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IFRS(国際会計基準)とは?導入方法やメリットなどを解説

2024/02/19更新

この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

企業の経営者や会計業務担当者の中には、「IFRS」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。また、海外と取引をしていたり、海外展開を視野に入れていたりする企業などでは、IFRSの導入を検討することもあるのではないでしょうか。

ビジネスにおけるグローバル化が加速する近年、日本でもIFRSを導入する企業が少しずつ増えてきています。中小企業や海外展開を予定していない企業も、IFRSについて知っておいた方が良いでしょう。

ここでは、IFRSの概要や日本の会計基準との違い、導入方法の他、IFRSを導入するメリット・デメリットなどについて解説します。

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IFRSとは、現在グローバルスタンダードとされている会計基準の1つ

IFRS(International Financial Reporting Standards)とは、国際財務報告基準のことで、現在ではグローバルスタンダードとされている会計基準です。

会計基準とは、企業が決算書を作成したり理解したりするために必要な基準のことです。会計基準は国ごとに異なり、国ごとで決算書の比較が容易でなかったため、世界共通の会計基準としてIFRSが作られました。

現在、EUでは、上場企業に対してIFRSの適用を義務付けています。日本でも、2010年3月以降、上場企業の連結財務諸表についてIFRSの任意適用が認められるようになりました。ただ、国内でIFRSを適用しているのは上場企業が中心です。IFRSが中小企業の会計処理や決算に直接的に関係することはほとんどないものの、IFRS適用企業からの玉突きでビジネスにも影響する可能性があるので、大まかな内容だけでも把握しておきましょう。

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IFRSと日本の会計基準との違い

IFRSと日本の会計基準の大きな違いは、「原則主義か細則主義か」という点です。

IFRSは原則主義を採用しており、基本的な会計原則を示すにとどめ、細かい数値基準や判断基準は設けていません。それに対して日本は細則主義で、細かく決められた数値基準や判断基準に基づいて決算が行われます。

また、IFRSと日本の会計基準では、利益の計算方法も異なります。IFRSは、資産と負債の増減により利益を計算する「資産・負債アプローチ」である一方で、日本の会計基準は、収益から費用を差し引いて利益を計算する「収益・費用アプローチ」です。

IFRSと日本の会計基準との具体的な違いは、下記のとおりです。

IFRSと日本の会計基準との違い
項目 IFRS 日本基準
売上計上基準 契約の形式や金額よりも、物品やサービスの顧客への提供実態を重視し、実態を反映するように売上計上

契約に基づいた実現主義。請負契約等については進行基準

  • 2021年からIFRSとほぼ同様の基準がスタート
非上場株式の貸借対照表計上額 何らかの方法で時価評価し貸借対照表に計上 原則的には、取得原価が計上額になる。発行会社の財政悪化により実質価額が50%程度以上低下した場合は減損
M&A時に受け入れた無形資産の評価(買収側) 法律上の権利以外でも、顧客リスト、無特許の技術、受注残、データベース、ライセンス契約、フランチャイズ契約等、日本基準よりも幅広い無形資産を時価評価してオンバランス 特許権、商標権といった法律上の権利等、切り離して売却可能な無形資産を受け入れた場合は時価評価してオンバランス
のれん(純資産評価よりも高額でM&Aをした場合の買収差額) 償却しない(毎期1回は減損テスト) 20年以内で定額償却
固定資産の耐用年数 企業が資産を使用すると予定する期間 実務的には法人税法の耐用年数で対応する
研究開発費 研究費はすべて発生時に処理。開発費は一定の要件を満たす場合は資産計上 すべて発生時に費用処理

IFRSの導入手順

現在の日本において、決算の際にIFRSを適用するかどうかは、企業の任意です。IFRSを導入する場合は、下記のような手順で進めます。

IFRSの導入手順 Step1:IFRSの導入に必要な準備を行う Step2:IFRSを適用して決算書を試作する Step3:IFRSを適用する

1 IFRSの導入に必要な準備を行う

まずは、いつからIFRSの適用を開始するかを決め、必要な準備を行いましょう。IFRSを導入すると、それまでの会計基準が大きく変わるため、システムの改修・変更や、人材の確保・育成、業務プロセスの見直しなどが必要になります。それらの課題を洗い出したうえで、IFRSの導入に向けた計画書を作成します。

2 IFRSを適用して決算書を試作する

作成した計画書に基づき、IFRSを適用して決算書(財務諸表)を試作しましょう。同時に、IFRS導入後の会計方針も文書化します。子会社や関連会社がある場合は、連結会計業務において収集する決算情報などの見直しについても検討が必要です。

3 IFRSを運用する

無事にIFRSが導入できたら、実際にIFRSによる会計処理を開始しましょう。運用後は問題点がないかどうかをこまめに確認し、必要に応じて修正や改善を行うことが大切です。

IFRSを導入するメリット

IFRSを導入すると、主に下記のようなメリットがあります。特に、海外に拠点を持つ企業や、海外との取引が多い企業などは、IFRSの導入メリットを感じやすいかもしれません。

海外拠点との財務情報を統合できる

海外に子会社や関連会社がある企業にとっては、海外拠点の財務情報を統合しやすくなるというメリットがあります。

日本の本社が日本の会計基準を使用し、海外子会社がIFRSを使用していると、連結財務諸表を作成するのは大変です。会計基準が違うと、海外子会社の業績を把握したり比較したりするのにも手間がかかるはずです。

