まもなく「平成」が終わりを告げます。2019年4月1日に新元号「令和」が発表され、5月1日より施行されますが、これに伴い、各企業でも平成から新しい元号「令和」への変更に対応する必要が出てきました(※2019年4月1日、編集部にて新元号の箇所に「令和」を追記しました)。では、具体的にはどんな対応が必要なのでしょうか。今から準備できることや注意点について、また、祝日法による10連休で気をつけたいことなど、社会保険労務士の片野誠先生にお話を伺いました。
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片野 誠 氏(社会保険労務士) 1972年神奈川県生まれ。中小企業の総務部において、経理に約3年、人事・総務に約9年半従事。2006年度社会保険労務士試験に合格。2008年2月に社会保険労務士として開業。2009年5月特定社会保険労務士付記。〈所属〉全国社会保険労務士会連合会、東京都社会保険労務士会、東京都社会保険労務士会 千代田統括支部。 片野誠事務所 http://www.sr-katano.jp |
まずは書類やシステムで和暦が使われているものをチェックする
――改元にあたり、事前に準備しておいた方がいいのはどんなことでしょうか?
片野誠先生(以下、片野): まずは現在、自社で使用している書類やシステムで、どんなものに和暦が使われているか把握することが大切です。書類については、領収書や請求書、給与明細書をはじめ、社員の生年月日、入社年月日、保険取得年月日、退職年月日など、どんなものに和暦を使っているかを確認しましょう。システムは、和暦で計算しているものなど、改修しなければならないものは早めに対策をとる必要があります。
手書きの書類などは支障ありませんが、勤続年数の計算システムで和暦を使っているとか、元号が変わることで大きな影響が出てくるものはないか、何を改修しなければいけないかを確認することが必要です。

Excelで勤続年数などを和暦計算している場合は、改修する必要があります。
――30年前、昭和から平成に変わった時は、混乱はなかったのでしょうか?
片野:当時、私も学生だったので詳しいことはわかりませんが、取り立てて大きな問題はなかったようです。今は様々なものがシステム化されているので、今回の方が影響は大きいかもしれませんね。
――新元号は 5月1日に施行されますが、その日から元号を変えなくてはいけないのでしょうか?
片野:必ずしも5月1日から変える必要はないと思います。例えば、年金受給など、行政と金融機関も連動しているような場合は、自社だけで変更するのではなく、外部との連携が必要です。行政でも追いつけないところは暫定的な措置として平成を使って行くと言われていますので、準備が整ったところで切り替えるのがいいかと思います。社内でも混乱がないよう、何をいつから変更するのか、自社の方針を固めておくといいでしょう。
――自社のものを変更するのに、いいタイミングはありますか?
片野:決算期や年度始めがわかりやすいかもしれませんね。今期から、今年度から変更しますということでわかりやすいですから。
和暦を使っていくか、西暦に変えるか。注意点は?
――この先も元号が変わることを考えると、これを機に西暦に変更をすることも検討した方がいいのでしょうか?
片野:ものによっては西暦に変更を考えてもいいのかもしれません。労働者名簿など、一部を西暦表記に変更した会社さんもあります。ただ、行政官庁は和暦を使うので、一般的には今後も和暦を使うところが多いのかなと思います。
――行政でも、ある程度は旧元号に対応していくとはしているものの、気をつけなければいけないものに公的書類があると聞きますが。
片野:例えば、家を借りたり買ったりする時に会社から源泉徴収票を出してもらいますが、それが違っていると問題があるかもしれません。ほかにも、育児休業中や保育所に入るために必要な労働条件の証明書など会社が証明するものについては、意識を高くした方がいいかもしれませんね。契約書類も和暦を使っている場合は修正が必要です。
――そのほか、準備できることはありますか?
片野:保険料の計算などに「年齢早見表」を使っているところは、作り直すといいですね。
――今回の改元では、新天皇即位を受け、5月1日が祝日となることが決まりましたが、注意すべきことはありますか?
片野:5月1日が祝日となることに伴い、前日および翌日が国民の祝日である日は休日とするという「祝日法」の規定により、4月27日から5月6日まで10連休になるという企業も多くあると思います。お祝いムードが高まる中、企業として検討しなければならないことに、この期間の給料支払いなどがあります。
例えば、お給料が月末締め、翌月5日払いの場合に、就業規則で祝日前に支払うと決まっていると、4月27日や28日と、締日より早く支払う必要が出てきます。そうなった時、残業代の支払いをどうするか。計算できる日数分は払って、計算できない分は翌月に回すとか。どう対応するかを事前に従業員に伝えておかなければなりません。遅くとも支払いの1ヶ月以上前から説明をしておく必要はあると思います。
お給料の支払いをいつにするか、連休中、金融機関が休みになる可能性もあるので、振込や口座振替日も要確認。資金繰りを考えておく必要はありそうですね。
――給与以外にも、会社としての支払いもありますね。
片野:そうですね。月末払いがある場合は、取引先と事前に決めておく必要があります。感覚としては年末年始に似ているので、その期間の対応と合わせるのもいいかもしれません。
早め早めの対応で毎日の業務を支障なく進めましょう
片野先生のお話で、新元号に伴う企業の対応として、まずは現在、何に和暦が使われているかの現状把握をし、会社の方針を決めることが大切なことがよくわかりました。
行政官庁関係に提出する書類についてはある程度の猶予期間はあるものの、古い書式をいつまでも使っていると受理されないこともありますので、準備が整い次第、新しいものに変更していくことが必要です。
今後は「新元号」だけでなく、2019年10月の「消費税法改正」など、いくつもの変更・改正があり、「税務手続の電子化推進」も進められます。弥報Onlineでは読者の皆さまの参考になるトピックをわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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