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創業1年で靴好きを唸らせるシューズブランドに成長した「Arch Kerry」に聞く、ブランド展開のコツ

アメリカのビンテージシューズ、通称ビン靴の特徴やこだわりをそのままに、現代に蘇らせるシューズブランド「Arch Kerry(アーチケリー)」。ブランドディレクターの清水川 栄さんは、神保町の靴専門店で販売員兼バイヤーとして勤務した後、靴の通販サイトを運営する傍ら、自らが大ファンであるビン靴を題材にしたシューズブランドの立ち上げを決意。商品企画の知識がゼロの状態から、靴職人と試行錯誤を繰り返し、再現不可能と言われていた現代のビン靴を作り上げます。

ブランド発表後、Arch Kerryの評判は瞬く間に広がり、創業1年足らずで靴好きを唸らせるほどに。今回はそんなArch Kerryの人気の秘訣と、ブランドを立ち上げる際のポイントについて清水川さんにお話しを伺いました。


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清水川 栄(株式会社SKEWORKS 代表取締役)

1982年2月10日生まれ。埼玉県出身。学生時代に神保町の靴専門店「ミマツ靴店」にアルバイトとして入社。販売員として経験を積んだのちにバイヤー、通販事業の責任者となる。2013年に紳士靴通販サイト「レザーラウンドアバウト」を開設し独立。2020年、趣味で収集しているアメリカンビンテージシューズをテーマに自社ブランド「Arch Kerry」を発表。高級紳士靴の企画販売を行う。Arch KerryArch Kerry 公式インスタグラム


「Arch Kerry」創業のきっかけと苦労。余剰資金があったからこそできた、納得いく靴づくり

――「Arch Kerry」について教えてください。

「Arch Kerry」は、1950~60年代のアメリカンビンテージシューズ(通称ビン靴)を、現代の靴として再現することをコンセプトに掲げているシューズブランドです。当時のアメリカの靴づくりの考え方は現代の日本とは異なり、今では製造がきわめて困難と言われています。そんな時代背景の中で、私自身がファンであるビン靴への思いと、靴職人の技術が組み合わさって実現した、唯一無二の靴づくりをしています。


――「Arch Kerry」を立ち上げられたきっかけは何でしょうか。

もともと神保町にある創業60年以上の靴専門店で、バイヤー兼販売員として長年勤めていました。その際に店のマスターの了承を得て、靴通販サイト事業を開始したのが始まりです。

3万円程度の紳士靴を仕入れ販売していましたが、メーカーの都合により徐々に商品が仕入れられなくなっていきました。商品をメーカーに頼るしくみを見直す必要があり、自ずと自社ブランドの立ち上げを考えるようになっていったんです。

そんな時に、アメリカのビンテージシューズに出会いました。それまでビン靴は履いたことが無く、なぜ中古靴にファンがいるのだろう?と最初は疑問に思いましたが、試しに購入してみると、これが奥深くおもしろい。すっかりその魅力にはまってしまいました。ビン靴を収集していく中で、「ビン靴を完全再現するブランドを作ってみたらどうだろうか」と思い始めました。

ニーズに関しては、正直確証は持てませんでした。ただ、いろいろ調べてみても、そのような靴づくりをしているブランドは他に無かったんです。もしかすると独自性のあるおもしろいテーマなのかもしれない、とArch Kerryの立ち上げを決意しましたが、最終的には自分自身が大好きなビン靴をテーマに作ってみたい、と強く思ったことが大きいです。

――立ち上げの時に苦労されたことは何ですか。また一方でやってよかったと感じたことは何でしょうか。

当時の私は小売りの経験しかなかったため、商品企画、卸売などすべてにおいてまず何からすべきか分からなかったのは大変でしたね。しかし靴づくりは高い技術を持った職人さんにお願いしようと最初から決めていましたから、まずArch Kerryの靴を作ってくれる靴職人を探すところから始めました。

ビン靴は、独特な靴づくりをしていて、現代の製作方法とはまったく異なります。スペードソール(通称イカソール)と言われるような特有の靴底シルエットや、ステッチピッチの細かさなど、歴の長い職人さんでも再現するのが本当に難しいです。やはり、請け負ってくれる職人さんにすんなりとは出会えませんでした。でも、こちらも中途半端なものは絶対作りたくない。要望は変えずアタックを繰り返していた中で、1人の職人さんが引き受けてくれることになりました。

職人さんと実際にビン靴を研究しながら、最初のサンプルが完成するまで1年かかりましたが、その靴が完成した時は本当に感動しましたね。それだけで、これまでの苦労が報われたような気がしました。

経営面で振り返った時によかったと感じるのは、サンプル作成中も通販サイトを運営していたので、余剰資金があるという状態を作れていたことですね。新規事業の初動にじっくり時間をかけられたのは、他に収入源があったからというのも大きいです。納得のいくものを作ろうと思う時、それだけの手間をかけられるしくみづくりも必要なことかもしれません。

