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20代で町工場を継いだ若手後継者が目指す「人生をよくする会社」とは【株式会社タシロ】

株式会社タシロは、神奈川県にある小さな町工場。レーザー加工やマシニングセンタ・溶接などの複合加工を得意とし、幅広い事業分野でサービスを展開しています。取締役の田城 功揮さんが家業を継いだきっかけは、報道で目にした外国人労働者問題を何とかしたいという思いから。家業にも外国人労働者がおり、その問題は他人事ではなかったと当時のことを語っています。

「自分たちの人生をよくするために、お客さまにとって便利な会社でいよう」。田城さんは従業員にそう呼びかけ、組織体制の整備に新制度の導入、売上とやりがいの両立、自社製品の開発などさまざまな変革に乗り出しました。

働きやすさにこだわった田城さんの経営を担うスタイルは、これから中小企業の家業を継ぐ方の指針となるはずです。


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田城 功揮(株式会社タシロ取締役/協同組合FURUSATO代表理事)

1992年神奈川県生まれ。新卒で株式会社パソナグループ(旧パソナキャリアカンパニー)に入社。同時期にNPO法人NICEの理事を務める。2019年1月家業の株式会社タシロに入社、取締役就任。同年4月に協同組合FURUSATOを立ち上げ、代表理事に就任。タシロでは新規事業として自社製品の製造販売を行う。3WAYピザ窯でクラウドファンディングに挑戦し目標金額の300%を達成。同製品は第93回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2022「LIFE×DESIGNアワード」グランプリ受賞


最短24時間で納品!厚板切断に強い「製造業界のコンビニ」

――まず、御社の事業や強みについてお聞かせください。

精密板金加工をメインに、医療・食品をはじめとする幅広い分野の部品やユニットを製造しています。

強みは3つあって、1つ目はスピードです。最短で見積は即日、納品は24時間以内に対応しており、現在は依頼の大半を1週間以内に納品しています。これは、他社の2倍から3倍のスピードと言えるのではないでしょうか。

2つ目は、複合加工による社内一貫生産のため、細かな要望にお応えできる点です。

3つ目は、35mmほどの厚板切断が可能であること。当時(2019年)世界最高出力だった、株式会社アマダの9kwファイバーレーザー加工機も、いち早く導入しています。

――ホームページに記載されている「製造業界のコンビニ」というキャッチフレーズが印象的です。

これは、父が「お客さまから見てコンビニのように便利であれば、会社も存続できる」という意味で言い始めました。私が入社する際に改めてこの言葉について考え「働く自分たちの人生をよくするために、お客さまにとって便利な会社でいよう」と再定義し、従業員に伝えています。

株式会社タシロの原点は、祖父が立ち上げた自動車整備工場です。父の代で事業転換し、経営と現場の業務を切り分けていたので、職業訓練校などには通わず2019年に入社しました。父が代表取締役社長、私は取締役として今も一緒に働いています。

事業承継のきっかけは、外国人労働者問題への危機感

――家業に入ったきっかけは何ですか?

父も祖父も経営者ですから、社長という仕事が身近でもともと起業志向でした。ただ、当初は家業を継ぐつもりはなかったんです。その気持ちが変わったきっかけが、外国人労働者に関するさまざまな問題の表面化でした。

2016年から2年間、合宿型ボランティアのNGOで理事を務めた経験があります。そこでは海外のメンバーと接する機会が多く、家業でも外国人が働いていたので、技能実習生などの労働・生活環境を何とかしなければという思いに至りました。技能実習生の監理は、事業協同組合という法人格で行うのが一般的です。事業協同組合をスムーズに立ち上げるために、家業に入って取締役になり、発起人に名を連ねました。

ちなみに海外の人材を人件費が安いと考えて雇用すると、必ず失敗すると考えています。役所での手続きや病院への付き添いなど、トータルのコストは日本人以上にかかります。また、先進国で最も賃金が低いのは日本です。選ばれない国になって、世界の競争から取り残されることも危惧しています。


――事業協同組合FURUSATOでは、どのような活動をしているのでしょうか。

技能実習生の監理をメインに、組合員の企業との合同研修や展示会への共同出展を行っています。どの会社も中小企業で、新入社員を採用しても数名なんです。そのため、各自で研修するより、まとめてやるほうが合理的です。それぞれの会社が持つスキルをシェアすることもできますし、私も前職の経験を活かしてビジネスマナー研修や採用アドバイスを実施しています。


――前職は人材紹介会社にお勤めだったそうですね。

新卒で株式会社パソナグループに入社しました。数年勤めたら独立する社員も多く、採用面接でも「いつかは経営者に」と社長に伝えたほどです。残っていれば7年目になりますが、同期の多くが独立しています。

パソナグループでは、労働基準法や採用に関する知識が身につきました。特に中小企業は労務の対応が遅れていたり、人手不足が課題となっていたりするため、当時得たノウハウや経験が今とても役立っていると感じます。

