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年末調整済みの経営者が確定申告をした方が有利な場合、しなければならない場合を税理士に聞く!

役員報酬を受け取っている中小企業の経営者は「給与所得者」という扱いになります。それゆえ年末調整をするのは原則必須で、そのうえで必要があれば確定申告も行います。

例えば、2か所以上から給与を貰っているケースは、年末調整をしても必ず確定申告をしなければいけません。また、必須でなくても確定申告をすることで、医療費控除が可能になるなど税金の負担が有利となることもあります。今回は年末調整と確定申告の関係性ついて、角陸会計事務所 代表税理士 角陸 伸彦さんに伺いました。

来年の確定申告のためにもしっかり覚えておきましょう。


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角陸 伸彦(角陸会計事務所 代表税理士)

2008年の創業以来、税理士事務所としては数少ない、契約解除ゼロの事務所です。一般企業でITシステムの提案営業を担当していたキャリアを元に、ビジネスソリューションにおける豊富な知識や数多くの企業との密なお付き合いによる経験を活かして、最善策や最適解をすみやかに提供。お客さまからいただくご相談には「どこまでも親身に、相談しやすく、わかりやすく」を日々実践し、安心と信頼を体験いただきながら、利益拡大に直接貢献してまいります。角陸会計事務所ホームページ


【年末調整と確定申告を復習】「確定申告すれば年末調整は必要ない」は誤解。給与所得者は年末調整を

――まず、年末調整と確定申告は何が違うのでしょうか。

年末調整も確定申告も、共に1年間の所得の金額を明らかにし、正しい税金の金額を確定する手続きです。これが両者の共通点で、違いは以下になります。

  • 年末調整

給与所得者が会社を通じて行う手続きで、源泉徴収された概算の所得税を正しい所得税に確定させる制度。一部の所得控除しかできないなど、計算できる範囲が限られている。

  • 確定申告

所得額と納税額を計算して申告する制度。給与所得に限らず事業所得や不動産所得といった多種多様な所得がある方を対象にしており、医療費控除などさまざまな所得控除が可能。

経営者の中には「年末調整では医療費控除ができないから確定申告をしたい」と言う方もいらっしゃいます。そして、その方の多くが「確定申告で税額が確定されるから、年末調整はしなくてよい」という誤解をされています。確かに確定申告で税額を確定させるのですが、経営者でも給与所得者である場合には、まず年末調整をする必要があり、そのうえで確定申告を行うことになります。

ただし、収入の状況によっては年末調整を行えないケースもあります。その場合は(年末調整をせずに)確定申告で税額を確定させます。


――では、法人経営者で年末調整ができないのは、どのようなケースですか。

1つ目は年収が2,000万円を超える場合です。このケースでは、給与所得者でも年末調整はせずに確定申告を行います。

2つ目は2か所以上から給与を受けている場合です。例えば、複数の会社で役員をしているケースが当てはまります。この場合、主たる会社(給与所得者の扶養控除等申告書を提出した会社)では年末調整を行いますが、従たる会社については、年末調整をしません。したがって、正しい税額を出すためには確定申告が必要になります。


――社会保険料控除など、年末調整と確定申告には共通項目があります。年末調整を行った場合、確定申告ではどのような処理になるのでしょうか。

年末調整を行うと、会社が源泉徴収票を交付してくれます。この源泉徴収票に年末調整されたデータが記載されていて、そのデータを確定申告に使用します。したがって、共通項目はそのまま確定申告に引き継がれます。


――年末調整で保険料控除などを忘れた場合、確定申告で控除することは可能ですか。

厳密にいうと、年末調整で調整すべき項目は年末調整でしっかりと行わなければなりませんので、年末調整の修正という形になります。しかし実際には、年末調整で生命保険料控除や地震保険料控除をし忘れた場合、確定申告で控除することもあります。

年末調整済みの経営者で確定申告も必須のケースは?確定申告をすると有利な場合も解説

――年末調整をしている経営者で確定申告をしなければならないのは、どのような場合ですか。

1つは前述しました、給与を2か所以上から受けている場合です。中小企業の経営者の方は、1社目が成功し、事業を分割したりするなどで2社目、3社目を立ち上げる方も非常に多くいらっしゃいます。この場合は必然的に2か所、3か所からの役員報酬をもらうこととなります。このケースでは、年末調整だけで税金を確定させることができません。しっかりと確定申告を行い、正しい税額を確定させましょう。

