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会社を急に継ぐことになったら?突然の事業承継で見出した新たな航路【豊興自動車株式会社】

事業承継された側の方にお話を伺う【事業承継者に聞く】シリーズ。今回は創業57年目を迎える豊興自動車株式会社 4代目代表取締役の田草川 陽子さんにお話を伺いました。

豊興自動車は、個人タクシーなどをはじめとする車両の点検や整備を行っている自動車整備会社です。3代目、2代目代表取締役が相次いでご逝去され、急きょ事業承継をすることになった田草川さんは、それまで経営はもちろんのこと、そもそも他社に勤務しており自社とのかかわりはゼロだったといいます。

しかし経営に関して一から学び、顧客管理システムの入れ替えや、新事業への取り組みなどを積極的に実施しています。


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田草川 陽子(豊興自動車株式会社 代表取締役)

1975年千葉県生まれ。武蔵大学経済学部金融学科卒業後、クレジットカード系システム会社にてプログラマー、システムエンジニアとしてシステム構築に携わる。結婚後、2人の子育て中にFP2級、簿記2級等の資格を取得し、他社で経理事務に従事。豊興自動車株式会社3代目である夫、2代目である義父の立て続けの逝去後、4代目代表取締役に就任。現在では新規事業も立ち上げるなど意欲的に従事している。豊興自動車株式会社


まったく予期していなかった事業承継。他社の事務員から転身、社長に

――豊興自動車株式会社の事業について教えてください。

弊社は、トヨタモビリティ東京株式会社(当時、東京トヨペット株式会社)が販売した個人タクシー車の点検、整備を担うために1965年に創業した自動車整備会社です。トヨタモビリティ東京から車を購入した個人タクシー事業者が所属する、親睦団体「友の会」があるのですが、その会員事業者さま向けに車両点検の巡回サービスを行っています。


――突然の事業承継だったということでしたが、当時どんな思いで会社を引き継がれたのでしょうか。

3代目の夫が死去したあと、義父が社長として復帰しましたが、その義父もその後1年で亡くなってしまいました。同族経営ということもあり、次に会社を引き継ぐ人物は私しかいなかったのです。それまで私自身は、事業承継どころか経営をするなんてまったく考えたことはありませんでした。さらに言うと、別会社で経理事務を担当していたので、自社の業務なども一切把握していない状況でした。

しかしお客さまや18名の社員のことを考えると、この会社を継続させる責任があり、どうしても私が担わなければいけないと決意して2019年に4代目代表取締役として就任しました。

突然の事業承継で見えてきた、先代が築き上げたつながりの重要さと、経営課題

――事業承継直後は具体的にどのようなことを行いましたか。

事業承継後、最初に行ったことは、お客さまや取引先さまへのご報告回りと財務状況の確認でした。不測の事態は、すぐにお客さまにお伝えをすることが誠意であると感じていたからです。

また同時に顧問税理士に相談し、自社の状況を把握するために「会社の財務状況の確認」と「改善点の洗い出し」を行いました。わからないことだらけだったので、税理士の存在は大きかったですね。もちろん、いろいろな面で社員や経営陣、お客さまやトヨタモビリティ東京の方にも支えられ、本当に周りに助けられたと感じました。


――事業承継の際に助かったこと、また大変だったことは何でしょうか。

先代が関係者や取引先さま、お客さまとの強固なつながりと、社員との良い関係性をしっかりと築いていたことが何より心強かったです。また、当時私が社内に目を向ける時間が取れなかった中で、社員の皆は私以上に不安に思うこともあったでしょうが、普段以上に働いてくれる姿は本当にありがたく、頼もしかったです。

私個人としては、以前簿記の勉強をしていたことも非常に役立ちました。経理担当者や税理士にすべてを任せるのではなく、自らもわかるように勉強しておけば、いざというときに、そのノウハウが自分を救ってくれるものだと実感しましたね。あとは前職でシステムエンジニアの経験もあったので、顧客システムの刷新などにも役立ったと感じました。

しかし実際に会社を経営し始めると、大きな困り事が2つ出てきました。1つ目は自動車整備会社なのに私が車のことが一切わからないこと、2つ目は、そもそも「経営」って何をすればいいのか何も知らなかったことです。1つ目の悩みに関しては、社員に全面的な信頼を寄せ、車のことはすべてお願いすることにしました。私はというと、経営に関して徹底的に学ぼうと思い、日ごろの経営業務の傍らさまざまな機関を活用して本格的に動き出しました。


