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小さな会社が取り組むべき顧客管理のシステム化とは?~はじめてのCRM入門~

2018.08.02

あなたの会社では、顧客情報が単なる「顧客の住所録」になってしまっていませんか? 顧客情報はうまく活用すれば売り上げアップに直結する宝物です。では、顧客データを活用して売り上げに繋げるにはどうすればよいのでしょうか。今回は、「顧客管理」を売り上げアップにつなげるための方法、施策を紹介します。

顧客管理と顧客関係管理(CRM)は大きく異なる!

会社規模の大小に関係なく、顧客データベースはお持ちのことでしょう。PCで、あるいは紙でお持ちの会社もあるかもしれません。しかし、最初に作った「顧客データベース」に、そのまま顧客情報の追加を繰り返し、住所録のように顧客数だけが増加の一歩をたどる、という事態になってしまっていませんか?

顧客管理と顧客関係管理は、名称こそ同じように見えますが、内容は大きく異なります。顧客管理が対象とするデータは、静的データとも言われ、日々変更が加えられることがほとんどないデータが管理の対象になります。住所録のようなものはこれにあたります。

これに対して、顧客関係管理は、ダイナミックに変動するデータを含みます。顧客関係管理はCRM(Customer Relationship Management)と呼ばれますが、顧客管理が対象としていた、氏名、性別、年齢、住所といった静的データに加え、商品やサービスの購入履歴、購入商品、金額、購入回数などの動的なデータを顧客とひも付けて管理します。最近では、一人ひとりの行動履歴に合わせて、よりカスタマイズされたサービスを提供できるCRMの重要性が高まっています。

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なぜCRMの活用が、売り上げアップに繋がるのか?

顧客との良好な関係を保持するために活用したいのが「顧客管理システム(CRM)」です。

たとえば、美容院では、カット、パーマ、カラーリングのように多くのサービスメニューが用意されていますが、顧客Aさんに関する情報がきちんと管理されていないと、カットの案内メールをいつ出せばよいのか判断できません。一方、来店のたびに提供したサービス内容を日付情報と一緒にCRMで管理しておけば、Aさんへ次回の来店案内を促すタイミングも簡単に見つけ出すことができます。

カットのタイミングは人によってまちまち。にもかかわらず、毎月月末に一斉にカットの案内メールが機械的に送られていたとしたらどうでしょうか。ある人にとっては、案内が遅すぎる、またある人にとっては案内が早すぎるといったことになるでしょう。結果としてお客さまは「私に対して」ではなく、「全員に無差別に」メールを送信していると感じるかもしれません。これではCRMの最大目的である、「顧客との良好な関係を保持する」ことが難しくなるだけでなく、機会損失につながってしまう可能性もあります。

顧客の来店頻度は事業の売り上げに直結します。ビジネスチャンスを逃さないためにも、顧客との良好な関係を構築することが必要です。そこで重要なポイントは、その顧客にとって最適なタイミングでサービスを案内できるか否かという点にあり、そのためにはシステムの活用が有効と言えます。ビジネス活動を円滑に進めるためにはぜひCRM導入をおすすめします。

機能拡張が進むCRM

CRMが登場したころは大企業向けのシステムがほとんどでしたが、現在では低価格のシステムも増え、中~小規模の会社、個人事業でも利用できるようになりました。

また、最近のCRMは、顧客基本情報+売上情報+分析機能、さらには、マーケティング機能というように、さまざまな機能を持つものが増加しています。顧客の購買履歴や嗜好を分析して、キャンペーンを展開したり、提案する商品を決定したりすることが可能なシステムも存在します。各メーカーからさまざまなCRMシステムが提供されていますが、代表的な機能はこのようなものです。

  • 商談記録や活動履歴を記録して管理する、営業支援システム(SFA)に似た機能
  • 購入回数や金額だけではなく、購入に至るまでの顧客行動を把握し、分析する機能
  • 顧客一人ひとりの購入履歴や興味関心に応じたコミュニケーションを可能とするMA(マーケティングオートメーション)の機能
  • 一定の条件から優良顧客を抽出して、適切なタイミングでメール配信を行う機能
  • 電話やメール、SNSなど連絡の記録を一元管理でき、社内のコミュニケーションにも使用できる機能

売り上げアップだけじゃない、CRM導入のメリット

顧客との関係強化や顧客満足度向上を主目的とするCRMは、その機能拡張により業務効率化や利益の最大化に貢献するシステムになりました。しかし、直接的な機能以外にも大きな導入メリットがもう一つあるのです。それは「業務の見える化」です。 

中小企業では一人の担当者が長年同じ業務を担当しているというケースも多く、その担当者にしか状況がわからないといった「業務の属人化・ブラックボックス化」が大きな課題にもなっています。仮に、その担当者が入院したという事態が発生したらどうでしょう。その人が関係する業務や取引をスムーズに処理することが不可能になってしまいます。しかし、CRMを利用することで、取引相手との連絡履歴や問い合わせ内容、購買履歴などが誰にも見えるようになり、異なる担当者でも業務を引き継ぐことができます。さらに、業務の見える化は不正行為の抑制にも役立ちます。

また、新人教育や研修にそれほどコストをかけられないという状況の企業にとっては、CRMの履歴から見えるケーススタディや全体のフローは、大変有用な教材となります。どのようなアプローチが成功につながったのか、反対に失敗の原因になったのかを関係者全体で共有できる点も利点です。

CRMは営業や販売のためのツール、とつい捉えられがちですが、経営層や経理業務にも大きなメリットをもたらします。日ごろ会社全体の金銭の流れを管理する部門にとって、CRMを活用することは、過去の売上実績はもとより、先の売り上げの予定や請求、発注をリアルタイムに確認でき、中長期的な利益の確度の把握など、企業経営の生命線とも言える大変重要な情報が得られることになるのです。

人的リソースに限りがある小さな会社こそ導入効果が見込める

今回は、一般的に同じものとみられがちな顧客管理と顧客管理システムの違いについて、そして、CRMを導入することで中小企業にもたらされる多くの導入メリットについて説明しました。

一人ひとりの顧客とより良い関係を築いていくことは、簡単なことではありません。昔からの顧客も新しい顧客も同じように対応したいと思っても、その数が増えてきてしまったら人力では限界があるでしょう。CRMを導入することで、そうした負担が軽減もしくは飛躍的に改善されます。人的リソースに限りがある小さな会社であれば、その導入効果はさらに見込めるでしょう。

次回では、CRM活用のポイントとツール選定の考え方を詳しく解説します。


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この記事の著者

熊谷 直樹(くまがい なおき)

ITコンサルタント&ライター。一般社団法人 日本中小企業情報化支援協議会ビジネスプロデューサー。出版社で雑誌、書籍編集を担当。独立し、ソフトウェア・マニュアル製作のかたわら、コンピュータ関係雑誌創刊の外部スタッフとして企画、編集を担当。SFA、CRM、ドキュメント管理、データ分析関連の記事、書籍を執筆。

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