IFRSを導入すれば、お互いが同じ会計基準を利用することになるため、連結決算における業務効率が上がります。複数の国に拠点があるような場合も、拠点間のコミュニケーションがとりやすくなるでしょう。

海外での資金調達を円滑化できる

IFRSの導入によって、海外での資金調達がスムースになるというメリットもあります。国外の投資家にとっては、日本の会計基準によって作成された財務諸表では、企業の財務状況を正しく確認しにくいものです。

また、海外投資家に出資を仰ぐ場合、日本の会計基準とIFRSの違いを説明する必要があります。説明には手間や時間がかかるうえ、両者の差異をうまく理解してもらえないかもしれません。しかし、IFRSに基づいて財務諸表を作成すれば、海外投資家も、その財務諸表を見るだけで企業の経営状態や財務状況を把握できます。日本の企業であっても海外から投資を受けやすくなり、資金調達の選択肢が広がります。

経営管理への寄与ができる

海外のグループ会社を含めた経営管理に役立つ点も、IFRSの導入メリットの1つです。特に、海外のグループ会社の数が多い場合、それぞれが各国の会計基準を採用していると、会社間の指標がバラバラになってしまいます。しかし、日本の会社を含めてすべてのグループ会社がIFRSを導入すれば、グループ全体を管理しやすくなり、経営判断を行ううえでも役立ちます。

比較可能性を向上できる

IFRSの導入は、比較可能性の向上にもつながります。比較可能性とは、同一時点の会計情報を複数の企業間でスムースに比較できるようにすることです。比較可能性を確保するためには、比較対象となる企業同士が同じ会計基準を適用している必要があります。

例えば、海外の競合他社と自社の経営状況を比較しようとしたとき、それぞれが採用している会計基準が違っていては、正しく比較することができません。そのような場合でも、自社の会計基準をIFRSに変更すると、海外企業との比較を行いやすくなります。

業績を適切に反映できる

IFRSには、日本の会計基準に比べて、業績を適切に反映しやすいというメリットもあります。財務諸表のうち、損益計算書の重要度が高い日本の会計基準に対して、IFRSでは貸借対照表が重視されます。そのため、IFRSの方が長期的な企業の価値を測りやすく、日本の会計基準よりも実態に即した財務状況を把握できるようになります。

IFRSを導入するデメリット

IFRSの導入には、メリットも多い一方で、いくつかのデメリットもあります。ここでは、IFRSの導入に伴う3つのデメリットについて説明します。

事務負担が増加する

IFRSを導入し、従来の会計基準を変更すると、事務負担が大幅に増加します。原則主義を採用するIFRSは、日本の会計基準のような細かい数値基準や判断基準が設けられていません。そのため、財務諸表を作成する際には判断の理由を注記する必要があり、事務負担が大きくなると考えられます。新しいシステムに慣れるまでには手間もかかるでしょう。事務処理の負担増加に伴い、管理体制やマニュアルの整備なども必要になります。

さらに、IFRSを適用した場合、IFRSに基づく財務諸表と日本の会計基準による財務諸表を、それぞれ作成しなければいけません。IFRSによる財務諸表は英語で作成するため、高度な英語力と国際会計の知識を持つ人材が必要です。

コストが増加する

IFRSの導入にはコストがかかるというデメリットもあります。まず、社内のシステムをIFRSに対応したものに改修または変更しなければなりません。導入準備や適切な運用のために、外部の専門家にサポートを依頼することもあるでしょう。

さらに、業務にあたる社員の教育にもコストがかかります。そのため、IFRSの導入を検討する際には、多くのコストと時間がかかることを考慮しておく必要があります。

適用のハードルが高い

適用のハードルが高いことも、IFRSのデメリットの1つです。例えば、IFRSはすべて英語で記載されているうえ、定められている基準の内容も頻繁に更新されます。そのため、社内にIFRSに詳しい担当者がいなければ、外部のアドバイザーや翻訳者に依頼することになります。

また、IFRSでは売上の計上基準が検収基準のみとなり、例えば商品を出荷した時点で引き渡したとみなす出荷基準は認められません。企業によっては、業務体制全体の変更が必要になったり、従業員に対する研修を行ったりしなければならず、導入ハードルがさらに高くなってしまうでしょう。

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IFRS(国際会計基準)の特徴や日本の会計基準との違いを知っておこう

IFRS(国際会計基準)は、国際的に通用する会計基準です。EUで上場企業にIFRSの適用が義務付けられたことから、各国でIFRSを導入する企業が増えています。日本では、IFRSを採用する企業はまだそれほど多くはありませんが、今後、上場企業を中心に増えていくでしょう。

海外拠点を持つ企業や、海外展開を目指している企業、海外での資金調達を希望する企業などにとっては、IFRSの導入はメリットがあるといえます。一方で、IFRSを適用すると、事務負担やコストが増大する、IFRSと日本の会計基準の財務諸表をそれぞれ作成しなければならないなどのデメリットも生じます。

IFRS導入を検討する際には、メリットとデメリットを総合的に判断し、そのうえで自社にとってメリットが大きいかどうかをよく検討することが大切です。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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