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【2022年4月から段階的に施行】育児・介護休業法はどう変わる?企業がしないといけないことは?

2022年4月1日から、改正された育児・介護休業法が段階的に施行され始めました。まずは、2022年4月の「制度の個別周知・意向確認義務」などで、2022年10月には「出生時育児休業」を含む育児休業に関する内容が改正されます。改正の主な目的は、非正規労働者や男性も育児休暇を取りやすくすること。育休取得要件の緩和や、出生直後の時期に使える新たな育休制度の創設が行われます。

今回は社会保険労務士の片野 誠さんに、改正内容や企業がやるべき施策を伺いました。育休取得の促進は、企業にも「雇用の継続」というメリットをもたらします。積極的に制度を整えて、よりよい労働環境を目指しましょう。


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片野 誠(社会保険労務士)

1972年神奈川県生まれ。中小企業の総務部において、経理に約3年、人事・総務に約9年半従事。2006年度社会保険労務士試験に合格。2008年2月に社会保険労務士として開業。2009年5月特定社会保険労務士付記。〈所属〉全国社会保険労務士会連合会、東京都社会保険労務士会、東京都社会保険労務士会 千代田統括支部。片野誠事務所

取得条件緩和!「育児・介護休業法」は2022年4月・10月でこう変わる

――はじめに、男性の育休取得の現状を教えてください。

2020年に厚生労働省が行った「雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は12.65%でした。ただし中小企業に限っていえば、そこまで上がってきていない印象があります。今回の育児・介護休業法の改正には、そういった背景もあるでしょう。


――2022年4月から施行された、育児・介護休業法について教えてください。

2022年4月1日から施行されたものは、大きく分けて2つあります。

1つ目は「雇用環境整備」や「個別の周知・意向確認」の措置が事業主の義務となることです。雇用環境整備とは「育休に関する研修の実施」「相談窓口の設置」「事例の周知」などを指します。

研修は管理者だけでなく、全労働者に行うのが理想的です。相談窓口は、育休関連で何か不明点があったときの連絡先を決めるということになりますね。事例の周知とは、育休取得促進のための取り組みや、経営者のトップメッセージをホームページやポスターなどに掲載することを指します。

実施するのはいずれか1つでかまいません。導入しやすいのは「研修」か「相談窓口の設置」だと思います。

なお、個別の周知・意向確認とは、本人または配偶者に出産の予定がある場合、育休制度について説明し、休業取得の意向を聞かなければならないということです。個別の周知・意向確認の方法については後ほど、詳しくお伝えします。

2つ目に、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されました。「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止され、無期雇用労働者と同様に取り扱われるようになります。

――2022年10月から施行される、育児・介護休業法について教えてください。

2022年10月1日からは、主に4つの内容が改正されます。

1つ目は、出生直後の時期における柔軟な育休制度の創設です。「パパ休暇」の後継となる制度で、子供の出生後8週間以内に4週間まで取得できます。これにより、出産直後に上の子供の面倒や、母親のお迎えに利用したいといったニーズに応えられるようになりました。申し出は休業の2週間前までに行えばよく、分割して2回取得可能です。さらに、労使協定を締結していれば、一時的に復帰してから再度休むこともできます。

2つ目は、新制度とは別に通常の育休も分割取得が可能となったことです。

そして3つ目は、新制度の創設と従来の育休の制度変更により、育児休業給付についても所要の規定の整備が行われます。これまで、育児休業給付については「自分がどのタイミングでもらえるかわからない」という人が多かったんです。4月の施行で行われる個別の周知・意向確認の義務化により、育児休業給付についても会社側がきちんと説明しなければならず、今後は給付制度への理解が進んでいくでしょう。

最後の4つ目ですが、月内に14日以上の育児休業をしている場合にも社会保険料が免除されるようになります。以前は月末に育児休業を取得しているケースのみ対象だったので、要件の合理化がされるということですね。なお、賞与に係る保険料については、連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限り免除されます。


――2022年4月以降、パートやアルバイトなどの有期雇用労働者の育休取得について、「引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可」とあります。労働者にとって不利益になりませんか?

