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資金繰り表やスマート取引取込の活用で業務効率化!経営に新風を起こす5代目がやったこと【株式会社田中工業所】

2022.11.04

著者:弥報編集部

監修者:田中 佑子

1949年に岐阜県で創業した株式会社田中工業所。もともとは繊維会社の機器メンテナンス事業などを請け負う企業として発足し、現在は「加圧浮上装置」という廃水処理装置の製造・施工管工事を専門に行っています。10年前から経理や労務など幅広く担当する田中 佑子さんは、創業一家の5代目。資金繰り表や「スマート取引取込」などを活用した経営方法で、さまざまな分野で業務改善を進行します。

家業に携わる中で、事業承継の決心がついたという佑子さんがどのように業務改善をしているのか、また後継者としての決意なども含めてお伺いします。


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必要に迫られ入社も、次々と業務改善を実現

田中工業所について教えてください。

創業当時は、繊維会社の機器メンテナンス事業などの下請け業務などが主でした。その後、1971年から製作を手がけてきた「加圧浮上装置」が事業の柱となります。微細な泡に水の中の浮遊物質を付着させ取り除く廃水処理装置で、工場廃水に含まれる薬品などを濾過する前段階の処理を担っています。精密機械工場、自動車整備工場、食品加工を行うスーパーなど、さまざまな場面で使用されています。

佑子さんが入社されたきっかけや、どのように家業に携わられてきたのか教えてください。

家族に不幸があり、後継者問題が現実的になったタイミングがありました。家族のようすを見て、自分が家業に関わらないという選択はありませんでしたね。社長である父に「入社するなら経理を担当してくれ」と頼まれたこともあり、当時勤めていた会社を退職し、家業にかかわるようになりました。当時は経理の知識はまったく無く、すべて手探りの状態から始めました。最初は税理士に仕訳を教わったり、自身で調べたりしながら、約半年の間で会計の基礎を学びました。

実際に経理業務を行っていくと、当時はアナログな手法だったこともあり、日々の入力業務に忙殺されましたね。経理以外のことに関しても、前職が大企業だったこともあり、製品のことやその他の業務に関する落とし込みがあると思っていたのですが、そのような制度はありませんでした。

今思えば、自らやるべきことを見つけだすという姿勢は、このころからのような気がしますね。当時は、右も左もわからない中、荷物が置かれていた工場の一角の片付けや掃除から始めました。

自分の目で会社の現状を見ていく中で、さまざまな分野において改善していきたいと感じるようになりました。具体的には手書き業務を廃止し、「弥生会計 オンライン」や「やよいの給与計算」、請求書作成ソフト「Misoca」など、さまざまなデジタルツールを採用するなどして効率化を目的に業務改善していきましたね。手間のかかっていた経理や総務の作業が、大幅に時間短縮できました。

スマート取引取込で、数字の照会作業が驚くほど楽に

特にもっと早く入れればよかった、と思うほど導入してよかったのは「スマート取引取込」です。以前は仕訳作業もですが、銀行から届いた照会用紙を弥生会計と突き合わせたときの、差異を確認・修正していく時間もすごく多かったんです。そういったチェックに加えて、建設業経理の科目も使っているので、完成工事未収金がきちんと消し込みされているか、といった照合も必要でした。

導入後は莫大な照会時間を一気に削減でき、さらに「Misoca」を連携させることで売上高が自動計上されるようになりました。「スマート取引取込」を使って銀行口座、クレジットカード利用明細、「Misoca」の情報を弥生会計と連携したことも業務効率化に効果的でしたね。

日々の業務だけでなく、予想外にいい効果もありました。新規契約した税理士が弥生のパートナー登録をしていたんです。弥生のクラウドサービスで、すべてのデータを共有できるようになった結果、税理士から都度アドバイスをいただくなどして、データを経営に活用できるようにもなりました。

独自の資金繰り表活用で、先回りの資金調達を可能に

資金繰り表を活用して経営改善も行われているそうですね。

はい。資金繰り表に関しては、入社当時から作成を始めました。もともとは、銀行から資金繰りに関してつっこまれるのを避けるために取り組んだのですが、今では経営に必要不可欠な表です。

最初は自分で検索しながら見よう見まねで作りました。月毎に出入金を管理すれば、いつどのようなお金の動きがあるか常に明確になるため、大きな支払いの時期を調整し、不安定な経営状態を防げるようになったんです。銀行への融資依頼の際にも、確実な返済日などを具体的に伝えられるため、会社としても信頼度も大きく上がったように思います。