「3WAYピザ窯」の開発で社内がひとつに!自社製品を持つメリットとは

――家業に入ってから新しく始めたことはありますか。

3つあります。1つ目は人事・労務や組織体制の整備です。半日有休や時短勤務といった制度を取り入れ、就業規則の変更・周知を行いました。さらに技術者集団を目指して資格手当・目標制度を導入し、リーダー職を増やしています。外国籍の従業員向けにマニュアルも翻訳しました。

2つ目は「違和感報告シート」の導入です。機械の異音・異臭、工具の不良といった異変を報告すると、1回あたり100円が賞与と共に支給されます。壊れた後で修繕するより、早めに対応したほうがコストカットにつながりますから。

3つ目に広報・ブランディングに力を入れました。ホームぺージに採用向けのプロモーション動画を載せたり、SNSは1週間に1回以上更新しています。IT関連では、社内でもスケジュール共有アプリやLINEグループによる情報伝達を始めました。ブランディングで心がけているのは、狙える賞はどんどん取っていこうと。これまでできていなかった、自社製品の開発にも挑戦しています。


――「かながわ中小企業モデル工場」に指定されたり「神奈川がんばる企業エース」「LIFE×DESIGNアワード」など、さまざまな賞を受賞されたりしていますね。

私が入社して以来、毎年複数の賞をいただいています。賞を取ると、取引先から「新聞で見たよ」と連絡が来たり、社外の反響が大きいですね。

一方で、従業員のモチベーションにつながりやすいのは、自社製品の開発だと考えています。ショップレビューでお客さまの反応を目にすることで、やりがいを感じたという意見が集まりました。今まで、自分たちが製作している部品などが何に使われているか、よくわかっていない従業員もいたと思うんです。しかし完成品を作り上げることで、より愛着や誇りが持てますし、部品と異なり展示会に参加しやすいのもメリットです。

そして、経営者は売上や利益を増やすのが最も重要な役目だと思っています。そのためにも、自社製品の開発が不可欠でした。

――自社製品「3WAYピザ窯」は、とても魅力的なアイテムですね。

A4サイズ・厚さ10mmに収納できる、コンパクトなピザ窯です。ピザ窯のほか、燻製器・焚火台としても使用できます。製作にあたっては30回以上の試作を重ね、熱変形に強くコンパクトな商品に仕上がりました。従来、コンパクトな商品は熱により曲がりやすいものが多かったんですが、3WAYピザ窯は半永久的に使えると自負しています。

良いものだとしても、小さな会社がいきなりAmazonや楽天に出品するとブランド力が足りません。商品にストーリー性を持たせたくて、クラウドファンディングにも挑戦しました。目標金額の40万円に対し支援総額は117万6,000円と、294%の達成率を実現しています。また、こちらの商品で2022年の東京インターナショナル・ギフト・ショーで、「LIFE×DESIGNアワード」もいただきました!

――新しい取り組みやビジネスを展開するうえで、重視しているポイントは何でしょう。

「何のためにやるのか」という目的を明確にすることです。例えば、自社製品を作る際に、社内から疑問や懸念の声が上がりました。そこで「新型コロナウイルス感染症の影響もあり、売上を確保しないと給与を増やせない」と正直に伝え、資料を用いて新規事業の必要性をていねいに説明したんです。

トップダウンの指示だと単なる作業になってしまい、従業員のモチベーションは維持できません。目的の共有はもちろん、売上など裏付けとなるデータもきちんと提示するようにしています。

中小企業同士でつながれば、大きな波を生み出せる

――これから挑戦したいことや、将来の展望について教えてください。

正直なところ、リーマンショック後の業績は必ずしも芳しくはないので、なんとか利益を伸ばしたいと考えています。そのために自社製品の製造・販売に力を注ぎ、5年後には売上の3割を占めるのが理想です。

ただしその発展は従業員のやりがいや誇り、仕事の楽しさを軸としたものでなければなりません。現在の規模だとワークシェアにも限界があるし、できたら従業員を30人くらいに増やして働きやすさ・満足度を追及したいですね。

――最後に、製造業界で頑張っている方や、家業を継ぎたい、あるいは迷っている若い世代に向けてメッセージをお願いします。

最近、友人が家業を継ぎました。彼は国内最大手の企業に勤めていて、収入もそちらのほうが安定していたかもしれません。それでも家に入ったのは、ファミリービジネスや中小企業にポテンシャルを感じているからではないでしょうか。

「家業は人も事業も選べない」と言われてきました。しかし今は不確実な時代で、どんな事業も変化していかないと続きません。家業は、自分の夢を実現するための資源になりうると思います。多くの中小企業が抱えているIT化の遅れという課題も、若い世代であれば比較的容易に解決できるのではないでしょうか。

中小企業同士の連携により、小さな会社が大きな波を生み出すことだって可能です。SNSでつながった「町工場プロダクツ」というグループでは、全国からさまざまな町工場が集まって、ギフトショーへの出展やポップアップストアを開催しています。

ぜひたくさんの人に「継ぐ」という選択肢を持ってもらいたいですね。

株式会社タシロ
http://www.tasiro.co.jp/

所在地:神奈川県平塚市入野284-1
従業員数:12名

撮影:RYOTA KYOSHIMA

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著者:弥報編集部
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