできるのでしょうか?

PCR検査を受けることが業務上必要であれば、会社の経費にできます。ただし「全従業員一律に検査する場合」や「合理的な基準に当てはまる従業員が対象の場合」という条件の下です。

「合理的な基準」とは例えば、業務内容や必要性によって従業員を区分し、検査を受けるか否かを決めたルールなどを指します。具体例を出すと、サービス業や接客業で「店舗でお客さまと接する従業員は検査の必要あり、本社で事務を行う従業員は検査の必要なし」というようなものです。このような決めごとが「合理的な基準」です。

また、職場内で新型コロナウイルスの陽性者が出ると、事業を継続するために感染の広がりを防ぐことが必要になると考えられます。そのときに「新型コロナウイルスの陽性者と同じ部署の人は検査を受けるように」と決めたルールも、合理的な基準に当てはまります。

ちなみにPCR検査の費用を経費とする際、勘定科目は「福利厚生費」を使用します。


――特定の従業員のみのPCR 検査費用を会社で負担した場合は、どのような処理になるのでしょうか。

役員だけのPCR検査費用を会社が負担する場合、その経費は「役員報酬」となります。その他特定の従業員の場合は「給与」として処理します。会社は検査費用を役員報酬や給料に上乗せする、ということです。一方、役員や従業員側は所得が増えるので、所得税もその分増えることになります。


――会社からPCR検査を受けるように指示をする際、どの程度の指示であれば会社負担となるのでしょうか。

一般的には、会社が業務上の必要性から指示して行うものは、会社が負担すべき費用と考えられます。「検査してきたらどうでしょうか」という軽めの言い方でも「必要なので検査してください」という強い表現でも、どちらも指示ですので会社が費用を負担します。

ただし、最終的には本人の自由意思に基づいて検査を受けてもらう必要があります。会社が指示したとしても、検査を受けることを強制することはできません。


――では、会社の指示ではなく、従業員が個人判断で業務に必要と考えてPCR検査をした場合は、会社負担と個人負担のどちらになるのでしょうか。

従業員の個人判断でPCR検査をした場合、費用は個人負担になります。会社の指示によらないものを従業員の判断で行い、さらに事後報告をしたような場合にまで、会社が費用を負担することは考えにくいでしょう。


――検査費用を会社で負担するときは「前払い」「後払い」のどちらになりますか。

実際に検査費用がいくらになるか、わからないため実務的には後払いが多いでしょう。ですが、前払いができないわけではありません。

なお前払いの場合、実際にかかった金額が前払いした金額より少ないときは、領収書を基に清算し、過払い分を従業員から返金してもらいましょう。


――検査費用のうち、会社が負担する金額を「50%だけ」や「10分の1のみ」など一部負担とすることは可能ですか。

一部負担は一般的とはいえないため、厳しいです。業務上の必要性があるから会社が費用を負担するわけであり、一部のみの負担は業務上の必要性を問われたときに説明が難しいでしょう。

【ケーススタディ】PCR検査費用の会社負担は一般的な相場が目安

――実際に、中小企業経営者であるAさんから弥報Online編集部に以下の質問が寄せられました。この場合、どうなるのでしょうか。

従業員に、新型コロナウイルスの陽性者が出ました。同じ部署の従業員が安心して働けるようにと、その部署の10人全員に各々が行きやすい医療機関でPCR検査を受けるよう指示しました。PCR検査は1人当たり数千円~3万円ほどの範囲だろうと考えていましたが、実際には3万円~10万円と高く、合計50万円ほどかかって驚いてしまいました。会社の経費として全額負担しなければならないのでしょうか(経営者・男性・30代)。

一般的な相場から大きくかけ離れた価格は、税務上の経費として認められない可能性があります。経費と認められなかった場合、個人負担となります。Aさんのケースでは「〇〇円以下(一般的な相場)のPCR検査は会社で負担するので、検査を受けてきてください」という指示をすべきだったといえます。 特別な事情がない限りは、一般的な相場を基準としてください。PCR検査費用が一般的になったのは最近のことですが、2022年4月現在の相場は2~3万といったところではないでしょうか。

「特別な事情」の例を出すと、今すぐ検査結果を出さなければ商談に差し支えるなどで、結果が早く出るPCR検査を受ける必要が業務上ある、などでしょうか。このようなケースに限り、特別に高額な検査費用も経費と認められる可能性があります。