――どのように経営を学ばれたのですか。

公益財団法人である、東京都中小企業振興公社の総合支援部がさまざまな取り組みをされていると聞き、調べたところ「事業承継塾」や「後継者イノベーションスクール」といった事業承継に関する学習コースがあることを知り、迷わず受講しました。両方とも3〜4か月くらいのコースでした。このコースを受講して、経営者としてのものの考え方や、経営の基本を学ぶことができました。今振り返るとあの時学んだことは、今でも自社施策の組み立て時に役立っていると感じます。

またその後も、同総合支援部より人材ナビゲーターを派遣してもらい、経営に関するアドバイスなども定期的にいただいています。また経営についての本を片っ端から読んだり、学習コースで知り合った経営者たちにアドバイスをいただいたりと、継続してインプットを続けています。

自社の強み×社会のニーズで見つけた、新たな市場「福祉業界」への進出

――福祉車両の点検や整備サービスも始められたそうですね。きっかけは何だったのでしょうか。

自社の売上高の推移や業界の現状を分析したときに、弊社の主なお客さまである個人タクシーが継続的に減少している状況を目の当たりにし、新規開拓が必要だと強く感じました。将来を見据えた事業展開は、後回しにせず積極的に行っていくことが非常に重要です。

そこで自社の整備力を活かして、何ができるかを自分でリサーチし始め「福祉業界にニーズがあるのではないか」という仮説に至りました。実際に介護福祉施設にヒアリングし、車いす用リフトなどの架装部分も含めた福祉車両を整備できる会社がなくて困っている、という現状を知ったので福祉業界に参入することを決めました。

福祉車両の販売や整備を行うに当たって、一般社団法人 日本福祉車輌協会に所属し、福祉車両特有の整備技術を教えていただきました。私自身も福祉車輌取扱士と、認定インストラクターの資格を取得しました。会社が進むべき方向を自らが動くことで見出そうとしたのですね。

(上記写真は、福祉車両点検のようすです。)

――実際に始められていかがでしょうか。

福祉車両は、利用者さまが生活されるうえで必要不可欠なので、修理の際にお客さまがとても喜んでくださることが多いです。リフトやスロープなど、福祉車両の架装部分の故障原因を探り、直していくというメカニック本来の喜びを社員も感じているようです。

参入当初は社員全員が賛同していたわけではありませんでしたが、新規のお客さまが増えたり、実際にお客さまからいただいた感謝の声を共有していくにつれて、理解してくれる社員も増えていきました。今では、自社の技術で現代の高齢化社会に少しでも貢献できていればと、社員一丸となって邁進しています。

将来を見据えた基盤固めで、会社をより強固な存在へ

――今後はどのように会社を展開していきたいと考えていますか。

事業承継をして今年で3年目ですが、これまで学んできたことなどを軸に、基盤固めをする段階と感じています。社員にもっと寄り添い、組織力を強め「個人タクシー整備と言ったら豊興自動車」と皆さまに言っていただけた、創業当時のような強い会社にしていきたいです。

個人タクシー整備はもちろんのこと、福祉業界での新規事業においては、これまでとは異なるお客さまに接するための基礎を築き上げ、より多くの方に自社を知っていただくことが現在の課題です。今度は「個人タクシー整備、福祉車両整備と言ったら豊興自動車」と思ってもらえるように自社の技術や整備力を活かして、お客さまのためにできることを徐々に広げていきたいと思っています。

車両整備のようす

――事業承継を控えている後継者や、同じように会社を引き継いだ経営者に向けて、メッセージをお願いします。

事業承継は事前に準備するに越したことはないですが、だれにでも不測の事態は起こり得ます。置かれた状況の中で自社の継続を強く望み、最大限できることをするのが大切です。

私の場合は、最初のころは右も左もわからず、周りに頼りっぱなしでした。今思えば、周りに助けてもらえたのも、変なプライドを持たず柔軟な姿勢でいたこともあったのかと感じます。どんなに大変でも苦労は見せず、周りに感謝しながら真摯に対応していく。私もまだまだ地固めをしている最中ですが、どうか皆さまにも自社のことを強く思い、自らが動いて会社の道しるべとなっていただきたいと思います。

豊興自動車株式会社
https://www.houkou-motors.co.jp/
所在地:〒171-0014 東京都豊島区池袋3-69-5
従業員数:20名

撮影:Atsushi Watanabe

〈その他の事業承継記事は【こちら】から〉

著者:弥報編集部
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