著者・体験者:大住 奈保子 編集者・ライター
突然ですが皆さん、古くなった携帯電話やスマホ、パソコンって、どうやって処分していますか? 携帯電話やスマホのメモリー、パソコンのハードディスクには機密情報もギッシリ。処分の仕方によっては大事なデータが流出し、会社の信用問題にかかわるトラブルに発展することもないとは言い切れません。
インターネットで検索するとたくさんの回収業者が出てきます。各社のホームページには「回収後のデータ消去に完全対応」「セキュリティ対策も万全」などの言葉が並んでいます。中にはデータ消去のやり方まで、丁寧に説明しているところもありました。
でも……でも……、実際に廃棄された機器のデータが本当にちゃんと消去されているのか、情報が流出しないようになっているのか、この目で見ないと安心できない!
弥生のあんしん保守サポートに加入されているお客さまに無償でご利用いただける「不用パソコン無償回収サービス」は、現在6,100件以上のお申し込みをいただいている大人気サービスですが、本当に無償でもきちんとデータを消去してくれるのでしょうか?
心配性のライター大住、あんしん保守サポートで回収された機器の処理をしている工場を突き止め、回収・処理の現場を見に行ってきました!
携帯電話やスマホ、パソコンを適当に捨ててはいけないワケ
今回見学したのは、OAやIT機器を中心とした廃棄物の処理を行う、オリックス環境株式会社の船橋工場。携帯電話やスマホ、パソコンのほかに、複合機や自動販売機、空調機器などの処理も行われています。
金属系廃棄物を専門としているだけあって、敷地内には大きなプレス機や破砕機がいっぱい。カタくて大きな金属の塊がガンガンと音を立てて砕かれ、重機で次々と運ばれていきます。なんかカッコいい……!

重機が挟んで持ち上げているものをよく見てみると……

立方体になるまでプレスされた金属の塊でした。元が何だったか分からないくらい圧縮されています

工場の敷地内ではたくさんの重機が働いています。金属がこすれたりぶつかったりする音が鳴り響いています
いろいろな工程を経て、最終的にはこんなに小さい破片になっている!丁寧に処理してくれているのはうれしいけど、ただ捨てるだけなのにこんなに手間をかけて砕く必要あるのかな?オリックス環境株式会社の深谷幸彦工場長にお話をうかがいました。

携帯電話の基板の破片を持たせてもらいました。ここまでバラバラにしてあれば大丈夫な気もするけれど、これでもまだまだとのこと
深谷:絶対に砕かなくちゃダメなんですよ。
大住:えっ、そうなんですか?

オリックス環境株式会社の深谷幸彦工場長
携帯電話やスマホ、パソコンは鉄やアルミなど多くの種類の金属部品でつくられています。このうち鉄は製鋼原料、アルミはアルミ原料、それ以外のステンレスや銅などの非鉄は非鉄原料として再利用されます。このほか基板には金や銀、今話題のレアメタルと呼ばれる希少な金属も含まれているので、これらも原料として再利用されます。

OA・IT機器処理の処理フロー(資料提供:オリックス環境株式会社)
深谷:携帯電話やスマホ、パソコンは、法律によってリサイクル前提の産業廃棄物として処分しなければならないと定められています。正しく処分しないと、法律に抵触する可能性もあるんですよ。
大住:えっ、そうなんですか(汗)!? 危なかった~。

携帯電話を集めてそのまま捨てるだけかと思っていたから、オリックス環境の皆さんから聞く一つ一つの説明が目からウロコでした
ただ捨てるだけかと思いきや、話はそう単純ではない模様。今やほとんどの会社で携帯電話やスマホ、パソコンを使っていると思いますが、捨て方までしっかり責任を持たないといけないってことは、知っておくべきことですよね。
ハードディスクのデータはどうやって消去されている?
大住:そういえば、機密情報がたくさん入っているような携帯電話やスマホ、パソコンのデータ消去って、どうされてるんですか?
深谷:もちろん細心の注意を払って対応していますのでご安心ください。厳密なセキュリティーで管理された別室で、ハードディスクのデータ消去や破壊を行っています。まずは携帯電話やパソコンを手で解体し、ハードディスクを外すところからですね。
エアードライバーを使って、次から次へとパソコンを解体していくスタッフさん。なんでも、機種によって取り外しの方法が違うのだとか。毎日解体していると、この機種はこうすれば外れる、と自然に分かってくるという鮮やかな手さばきは、まさに職人技!

こうやって手作業で一つ一つ分解されていきます。慣れているだけあって早い!

携帯電話やスマホもあっと言う間に分解しています(スマホや携帯電はバッテリーを外した後に後述のリングシュレッダーに直接投入します)
こうして本体からハードディスクを外したら、いよいよデータ消去です。データ消去の方法には2通りあり、1つはハードディスクを装置に入れて、磁気を照射する方法。もう1つはハードディスクに穴を開けて、物理的に破壊する方法です。
どちらも確実にデータを破壊・消去できるけれど、破壊されたという実感があるぶん、穴を開ける方法を選ぶ企業が多いとのこと。金融系の企業など情報の管理に厳しい会社の場合、磁気を照射したあとに穴開けを施すという合わせ技で対応することもあるそうです。念には念を入れた処理をしているんですね。

専用の機械を使ってハードディスクに磁気を照射してデータを完全に破壊しています。こんなものもあるんですね

こちらは、専用の機械を使って物理的に穴を開けて破壊されたハードディスク
データ消去を行うデータ消去室は常に施錠され、特定のスタッフしか入室できないようになっています。また、ハードディスクは取り外したらすぐに投入口からデータ消去室に投入するという決まりもあるという厳密な運用。業務上の重要データを取り扱うという認識をスタッフ全員が持ちつつ、防犯カメラを設置するなど、管理には細心の注意を払っているのです。
ド迫力の「リングシュレッダー」で素材別に分類
解体された部品は「リングシュレッダー」という機械で5センチ角くらいの大きさに破砕され、金属ごとに分類されます。青と黄色のカラーリングが施された外観が、近未来感バツグン!この機械だけで、1日に30トン(!)もの金属くずを処理できるとのこと。

1日30トン強の金属くずを処理できる「リングシュレッダー」
その名のとおり中心の大きなローターにはリング状の刃がいくつも付いていて、目が回りそうなほどの高速で回転しています。破壊されたものは、磁選機で鉄だけを吸い付けます。それ以外のアルミや銅は磁石に反発して飛ばされ、プラスチックは飛距離の違いから、また別の場所に飛ばされます。

磁石で鉄が選別されています

金属を取り出したあとの残りだけが最後に集められています。機械で全て分別されているんですね
こうして種類別に分けられた金属やプラスチックは、外部の提携会社などに運ばれ、リサイクルされます。しっかりと分類するだけで、ゴミだった金属片がまた生き返るなんて、地球にも優しく素敵ですよね。
データがちゃんと消去されているかが心配で始まった、今回の工場見学。実際に現場に行ってみると、スタッフの人たちは環境への配慮や資源の再利用など、想像以上にたくさんのことを考えて作業していました。企業のCSR活動に注目が集まる昨今、社内備品の正しい処分法を改めて調べるなどして、ぜひ正しい知識を身につけておいてくださいね!
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