高齢化社会の日本、人口は減少を続けながらも、高齢者は右肩上がりに増え続けています。それに伴って要介護者数も年々増え続けており、厚生労働省の「介護保険事業状況報告 月報暫定版」によれば、2017年11月時点での要介護者数は641万9,000人もいるとされています。
たとえ今は介護とは無縁で働き盛りの方も、近いうちに家族を介護しなければならない状況になる可能性は十分に考えられます。その場合、介護のために離職せざるを得なくなる、もしくは仕事に支障が出てしまう懸念もあります。では、親が高齢者に差し掛かる世代の方たちは、今からどのような備えをしておけばよいのでしょうか。
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将来の介護に「不安を抱いている」人はなんと84%以上
オリックス・リビング株式会社(以下オリックス・リビング)の調査によると、家族を介護する必要が生じた場合、仕事と介護の両立について「できると思う」と答えた人は、わずか8.6%でした。また、家族の介護について、「不安を感じる」「やや不安を感じる」と答えた人は84.3%に上り、特に男性では「費用面」、女性では「精神的な負担」が最も不安だと回答しています。

引用:第10回「介護に関する意識調査」(オリックス・リビング株式会社)
高齢化社会に突入した日本において、介護問題は人ごとではありません。介護保険法の適用により、要介護者もしくは要支援者として認定された方は、1年で20万~30万人ずつ増えています。それに伴い、1年間に約10万人の介護離職者も生まれています。親の介護をしつつ働くことの難しさの現れといえるでしょう。
介護生活は突然訪れるかもしれません。いざ介護生活になったときに慌てないよう今から知識と心構えを学んでおきましょう。
「今」のうちに知っておきたい介護施設の種類
介護が必要になった場合、大きく分けて「在宅介護」と、施設に入居する「施設介護」の2つの方法があります。
前者は、自宅で家族が看つつ、訪問診療や訪問介護サービス、デイケアサービスなどを利用して、家族の負担を軽減することで仕事との両立を図ることになります。ただし、要介護レベルが低い場合であれば在宅介護も非常に有効な方法ですが、要介護レベルが高いと家族の負担はかなり大きくなります。「自分が看てあげないと」という気持ちはとても重要ですが、介護疲れで共倒れになっては元も子もありません。
一方、施設に入居する「施設介護」の場合は、以下に挙げた介護施設の種類によって、サービスや料金、入居条件が大きく異なります。いずれにしても、介護する負担はかなり軽減され、仕事との両立も容易になります。
- 特別養護老人ホーム
65歳以上でかつ自立した生活が困難な要介護レベルの高い人を介護することを目的とする、公的機関が運営する施設。入居一時金もなく、費用が安いことから、なかなか入居できない場合が多いのが現状です。
- 介護老人保健施設
要介護高齢者にリハビリなどを行って、在宅復帰を目指す公的施設です。65歳以上の「要介護1」以上が条件で、医療ケアは充実していますが、入居3カ月後に継続審査があり、リハビリが必要ないと判断されると短期間で在宅復帰することになります。このため継続的に介護を受ける施設へ入居するための一時的な利用者も多くいるようです。費用も安価で入居もしやすくなっています。
- 介護療養型医療施設
医療の必要な要介護高齢者の長期療養施設です。こちらも公的機関が運営していますが、今後、運用などを見直した介護老人保健施設へ統合される予定です。
- 有料老人ホーム
民間の事業者が運営している施設で、要介護者が入居できる介護付きの施設のほか、食事などの必要最低限な生活支援を受けられるお元気な人向けの住宅型の施設もあります。一時金や月額費用はそれなりにかかりますが、入居者同士が楽しめるイベントが多く開催されるなど、民間企業ならではの手厚いサービスが特徴です。
- 認知症高齢者グループホーム
認知症の高齢者が共同生活するための住居で、日常生活の世話や機能訓練を受けられます。入所には審査が必要ですが、原則的には医療によるケアは行われていませんので、疾患により治療を優先される人は入所ができない場合もあります。一般的に費用は有料老人ホームよりは安く済みます。
それぞれの施設の特徴を鑑みて、介護のレベルや状況によってどの施設を選ぶのがベストなのかは、そのときにならないと判断がつかない部分もありますが、概要だけは頭に入れておきましょう。
介護前から入居できる有料老人ホームが人気
最近、注目を集めているのが有料老人ホームです。2000年の介護保険制度の創設により、民間事業者が運営しやすい環境が整ったことで、施設数と入居者数が右肩上がりで伸びています。
今回お話を伺ったオリックス・リビングが運営する施設も、有料老人ホームにあたります。外観はマンションのようですが、室内はホテルを思わせるようなつくりや調度品が備わっていて、優雅な生活ができる空間になっています。有料老人ホームは特別養護老人ホームと違い、要介護のレベルが低くても入居可能で、入居待ちということもほとんどなく、お元気な人が入居できるタイプもあるのが特徴です。居住性だけでなく、住みたいと思わせるサービスの充実ぶりも人気の秘訣でしょう。