また、PCR検査の他に精密検査などのオプションを付けた場合、オプション分の費用は個人負担となります。合算で請求があったとしてもです。

なお、PCR検査に限らず保険の適用がない検査は、比較的高額になります。Aさんのように予想外の金額に驚くケースも少なくありません。これを防ぐには事前に相場を調べ、会社が負担する金額の上限をあらかじめ決めて伝えましょう。


――ちなみに、会社ではなく個人で負担したPCR検査の費用は、医療費控除の対象になりますか。

新型コロナウイルスかどうかに関わらず感染症の疑いがある人に対して行う検査費用は、医師の判断がある場合は医療費控除の対象となります。

自己判断で感染していないことを証明するための検査費用は、医療費控除の対象とはなりません。ただし、自己判断で検査し陽性が判明した場合には、治療に先立った検査と考えられるため医療費控除の対象となります。

健康診断費用、業務で発生した怪我や病気の治療費……これも経費?

――新型コロナウイルス以外の感染症について、検査費用が会社の経費となるか教えてください。

新型コロナウイルス以外の感染症も、考え方としては同じです。会社が負担した検査費用で業務上必要なものは税務上、経費にすることができます。

ただし「業務上必要かどうか」の視点を忘れないようにしましょう。例えば、よくある季節性のインフルエンザであれば、罹った従業員が出たからといって業務上、全社員への検査が必要とまで言えないこともあるでしょう。このような場合は業務に必要とはいえず、費用を経費にすることはできません。

仮に、今後また新たな感染症が拡大し、業務を継続するために感染対策などを講じる必要がある場合は、新型コロナウイルスのケースと同様に考えることとなるでしょう。


――健康診断の費用は経費になりますか。

はい。通常、健康診断や人間ドックの費用を会社が負担した場合は、会社の経費にできます。「福利厚生費」として処理しましょう。

全従業員が対象のもの(一般的な血液検査など)は経費で問題ありませんが、中には女性特有の病気の検査やがん検診など、全員が受けるものではない検査もあるでしょう。このような検査についてはオプションメニューを用意しておき、その検査の対象となる人が、メニューの中から受けるか否かを一人一人が選択できる形にすれば、受けた人数分の検査費用は経費にできます。ただし、役員や特定の従業員だけが特別に検査を受ける状況では、経費にできません。この場合は個人負担となり、役員報酬や給料に上乗せするか従業員個人が支払うことになります。


――感染症の検査や健康診断を受けなかった従業員に対して、その分の検査費用を金銭で支払う必要はありますか?

その必要はありません。検査を受けた従業員の検査費用や健康診断費用は会社負担で経費とできますが、受けなかった従業員については費用が発生していませんので、金銭を払う必要はありません。

また、検査や健康診断を受ける病院を会社側で指定したにもかかわらず別の病院で検査や健康診断を受けたときは、本人の自己負担にすることも可能です。会社は、その従業員が検査や健康診断を受けられる環境を整えているのですから、問題ありません。


――従業員が業務中に怪我をした場合、その治療費は経費になりますか。

業務中に怪我をしたなど労災(労働災害)が起こった場合、その怪我の治療費は労災保険から支給されます。労災保険が支給されなかった部分を会社が負担した場合は、経費にできます。


――うつ病などメンタルヘルスに関連した病気の治療費は、会社経費と自己負担のどちらになりますか。

メンタルヘルスの原因はさまざまですから、ケースバイケースになると思われます。裁判などで会社に原因や責任があると判断されれば、治療費を経費にできます。その場合は「雑損失」などで処理してください。なお行政上のペナルティである罰金などは、会社の経費とならない場合もあります。

業務上必要であれば、マスクの購入費も経費にできる!その他、備品について

――マスクの購入費用は税務上、会社の経費になりますか。

業務上必要(勤務時に着用が必要)であれば、会社の経費にできます。勤務とは関係なく使用するマスクや、従業員の家族など従業員以外の者を対象に支給するマスクの費用は個人負担が原則です。


――会社で常備薬を準備しているケースで、その薬代は会社の経費になりますか。

会社に常備してある薬の購入費用は、会社の経費にできます。福利厚生費として処理しましょう薬を従業員全員に配らなくても、従業員がだれでも使える状態であれば公平と言えるので問題ありません。

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著者:弥報編集部
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