年末調整の書類の書き方とは?2023年(令和5年)の変更点を解説

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

従業員を雇用している企業が、年に1度、必ず行わなければいけないのが年末調整です。年末調整では、従業員からさまざまな書類を提出してもらわなければなりません。

提出書類が足りなかったり、記載内容に不備があったりすると、正しく年末調整が行えないため注意が必要です。提出書類の中には、企業から従業員に配布して記入してもらうものもあるため、各書類の書き方をしっかり理解しておくことも大切です。

さらに、税に関わる制度は頻繁に改正があるため、年末調整の準備に入る前に、最新の情報についてもチェックしておきましょう。ここでは、年末調整で必要になる書類の種類と具体的な書き方を、2023年(令和5年)の変更点と共に解説します。

【初年度0円】クラウド給与計算ソフトで大幅コスト削減【全機能無料でお試し】

【初年度0円】給与明細をかんたん作成・スムーズ発行【法令改正に自動対応】

年末調整は所得税の過不足を調整する手続き

年末調整は、従業員の所得税の過不足を調整するために企業が年末に行う手続きです。

会社員などの給与所得者の所得税は、月々の給与や賞与から源泉徴収(天引き)され、本人に代わって勤務先の会社などが納めることになっています。ただし、源泉徴収された所得税は概算であって、正しい納税額ではありません。

そこで企業は、1年間の給与が確定した時点で正しい所得税額を計算して源泉所得税との差額を求め、納めすぎていれば従業員に還付し、不足していれば追加徴収します。この一連の手続きを年末調整といいます。

年末調整の対象になるのは、会社員をはじめとする給与所得者です。給与所得のない自営業者などは、年末調整ではなく、自分で確定申告を行って納めるべき所得税を計算します。

年末調整で適用される所得控除

所得税の計算をするときに、要件が満たされれば所得金額から一定の金額を差し引くことができる所得控除という制度があります。所得税の税額は、所得から所得控除を差し引いた額に所定の税率を掛け、算出されます。

所得控除が適用されると、所得税の計算のベースになる課税所得を減らせるため、税負担を軽減することができます。所得控除には、合計所得金額が2,500万円以下の人に適用される基礎控除の他、該当する人が利用できる扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除、保険料控除など、さまざまな種類があります。

これらの所得控除のうち、医療費控除と寄附金控除、雑損控除の3つを除く控除は、年末調整で手続きを行います。ただし、どの所得控除を適用し、控除額がいくらになるのかは人によって異なるため、年末調整を行う企業側が、従業員の個々の状況を把握しなければなりません。そのため、年末調整では、所得控除の申告に関するさまざまな書類を従業員から提出してもらう必要があります。

年末調整の対象となる人

年末調整の対象になるのは、原則として、12月31日時点で企業に在籍している従業員です。また、前提として、対象者は対象年の最初の給与支払いを受ける前日までに、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している必要があります。

1年を通じて勤務している人はもちろん、年の途中で入社して年末(12月31日)まで働いてきた人も、年末調整の対象になります。ただし、年末時点で在籍している従業員のうち、1年の給与総額が2,000万円を超える人や、災害減免法の規定により所得税の徴収猶予や還付を受けた人は対象外です。

また、通常は12月に年末調整を行いますが、次のいずれかに該当する人は年の途中に年末調整を行う必要があります。

年の途中で行う年末調整の対象となる人

  • 海外支店などに転勤したことにより非居住者となった人
  • 死亡によって退職した人
  • 著しい心身の障害のために退職した人(退職後に再就職する見込みのある人は除く)
  • 12月の給与を受け取った後に退職した人
  • パート社員などが退職した場合で、年間の給与総額が103万円以下である人(退職後、その年に他の勤務先から給与の支払いを受ける見込みのある人は除く)

年末調整で従業員が提出する書類

年末調整にあたって従業員が提出する書類は、主に下記の4種類です。受けられる控除の内容によって、提出の書類が異なります。

年末調整で必要な書類
必要な書類 受けられる控除
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除
給与所得者の保険料控除申告書 生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 住宅借入金等特別控除、特定増改築等住宅借等特別控除

また、それぞれの書類が何の手続きに必要で、どのような情報が記載されるのかなどを確認していきましょう。提出漏れがあると年末調整が行えないため、必ず提出書類と記載内容の確認をすることが大切です。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書には、源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族などの情報が記載されます。これは扶養控除などの金額を算出するために必要な内容です。

なお、配偶者や扶養親族などの有無にかかわらず、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、源泉徴収税額表の甲欄適用者全員から提出を受ける必要があります。申告書が提出されていないと、年末調整を行うことができません。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の詳細な書き方については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書は、基礎控除や配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除を受けるために必要な書類です。基礎控除の適用を受ける場合は、その年の合計所得金額(見積額)が2,500万円以下の人が対象となります。

