
2022年1月31日より、最大250万円が給付される「事業復活支援金」の申請が開始されています。申請期限は2022年5月31日です。コロナ禍にダメージを負った事業者にとっては大きな支援となりますから、ぜひ活用したいところです。とはいえ、手続きは難しいイメージが強く、申請をためらう事業者の方もいるでしょう。
そこで今回は、少しでも多くの事業者が、事業復活支援金申請に対して前向きに取り組めるよう、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生にお話を伺いました。
自分たちが事業復活支援金の対象事業者かどうか、時短要請協力金をもらっていても対象事業者となるか、そして応募の流れや申請に必要な書類まで、基本的な情報を確認してみてください。
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執筆者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント)
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
吉田学ブログ「融資・資金調達支援を武器にして法人顧問を獲得しよう!」
目次
「事業復活支援金」とは、何ですか?

事業復活支援金は、新型コロナウイルス感染症の拡大や長期化に伴う需要の減少または供給の制約により大きな影響を受け、自らの事業判断によらず売上が大きく減少している中小法人等および個人事業者等に対する支援金です。事業の継続および立て直しのための取り組みを支援することを目的としています。申請期間は、2022年1月31日から5月31日までです。
対象となる事業者の要件を教えてください
以下の要件を満たす中小法人・個人事業者が給付の対象になります。
- 新型コロナウイルスの影響を受けた事業者
- 2021年11月~2022年3月のいずれかの月の売上高(対象月)が、 2018年11月~2021年3月までの間の任意の同じ月(基準月)の売上高と比較して、50%以上または30%以上50%未満減少した事業者
事業復活支援金は、あくまでも「新型コロナウイルスの影響」を受けていることが前提条件となります。正確には「新型コロナウイルスの拡大や長期化に伴う需要の減少または供給の制約により大きな影響を受け、自らの事業判断によらずに対象月の売上が基準月と比べて、50%以上または30%以上50%未満減少している」必要があります。
一例ですが「国や地方自治体による、自社への休業・時短営業やイベント等の延期・中止その他のコロナ対策の要請に伴う、自らの財・サービスの個人消費の機会の減少」や「消費者の外出・移動の自粛や、新しい生活様式への移行に伴う、自らの財・サービスの個人需要の減少」などの影響を受けている場合が該当します。
例えば、以下のようなケースは対象になりません。不正受給にならないように、十分に注意する必要があります。
- 実際に事業収入が減少したわけではないにもかかわらず、通常事業収入を得られない時期を対象月とすることにより、算定上の売上が減少している場合
- 売上計上基準の変更や顧客との取引時期の調整により売上が減少している場合
- 要請などに基づかない自主的な休業や営業時間の短縮、商材の変更、法人成りまたは事業承継の直後などで、単に営業日数が少ないことなどにより売上が減少している場合 など
給付額の上限はいくらですか?
中小法人は最大250万円、個人事業者は最大50万円です。なお給付上限額については、下記の通り、法人の場合は年間売上および売上高減少率、個人の場合は売上高減少率によって異なります。
給付額の計算式を教えてください。また、具体的な事例も知りたいです
給付額の計算式は以下の通りです。
〈計算式〉
基準期間の売上高-対象月の売上高×5=給付額 |
「基準期間」は「2018年11月~2019年3月」「2019年11月~2020年3月」「2020年11月~2021年3月」のいずれかの期間になります。(対象月を判断するため、売上高の比較に用いた月(基準月)を含む期間でなければなりません。)
「対象月」は、2021年11月~2022年3月のいずれかの月になります。(基準期間の同月と比較して売上が50%以上または30%以上50%未満減少した月でなければなりません。)
具体的な事例を見てみましょう。
〈事例〉
- 年商1億円以下の法人
- 対象月を2021年12月、基準期間を2018年11月~2019年3月とするケース
〈状況〉
- 基準:2018年12月「80万円」
- 対象月:2021年12月「40万円」
- 基準期間2018年11月~2019年3月の事業収入「460万円」
〈解説〉
- 基準月と比較して50%減少しているため、給付対象となる
- 減少率50%以上(年間の事業収入1億円以下)のため、上限額は100万円となる。
- 計算式に当てはめると以下の通りになる。
460万円-40万円×5=260万円
=給付額:100万円 - 計算式に当てはめると260万円であるが、年商1億円以下の法人の上限額は100万円であるので「100万円」の給付額になる。