自社のお金の動きがまったくわからない場合は、日繰り表を作成するのも有効です。1か月のお金の動きがある程度把握できるようになってくれば、毎日記録しなくてもいいですが、一度作ってみると自社のお金の動きがよくわかりますよ。


どのようことに気を付けて資金繰り表を作成しましたか

ベースとなるフォーマットはあっても、自社に最適な資金繰り表になるように自作することがポイントです。私は月を3分割して資金繰り表を作成していますが、常に改善を重ね、実は今でもアップデートを繰り返しています。入金額の増減などが発生した場合も、すぐに反映させ、気になった時にすぐに確認できるようにしておくことも大切ですね。

また過去の出入金記録をさかのぼり、ある程度お金の動きの予測を立てた「未来資金繰り表」も半年先まで作成できればさらにいいと思います。大きな支払いは、予想される出金を見てタイミングを決める必要があります。自社のお金の動きを俯瞰して見られるようになったことで、より正確な決断ができていると感じます。

具体的な資金繰り表の作成時には、弥報オンラインの「資金繰り表作成」に関する記事も非常に参考になりました。何から手を付けていいかわからない時は、こういったまとめ記事を活用するのも有効かと思います。

その他に、資金繰り表を活用してよかったと思う点はありますか。

資金繰り表を作ることで、経営状態をコントロールできるようになっただけでなく、会社としての明確なゴールと、それを達成するための課題もクリアに見えてきたんです。自社を資金繰り表を通して見つめ直すことで、業務改善の具体的なアイデアが出てくるようになりました。

事業承継を決意したきっかけ

この度事業承継を決意されたと伺いました。心情の変化があったのですか。

そうですね、入社当初は自分が後継者になるとはまったく考えていませんでした。工場のデジタル化やさまざまな弥生ツールの採用を進めるなかで、だんだんと会社を継ぐ使命感のような感情が芽生えてきたんです。まだまだいろいろな面で改善を重ねている真っただ中。せっかくここまできたのだから、このまま私がやるしかないのでは、と思いましたね。

出展した展示会などで、多くの方から自社装置にお褒めの言葉をいただいたりしたこともありました。衰退産業とばかり思っていたのですが、そうではないのではと考えを改めたことも、事業承継を決意するきっかけになりました。


事業を引き継ぐことに、不安はありますか。また事業承継に向けて準備していることはありますか。

もちろん不安は感じます。だからこそ自ら行動し、情報収集することで、次の動きへ繋げていけるのだと思います。私はSNSなどで、同じように後継者として悩みや不安を抱える方と繋がったり、後継者の成功事例を参考にしたり、自らが情報発信を行ったりと積極的に活動しています。経営者は孤独と言われますが、実は後継者も孤独なんです。1人で不安や悩みを抱え込まず、跡継ぎのコミュニティをうまく活用しながら不安をやる気に変換していきたいですね。

事業承継のために特別な準備をしているわけではありませんが、自社製品に関する知識をもっと身に付ける必要があると考えています。担当者に積極的に聞くなどして自分の知識を増やすとともに、逆に何か改善できることはないか、もっと社員の負担を軽減できないか、など常に観察しています。工場でもITツールを導入することで、生産の見える化を促進している最中です。


今後どのように会社を発展させていきたいですか。

業務改善が進行すれば、会社自体の力も上がっていくと考えています。まずはさまざまな最新のツールを採用しながら、現場の滞りを無くし、よりクリアな生産体制を作り上げることが当面の目標です。創業からの歩みもあり、今は下請け体質が強いのですが、ゆくゆくは装置メーカーとして確固たる地位を築いていきたいと考えています。


最後に、同じ業界で頑張っている方や、家業の後継者に向けてメッセージをお願いします。

やらないといけないことはたくさんあると思います。私も、日々課題を1つ1つクリアしながら前進していくことを心がけています。特に後継者はプレッシャーを感じたり、いろいろと悩まれることもあると思いますが、場所を探せば、同じような立場の人が見つかります。ぜひ声を上げていただき、皆で情報交換して一緒に奮起できればと思いますね。

株式会社田中工業所

https://tanaka-kgs.co.jp/
所在地:岐阜県大垣市西崎町4丁目18番地
従業員数:12名(2022年8月現在)

撮影:Atsushi Watanabe


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

田中 佑子(株式会社田中工業所)

中京大学体育学部卒業後、スポーツ用品小売業の企業へ就職。兄の不幸を機に家業へ入社。建設業経理士2級取得。自身の体験を活かそうとTwitter界で資金繰り表作成推進委員会を立ち上げ、資金繰り表を作る大切さを広く伝えている。

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