オリックス・リビング運営、グッドタイム リビング センター南のエントランスでのピアノの生演奏。入居者の憩いのスペースが充実している
ここからは、オリックス・リビングが運営するグッドタイム リビング センター南のジェネラルマネージャー・竹上達郎さんに、有料老人ホームに入居される方々の実態と、これから介護を検討しなければならない世代の方に必要とされる心構えについてご意見を伺います。
お話を伺った方:竹上達郎(たけがみ たつろう)氏
グッドタイム リビング センター南 ジェネラルマネージャー。
一番気になる、有料老人ホームのお金のはなし
有料老人ホームでは多くの場合、毎月の費用として日々の生活と介護保険の自己負担分などがかかるほか、入居時に一時金を支払う必要があります。一時金の金額は施設により異なりますが数百万円から1,500万円ほどが一般的であり、ある程度の蓄えが必要です。そのため親の住居や土地を売って資金に充当するのも1つの手だといいます。

要介護者向けの部屋。バリアフリーでゆったりしたつくりになっている

食事は部屋ではなくレストランに集まって食べる形式。入居者だけでなくその家族も一緒に食事ができる
実際、介護が必要になる前に入居する方も多いそうです。もし介護が必要になった場合でも、介護付きの部屋に移動することができるため、いざというときのご家族の介護の負担や心配も軽減されます。
介護が必要になってからでは遅い?「今」のうちに知っておきたい心構え

お元気な方向けの住宅型もバリアフリー構造(左)。万が一のときの呼び出しブザーや、動きがないと通知される人感センサー(右)など、高齢者に安心のサービスが整っている
介護が必要になるかもしれない近い将来を想定してご両親に方針を相談することは、なかなか切り出しにくいものですが、重要なことなので元気なうちに話し合った方がよさそうです。また施設に入るのであれば、どこの施設へ入居するかまで決めたいところです。どのようにして良い施設かどうかを見分ければよいのでしょうか?

元気なうちから入居することで、入居者との交流やさまざまなアクティビティによって、生きがいにつながっていく
歳をとると家にこもりがちになり、人との接触が少なくなってしまいます。そんなとき、同じような年齢の仲間が身近にいて、話をしたりアクティビティを楽しんだりすれば、充実した余生を過ごせるでしょう。介護が必要になってからあたふたするのではなく、ご両親に余裕を持って施設に入居してもらうのも、悪くない選択肢ですね。
厚生労働省のウェブサイトでは「仕事と介護の両立」についての施策が紹介されており、その中に「親が元気なうちに把握しておくべきことチェックリスト」が公開されています。

「親の老後の生き方の希望は?」「親の生活環境や経済状況は?」などの質問項目から、今から把握しておくべきことをチェックリスト形式で確認できる
今がまさに働き盛りで、将来の介護のことを考える余裕なんてないという方も少なくはないでしょう。しかし、上記のチェックリストでは「まず親が65歳、または自分が40歳になったら親と話し合う」ことを推奨しています。こちらのチェック結果をもとに、今のうちから、仕事と介護を両立させるためにすべきことを把握し、介護するための資金管理を計画的に進めていくことが、将来慌てないための最良の方法なのではないでしょうか。
【取材協力先】
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