なお、事務局HPに事業復活支援金シミュレーションが公表されていますので、自社の計算をしてみてください。
事業復活支援金シミュレーション:事業復活支援金サイト内「事業復活支援金シミュレーション」|中小企業庁
申請の流れを教えてください

主な申請の流れは、以下の通りです。
- アカウント申請・登録
- 登録確認機関の事前確認
- 申請
- 審査
- 給付
「一時支援金または月次支援金を既に受給している場合」「一時支援金および月次支援金を受給していないが、登録確認機関と『継続支援関係』である場合」は、申請ステップの(1)および(2)を省略できます。つまり「事前確認」などは必要なく、すぐに「申請」することが可能なのです。
この事前確認とは、申請希望者が不正受給や給付対象を誤って理解したまま申請してしまうことへの対応として、申請希望者が「事業を実施しているか?」「新型コロナウイルスの影響を受けているか?」「給付対象などを正しく理解しているか?」などについて「登録確認機関」が事前確認するものです。
事前確認が必要な事業者については、まずは登録確認機関を探さなくてはなりません。登録確認機関については、事務局のWebサイトで順次公表されますので確認してください。
〈登録確認機関検索ページ〉
事業復活支援金サイト内「登録確認機関検索ページ」|中小企業庁
次に、「継続支援関係」とは、以下のような定義になっています。顧問税理士がいる場合は、下記の2に該当すると思われます。
〈継続支援関係の定義〉
- 特別の法律により設置された機関(例.商工会など)の会員・組合員(過去1年以上継続しているもの、または、今後も含め会員等期間が1年以上のもの)
- 法律に基づく士業(例.顧問税理士など)の顧問先(過去1年以上継続しているもの、または、今後も含め契約等期間が1年以上のもの)
- 金融機関の事業性融資先(株式保有先を含む)
- 登録確認機関の反復継続した支援先(事業者の本業で2019年~2021年の間に、毎年1回以上の支援実績があるもの
必要な申請書類は何ですか?
申請書類は、次の通りです。
- 履歴事項全部証明書(法人)または本人確認書類(個人)
- 確定申告書類の控え
- 対象月の売上台帳など
- 振込先の通帳
- 宣誓・同意書
なお、一時支援金および月次支援金を受給していなくて、継続支援関係のない方は以下の書類も必要になります。
- 基準月の売上にかかる帳簿
- 基準月の売上にかかる1取引分の請求書・領収書等
- 基準月の売上にかかる通帳など
これらは主な書類であり、別途必要書類があるケースもあります。また、審査時に給付要件を満たさない恐れがある場合は、他の書類の提出を求められる可能性もあるので、しっかりと確認してください。
自治体から時短要請のための協力金を貰っていますが、事業復活支援金を申請することは可能ですか?
原則として、要請に応じた月の分の協力金の金額を、その月の事業収入に算入して、そのうえで給付要件を満たす場合が給付対象となります。なお事務局HPには、以下のように書かれています。
地方公共団体による休業・時短要請等に応じたことに伴う協力金等の対象となる事業者であっても、給付要件を満たす場合は、給付対象となり得ます。 なお、新型コロナウイルス感染症影響に関連する給付金等(持続化給付金や家賃支援給付金、協力金等)は事業収入に含めません。 ただし、対象月中に地方公共団体による時短要請等に応じており、それに伴う協力金等(協力要請推進枠交付金が充てられるもの)を受給する場合(受給しようとする場合を含む。)は、「対象月中に時短要請等に応じた分」に相当する金額を、対象月の月間事業収入に加える必要があります。 |
インターネットでの電子申請に自信がありません。どうすればよいでしょうか?
事業復活支援金の申請は「電子申請」となっていますが、電子申請を行うことが苦手な事業者もいると思います。その場合は、申請サポート会場にて、補助員による電子申請手続きのサポートを受けることが可能です。
〈サポート会場検索〉
事業復活支援金「申請サポート会場〉エリアから探す」|中小企業庁
原則として、申請は本人のみの申請となっており、代理人名義での申請は認められません。ただし、中小法人等の場合には、代表者が自らの従業員等に事前確認を受けることや申請を行うことを委任できます。その場合には、代表者からの委任状(委任内容、委任者、受任者が明確である限りは書式自由)が必要となります。
事業復活支援金の詳細は、どこで確認できますか?
事業復活支援金の事務局ホームページに全情報が公表されています。
〈事務局HP〉
事業復活支援金|中小企業庁
また、「お問い合わせ窓口」も開設されています。
【申請者専用】
TEL:0120-789-140
IP電話等からのお問い合わせ先:03-6834-7593(通話料がかかります)
※いずれの相談窓口も受付時間は、8時30分~19時00分(土日、祝日含む全日対応)
※携帯電話からでもフリーダイヤルにお電話していただくことができます。
〈お問い合わせ相談窓口〉
相談窓口|中小企業庁
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