瞬く間に注目されるブランドへ。軌道に乗るきっかけはSNSと口コミ

――「Arch Kerry」が軌道に乗り始めたきっかけは何だったのでしょうか。

ブランド発表の前に、試しに私個人のビン靴コレクション用のインスタグラムの投稿に、Arch Kerryのサンプル靴の写真を投稿してみたんです。すると、ビン靴好きなインフルエンサーさんからすぐに「どこのブランドですか」とコメントが来ました。これは反応があるぞ、と確信し、すぐにArch Kerryのインスタグラムアカウントを作りました。

販売前からSNSで情報発信を始めましたが、早速いろいろな方が反応してくれました。やはり最初に興味を持ってもらったのは、ビン靴を好きな方々でしたが、靴業界のメディア関係者やバイヤーまでその輪が広がっていくのに時間はかかりませんでした。ブランドデビュー直後から靴専門雑誌『LAST』をはじめ、雑誌や、メディアから取材依頼が次々に入るようになったんです。ブランドコンセプトが唯一無二なので、いろいろな方に興味を持たれたこともあると思います。

靴磨きの第一人者であるブリフトアッシュの長谷川 裕也さん、靴磨き元日本チャンピオンの寺島 直希さんなどからもオーダーを受け、自分でも驚くほど速くブランドの名前が広まりました。独自性はもちろん、ディレクターが独立してブランドを立てているという点においても、他に例がほとんどないのです。そのような背景でブランディングを強化できたことも、多くの方にArch Kerryを知ってもらえた要因の1つなのでは、と感じます。

――注目を一気に浴びた「Arch Kerry」ですが、具体的にどのような戦略を考えられていますか。

より多くの方にビン靴に親しんでいただきたいという気持ちを込め、今は顧客層の拡大を進めています。2020年のブランドスタート時は、メイドトゥオーダー(受注生産靴)のみの展開でしたが、現在はレディメイド(既成靴)の販売も始めました。これまでの知見を活かし、クオリティを担保できる工場生産ラインを確保できたことも、実現した理由ですね。昨年末の伊勢丹 新宿店でのPOP UP SHOPでも、メイドトゥオーダーとレディメイドの2軸で集客しました。


――今後はどのようなブランド展開を考えられていますか。

今後、レディメイドはより身近に感じてもらえるように、メイドトゥオーダーはエキゾチックレザー(家畜以外の皮のこと)を取り入れるなどして、ラグジュアリー感をさらに出していきたいと考えています。ただどちらのラインも安売りだけはしないと決めています。ブランドの格式維持はもちろんですが、日本の靴生産業界の立場を少しでも良くしたい、その力になれればという思いもあるからです。

ゆくゆくは海外にも進出していきたいですね。そういった意味では、レディメイドは海外展開にも適しているかなと。ブランド創業時から、何となくですが「これがうまくいったら次はこうしよう、うまくいかなかったらこうしてみよう。」という未来図は描いています。困難にぶつかってから初めて考える、という状況はあまりないですね。ブランドを長生きさせるために、事業承継も頭の片隅に入れながら将来の全体像を見据えています。

ブランドに必要なのは、独自性と魅力的な商品。そしてそれを発信していく力

――ブランドを軌道に乗せる秘訣はありますか。

やはりコンセプトの独自性と、魅力的な商品を提供することに限るのではないでしょうか。日本の高級紳士靴市場は、ヨーロッパ由来のものがほとんどですが、Arch Kerryはデザインソースをアメリカに置きました。アメリカ靴はワークブーツのイメージが強いのですが、そのような印象を覆すArch Kerryのドレスシューズは、独創的な存在です。ここまで完全にビンテージシューズを再現したブランドは他にない、と言い切れるのも特長です。オリジナリティを熟考し、かつ本当に自分が納得行く商品であれば、必ずどこかでユーザーに届くと思っています。


――ブランドが軌道に乗らない時は、何を見直せばよいと思いますか。

情報発信が足りなかったり、伝え方が最適ではない可能性も考えられますね。改めて自社製品を見つめ直し、打ち出し内容や方法を検討してみるといいかもしれません。現代は、インスタグラムを始め、だれでも使えるソーシャルメディアが増えています。Arch Kerryも、インスタライブを開催してみるなど、さまざまな媒体を駆使して販売促進をしている最中です。ブランドを好きになってくださるお客さまはどこかに存在すると思うので、その方たちにどうやって知ってもらえるかを常に考え続け、実行することが大切ですね。

Arch Kerry 公式インスタグラム


――新規事業や自社ブランドを立ち上げられた方に向けてメッセージをお願いいたします。

今はコロナ禍の局面において非常に厳しい時期かと思いますが、苦しい時も決して焦りを見せず、納得いくものを創り続けたいですよね。対面販売を主としていたArch Kerryも、コロナ禍では逆風の渦中でした。しかし、焦った施策はお客さまに見透かされますし、ブランドの価値を毀損しかねません。もちろん苦労しないで売れれば、それはそれで良い。一方で、どこかで苦労した部分がないと、厚みのようなものは醸し出せないと考えています。目先の利益よりも、ビジネスの軸をしっかり通して未来を見据えながら、成長していければと思います。

Arch Kerry
https://archkerry.com/
所在地:東京都文京区春日2-26-11
※アポイントはサイト内のContactから承っております。

撮影:Atsushi Watanabe

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著者:弥報編集部
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