法律が変わるので「当然4月以降は労使協定を締結し直すべき」というのが厚生労働省の考え方です。心配されているのは「では、有期雇用労働者が育休を取れないような協定にしよう」とならないか、ということでしょう。

ここは「労使協定とは何か」という本質をふまえて考えてみましょう。

労使協定は、使用者と従業員の代表者による話し合いで決めるものです。代表者を選ぶときに最も大切なのは、使用者が関与しないことです。役員や管理監督者は認められませんし、正当な手順を踏まず人事担当者が署名してしまうことも当然ダメですよね。代表者が民主的に選ばれた人でなければ、労使協定は効力を持ちません。はたして、従業員の代表が労働者を不利にする協定を締結するでしょうか。極端な話、新入社員が入社直後に育休を希望するパターンもあり得ますが、労使協定で除外されていない限りは取得させないといけません。

つまり私は、労使協定による除外の但し書きが、直ちに「抜け道」のように使われることはないと考えています。


――今回の改正において厚生労働省の資料に「育児休業給付における被保険者期間の計算の起算点に関する特例を設ける」と記載されていますが、どういうことでしょうか。

育児休業給付を受けるための受給資格は、休業前の2年間で月11日以上働いている月が12か月以上あることです。この起算点が、育休開始日から産前休業開始日などに変更されます。

育休開始日から遡った場合、産前産後の休業は被保険者期間として計上できませんでした。入社から間もなかったりすると、この分でギリギリ足りなくなるケースがあったんです。しかし、産前休業開始日からさかのぼることによって、育児休業給付に該当する人が増える可能性があります。


――今回の法改正には従業員や会社にとってどのようなメリットがありますか?

有期雇用労働者の要件が緩和されたことで、多くの労働者が育休を取れるようになりました。これまで出産や育児で退職せざるを得なかった人たちが残るわけですから、会社にとっても「雇用の継続」というメリットが得られます。辞めた人の代わりの求人を出して、面接して、やっと戦力になったらその人も出産・育児で辞めてしまう……。そんな事態も、今回の改正で防げるのではないでしょうか。

法律に違反すると、企業名公表や過料になることも

――法改正への対応を、社内だけで行うことは可能ですか。

担当者の知識や経験によりますね。いろいろな会社で何十年も人事をやっていたような人であれば、対応できるかもしれません。そうでないなら、外部の専門家に依頼するのがベターです。

育児関連の法律・制度に精通している専門家としては、社会保険労務士が第一候補になると思います。もともと社労士や弁護士が入っている会社であれば、まずは相談してみるとよいでしょう。すべてを任せるやり方だけでなく、説明のみをお願いして窓口は社内といった方法も可能です。


――育児・介護休業法に違反した場合、どのような罰則があるのでしょう。

労働基準法とは異なり、違反しても罰則はありません。ただし、労働局の均等部・均等室から助言・指導・勧告を受けたのに従わない場合は、企業名が公表され、さらに報告を怠る、もしくは虚偽の報告をすると20万円の過料が課されます。

育児・介護休業法に違反した企業だと公表された会社に入社したい、あるいは取引したいという人がどれだけいるでしょうか。やはり、イメージダウンは避けられないと考えられます。

【2022年4月施行分】企業は何をしたらいい?個別の周知・意向確認の手段も解説

――法改正にあたり、企業はいつまでに何をすればよいですか。

雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置とも、本来は2022年4月1日時点で既に行われていることが望ましいです。環境整備については、研修を選んだのであれば対象者の範囲をはじめ、講師は社員がやるのか外部に頼むのか、対面なのかオンラインなのかといった概要を決めていきます。相談窓口を設置する場合も、社内に置くのか外部に依頼するのかを決定する必要があるでしょう。

もし今、急いでやらなければならないとしたら、相談窓口の設置が一番早いかもしれません。


――個別の周知・意向確認の手段を教えてください。

厚生労働省が提示している手段は面談・書面の交付・FAX・電子メールで、そのうちFAX・電子メールは対象者が希望した場合とあります。やはり、従業員が安心できるのは面談ではないでしょうか。説明用の資料は、厚生労働省のサイトからダウンロードできます。

面談の際は、育休取得を控えさせるような発言をしてはいけません。当たり前ですが「育休を取るとボーナスが減る」などと伝えるのは絶対NGです。


――就業規則の変更は必要でしょうか?

育児に関連した記載を、改正に沿って変更する必要があります。2022年4月施行分だけでなく、10月施行分を先んじて対応するのもよいでしょう。

従業員10名未満の会社は就業規則の届出作成義務がないので、小さな会社だとそもそも就業規則がないケースもめずらしくありません。だからといって、就業規則がないから育児に関する制度もないといった言い分は通用しません。就業規則の有無にかかわらず、育児・介護休業法はすべての労働者に適用されます。

安心して長期間働いてもらうためにも、就業規則は用意しておいたほうがよいでしょう。

〈その他の育児・介護記事は【こちら】から〉

著者:弥報編集部
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