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書の詳細な書き方については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

給与所得者の保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書は、年末調整で保険料控除を受けるために必要な書類です。保険料控除には生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除があり、それぞれ必要項目を記載します。

なお、社会保険料控除については、基本的に企業側で社会保険料を計算して記入します。ただし、社会保険料を給与天引きでなく従業員が直接納付していたり、親族の社会保険料を支払っていたりする場合は、従業員による記入が必要です。

給与所得者の保険料控除申告書の詳細な書き方については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書は、住宅借入金等特別控除を適用するために必要な書類です。住宅借入金等特別控除とは、一般的に「住宅ローン控除」と呼ばれ、住宅ローンを利用して住まいの購入や増改築などをした場合に利用できる控除です。なお、住宅ローン控除を年末調整で手続きできるのは2年目以降です。最初の年は従業員自身で確定申告が必要なので注意しましょう。

給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の詳細な書き方については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

2023年(令和5年)の年末調整の変更点

2023年(令和5年)の年末調整を行ううえで注意したい変更点は、下記の2つがあります。年末調整で申告した内容が間違っている場合、やり直しが必要となってしまいます。余計な作業が発生しないよう、変更点を毎年チェックしましょう。

国外居住親族の扶養控除における適用範囲の変更

2022年度(令和4年度)の税制改正によって、国外居住の扶養親族の適用範囲にも変更がありました。

従来、国外に居住する親族について扶養控除を申告する場合、国内の扶養親族と同様に「納税者と生計を一にする16歳以上の親族で、年間の合計所得金額が48万円以下」という要件が定められていました。しかし、2023年1月からは、国外居住扶養親族のうち「30歳以上70歳未満の人」が、原則として扶養控除の適用範囲から除外されています。

ただし、下記のいずれかの要件を満たす場合は、30歳以上70歳未満の国外居住扶養親族でも、従来どおり扶養控除が適用されます。

適用範囲外でも扶養控除が適用される要件

  • 留学で国内に住所や居住場所がなくなった人
  • 障害者
  • 扶養控除の適用を受けようとする納税者から、生活費や教育費にあてるために年38万円以上の送金を受けている人

また適用を受ける際には、親族関係書類や送金関係書類の提示、または提出が必要となります。

退職手当を有する配偶者・扶養親族欄の追加

2023年(令和5年)の年末調整で提出する給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の「住民税に関する事項」に、退職手当等を有する配偶者・扶養親族を記載する欄が追加されました。

控除対象の配偶者や扶養親族の合計所得金額を計算するとき、所得税では退職所得を含みますが、住民税では含みません。そのため、退職金を受け取った配偶者や扶養親族がいる場合、所得税では控除を受けられなくても、住民税では控除が適用できるケースがあります。このような場合の適用漏れを防ぐために、記載欄が追加されました。

年末調整が必要な住宅ローン控除の変更点

2022年度(令和4年度)の税制改正によって、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)に関する見直しが行われました。年末調整で住宅ローン控除の手続きをするのは2年目からなので、改正内容が反映されるのは2023年(令和5年)分となります。

住宅ローン控除についての主な変更点は、下記のとおりです。

住宅ローン控除に関する主な変更点

  • 控除の適用期限が4年間(2022~2025年)延長
  • 控除の借入限度額は、住宅性能や居住開始年別に細かく設定
  • 控除率が1%から0.7%に引き下げ
  • 認定住宅などの控除期間が10年から13年に延長(中古住宅やリフォームの場合は10年のまま)
  • 住宅ローン控除を適用できる所得要件を合計所得金額3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げ
  • 2024年1月以降に建築確認を受ける新築住宅で住宅ローン控除を受ける場合は、省エネ基準の適合が必須条件になる
  • 新築住宅の床面積要件について、2023年以前に建築確認を受けたものは40平方メートル以上に緩和(合計所得金額1,000万円以下の場合のみ)

2022年度(令和4年度)の税制改正による変更点を反映し、住宅ローン控除が具体的にどのような内容になったのか、まとめたのが下記の表になります。

住宅ローン控除の概要[2022年度(令和4年度)税制改正後]
新築/既存等 住宅の環境性能等 借入限度額 控除期間
2022~2023年
入居
2024~2025年
入居
新築住宅
買取再販(※1)
長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 13年間(※2)
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅(※2) 3,000万円 0円(※2)
既存住宅(中古住宅) 長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円 10年間
その他の住宅 2,000万円
  • ※1宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋。
  • ※2省エネ基準を満たさない住宅。2024年以降に新築の建築確認を受けた場合、住宅ローン減税の対象外(2023年末までに新築の建築確認を受けた住宅に2024~2025年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年間)。

