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【PickUp企業】中小企業の「働き方改革」を支える−株式会社コムデック①

2017.02.14

著者:弥報編集部

伊勢神宮でおなじみの三重県伊勢市。式年遷宮祭(社殿を作り替える20年に一度のお祭り)が行われた2013年には年間1,200万人、伊勢志摩サミットが開催された2016年にも870万人が訪れましたが、普段は人口13万人に満たない地方都市です。この地域で存在感を発揮しているのが、ITソリューションを提供する株式会社コムデック。優れた経営を実践する「三重のおもてなし経営企業選」にも選出された新進気鋭の企業です。

社員わずか15名という同社が、いかにして魅力的な会社づくりをしているのか。「三重のおもてなし経営企業選」の選定理由である「顧客にとって高付加価値で差別化された製品やサービス」「社員の意欲や能力の引き出し方」「地域・社会との関わり」になぞらえて、小さな会社でも参考にできる経営のヒントを、代表取締役の樋口雅寿氏に伺いました。

「電話が鳴らない…」崖っぷちからの復活劇

2016年の「三重のおもてなし経営企業選」に選出された株式会社コムデック。地域の模範となる経営を行う同社ですが、わずか3年前は、オフィスの電話が全く鳴らず「シーン……」と静まり返った状態だったそうです。

「2013年に神宮式年遷宮があり、伊勢は年間1,200万人の人が集まり好景気でした。ちょうどその頃WindowsXPのサポート終了や、消費税増税が控えており、パソコンの買い替えやシステム改修の需要も重なったので、弊社の業績は一気に伸びました。昔でいうバブルのような状態ですね。ところがパソコンを売り切ると、それまでひっきりなしに鳴っていたオフィスの電話がパタンと鳴らなくなり……。しかも翌年には4名の新卒入社も決まっていたので、本当に途方に暮れました」と樋口社長は当時を振り返ります。

株式会社コムデック代表取締役 樋口雅寿氏。SIerにてシステム開発、ネットワーク構築を経験後、1997年より「株式会社コムデック」に参画

もともと同社は、システム開発を中心としつつ、パソコン、複合機などの事務機器の販売を行っていましたが、樋口社長は比重が小さく今後の成長が見込めない複合機ビジネスを止める決断を下しました。

「式年遷宮のバブルが終わった頃、MicrosoftのOffice365をはじめとするクラウドサービスが出てきました。なにぶん新しいサービスなので売れる確証はなかったのですが、エース級の若手を投入してクラウド事業を立ち上げました。複合機ビジネスをやめたのはそのため。尻つぼみになるのが見えている事業にリソースを突っ込むわけにはいけないですから。それに私は浮き沈みのあるフロー型のビジネスから、売上の見通しを立てやすいストック型のビジネスへ移行させたいという思いもありました。クラウド事業なら毎月、運用費も入るので、月々の売上も安定するだろうと考えたのです」

当時クラウドサービスに目をつけた企業は三重県内には少なく、競争相手はほとんどいなかったといいます。国を挙げて生産性向上を目指す「働き方改革」の大きな流れにも乗り、わずか2年ほどで、県内最多のOffice365導入実績を誇る企業へ成長。三重では「クラウドといえばコムデック」と呼ばれるまでになりました。

経営者の成功体験は、今の時代は通用しない

クラウドサービスの販売実績が急激に伸びた背景には、人口減少、高齢化、格差拡大を前提とした「下山経営」という言葉で表現されるような、市場が縮小する日本の状況も関係しているといいます。

「人口が増えて日本が上り調子のときは、普通に頑張れば右肩上がりの成長を続けられました。でも今は人口減少で採用が難しくなり、あらゆる市場が縮小しています。下山経営時代には、過去の成功体験は役に立たないわけです。さらにはコンプライアンスやワークライフバランスといった言葉が盛んに叫ばれるようになり、長時間労働が許されない社会になりつつあります」

国が進める「働き方改革」では、長時間労働を見直し、生産性を向上させることを目指しています。また、わが国の課題である女性活躍推進のカギになるのは、家事育児との両立を可能にする労働環境と、男性の育児参加です。

「長時間労働をやめようとか、家族との時間を大切にするためにノー残業デーをつくりましょうとなったとき、その時間をどうやってひねり出すのか。収益性を上げながらそれを実現しなければならないのですから、今の経営者は大変ですよ。クラウドなど新しいサービスを活用して働き方そのものを変えなければ実現できません。そこで私たちの出番というわけです」

クラウドサービスの販売、導入支援、トレーニングをはじめとした業務支援コンサルティングへの事業転換が、働き方の多様性が求められる今の時代にもマッチし、コムデックの飛躍につながったのです。

クライアントの期待を超えるための思考法

業務効率を上げるための提案にクラウドサービスが絡むことが多いのは事実ですが、コムデックは「クラウドサービス屋さん」ではないといいます。目指すのはクライアントの「働き方改革」を実現させること。

「時代に合わない業務システムの見直しや、ネットワーク構築、POSレジ導入による店舗オペレーション改善など、導入事例はさまざまです。何より、導入したシステムを使って『働き方』が変わることが大事なのです」

システムを導入する際には、クライアントの社員の背後に張りつき、その作業内容について事細かにメモを取るなど業務に深く入り込み、そのうえで生産性を上げるための仕組みを考えているそうです。だからこそ、クライアントの期待を超えるシステムを提供できていると樋口社長は話します。

「お客さまは案外、自らのニーズ(本質的に解決したいこと)を明確に整理できていないままに、“こんなシステムを入れたい”と要望をされがちです。しかしシステムやツールというのは、あくまで課題解決の手段に過ぎません。まずはお客さまが真に求めている“生産性を上げたい”というニーズを徹底的に理解し、そのために最適なシステムを考えてご提供すること。そうすれば、お客さまの期待は必ず超えられます。そこからさらに、未来の期待値までを超えることを私たちは目指しています。例えば、お客さまの要望どおりにするのではなく、ITのプロとしてもう一歩踏み込み、新しいテクノロジーを使って5年後も使えるシステムをつくるのです」


オフィスの電話が鳴らず途方に暮れるどん底のときに、成功の確証はないけれどもクラウドサービスの展開にチャレンジしたコムデック。手さぐりでビジネスを展開しながら学びを深め、ただ単にクラウドツールを売るのではなく、クライアントのニーズを満たすソリューションを提供し、クライアントの期待を超えていく企業に成長しました。これはいわば、成功するビジネスの原理・原則ともいえます。働き方改革を進めるコムデックだけではなく、すべての地方中小企業にも当てはまるのではないでしょうか。

次回はコムデックの具体的な社内改革への取り組みに踏み込んでいきます。(第2回へ続く)

Profile:株式会社コムデック

日本人の心のふるさと三重県伊勢市に軸足を置き全国の顧客に業務システム開発、IT導入支援を行う。「Evernote」「Office365」「Dropbox」などのクラウドサービス活用し、業務効率を圧倒的に高める働き方改革を推し進めている。「お客さまの期待値」を基準とし、「99%では不満足、100%で当たり前、101%の提案を行う」がモットー。

この記事の著者

弥報編集部

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