下記に、住宅ローン控除を受けるための主な要件を記載しますので、控除の概要と共に併せて確認してください。

住宅ローン控除を受けるための主な要件

  • 自らが居住するための住宅
  • 床面積が50平方メートル以上(※3)
  • 合計所得金額が2,000万円以下(※3)
  • 住宅ローンの借入期間が10年以上
  • 引き渡しまたは工事完了から6か月以内に入居
  • 1982年以降に建築または現行の耐震基準に適合 など

従業員の年末調整提出書類におけるポイント

これまで解説してきたように、年末調整にあたっては従業員からさまざまな書類を提出してもらう必要があります。従業員から書類の提出を受ける際には、下記のポイントを確認しておきましょう。

電子データで提出可能な書類

年末調整で必要な申告関係の書類は、従業員が自ら年末調整ソフトで手続きを完了し、電子データでの提出が可能なものがあります。また、保険料控除を受けるために必要な保険料控除証明書も、電子データで提出することができます。

従来の年末調整手続きでは、従業員が保険会社などから紙の控除証明書を受け取り、その内容をもとに紙の申告書を作成し、控除証明書の原本と共に企業に提出していました。しかし現在では、保険会社などから電子データで受け取った控除証明書を、データのまま企業に提出することが可能です。

電子データで提出可能な申告書・控除証明書などは、下記のとおりです。

電子データで提出可能な年末調整関係書類

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書
  • 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
  • 退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書
  • 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

電子データで提出可能な控除証明書

  • 生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 社会保険料控除証明書
  • 小規模企業共済等掛金払込証明書

同居家族の住所は「同上」「〃」を使用可能

年末調整の書類に同居する配偶者や親族の住所を記入する場合は、「同上」や「〃」を使用してかまいません。同じ住所を何度も書くのは手間がかかるので、記入例などで従業員に提示するといいでしょう。

年末調整の提出書類は押印不要

2021年度(令和3年度)の税制改正により、年末調整関係書類には、原則として押印が不要になりました。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書などの提出書類にも、従業員の押印は必要ありません。

年末調整に必要な書類の書き方を知って、スムースに手続きを進めよう

年末調整では、従業員からさまざまな書類を提出してもらう必要があります。申告書に不備があると、年末調整手続きが正しく行えないため、書類の書き方についてしっかり確認しておきましょう。また、変更点も把握したうえで、早めの準備を進めることが大切です。

年末調整にかかる業務を効率化するには、給与計算ソフトの導入がおすすめです。弥生の給与計算ソフト「弥生給与」や「弥生給与 Next」「やよいの給与計算」は、給与計算業務に必要な機能を網羅し、給与・賞与計算、社会保険料の計算、年末調整を確実にできるうえ、給与支払報告書の電子提出にも対応しています。

また、給与・賞与明細の発行までで十分という場合は、クラウドソフト「やよいの給与明細 Next」のような給与・賞与明細の作成・発行に特化したソフトもおすすめです。自社に合った給与計算ソフトを活用して、年末調整業務を効率良く進めましょう。

無料お役立ち資料【「弥生のクラウド給与サービス」がよくわかる資料】をダウンロードする

弥生のクラウド給与サービスなら給与計算・年末調整がスムーズに

弥生給与 Nextは、初心者でも給与・賞与計算から年末調整まで、"かんたん" に行えるクラウド給与ソフトです。

勤怠情報を入力すれば残業代や社会保険料などは自動計算で、給与明細書の作成はラクラク。
また作成した給与明細書は、Web配信で従業員のスマホ・PCに配付することができます。
さらに年末調整に必要な控除申告書の回収、法定調書の作成、源泉徴収票の従業員への配付もオンラインでスムーズです。

年末調整、何から始める?担当者必見!年末調整ガイドのダウンロードはこちら

年末調整を委託されている方は、「やよいの給与明細 Next」をお試しください。

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

中小企業を経営する上で代表的なお悩みを「魅せる会計事務所グループ」として自ら実践してきた経験と、約3,000社の指導実績で培ったノウハウでお手伝いさせて頂いております。
「日本で一番喜ばれる数の多い会計事務所グループになる」
この夢の実現に向けて、全力でご支援しております。
解決できない経営課題がありましたら、ぜひ私たちにお声掛けください。必ず力になります。

初心者事業のお悩み解決

日々の業務に役立つ弥生のオリジナルコンテンツや、事業を開始・継続するためのサポートツールを無料でお届けします。

  • お役立ち情報

    正しい基礎知識や法令改正の最新情報を専門家がわかりやすくご紹介します。

  • 無料のお役立ちツール

    会社設立や税理士紹介などを弥生が無料でサポートします。

  • 虎の巻

    個人事業主・法人の基本業務をまとめた、シンプルガイドです。

事業のお悩み解決はこちら