このケースでは還付となる場合が多く、ごくまれに納付になります。納付になるのは、想定より年金保険料や社会保険料などが少なく所得が多くなってしまったときです。

また、副業による所得が20万円を超えている場合にも、確定申告が必要です。

さらに、マンションなどの不動産を所有していて不動産経営をしている場合には、不動産所得について確定申告が必要になります。


――年末調整をしている経営者で確定申告をするとよいのは、どのような場合ですか。

義務はなくても確定申告をした方がよいケースで多いのは、医療費控除ができる場合です。

医療費が10万円を超えると医療費控除が適用できますが、例えば11万円の医療費であれば1万円しか控除できず、確定申告するメリットが少ないように思えるかもしれません。しかし実際は、その1万円の所得控除で数千円の税金の還付を受けられるわけです。これは納税者の権利ですので、少しでも控除できる場合は確定申告をした方がよいです。

なお、医療費が10万円を超えていなくても、所得が200万未満のケースでは、医療費控除が受けられます。またセルフメディケーション税制といって、医薬品代が1万2,000円を超えていれば受けられる控除もあります。

他にも、ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用していない場合には、寄附金控除を受けられる権利がありますので、しっかりと確定申告をするとよいでしょう。

また、株の配当で源泉徴収のある特定口座を活用している場合、所得税率が源泉徴収税率より低ければ、確定申告をすることで税金が少なくなる場合もあります。


――ふるさと納税をしている場合、ワンストップ特例制度を利用するのと確定申告をするのとでは、どのように違うでしょうか。

ふるさと納税をしている自治体が5団体以内であれば、ワンストップ特例制度により控除ができ、この場合は住民税から控除する形になります。6団体以上の自治体にふるさと納税をしている方は確定申告で寄附金控除を申請することになり、所得税と住民税の両方から控除される形となります。

ワンストップ特例制度を利用した場合でも、確定申告で寄付金控除を受ける場合でも、控除する金額の合計は同じです。ワンストップが利用できる場合には利用した方が手間が少なくて済む、というだけの違いです。ふるさと納税サイトを利用している場合には、サイト上から申請書をダウンロードして各自治体に提出できます。


――確定申告をしない方がよいケースはありますか。

よくあるのは、給与所得者の副業による所得が20万円以下の場合です。副業の所得が20万円以下なのに確定申告をすると、払わなくていい税金を払うことになり損です。この場合は、住民税分のみを市区町村に申告してください。最近はメルカリなどで簡単に副業ができますが、その合計所得を把握しておくのも大切ですね。

プロに任せて損を防ぐ!年末調整や確定申告を税理士に依頼するメリット

――確定申告を税理士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

所得控除などの自分の権利を確実に行使できます税金に関する法律は毎年改正されますし、ルールがとても複雑ですので、税理士に相談しながら確定申告を進める方が安心です。

最近では国税庁がICT(情報通信技術)化を推し進めており、スマホで気軽に確定申告ができるようになりました。税をより納税者の身近に感じていただくという点ではよい方法で、確定申告をご自身で行われるのもよいのかもしれません。

しかし、例えば「医療費控除だけだから、自分で行ってしまおう」というケースでも、税理士と相談して一緒に確定申告を進めた方がよいと思います。なぜなら、医療費の領収書だけを計上される方も多くいるからです。医療費控除は病院に通院するための往復の交通費も対象となるので、計上が漏れると損になります。また、タクシー代は認められていないのが原則ですが、足を骨折したりしてタクシーでないと通院できない場合は医療費控除の対象とできるなど、細かいルールもあります。

他に、特別養護老人ホームの費用の一部も医療費控除の対象となりますし、生計を一にしている家族の医療費も自分の医療費に合算できます。ここでは同居や別居を問わず、家族と生活費を共有していることを「生計を一にしている」といいます。どのような状態を「生計を一にしている」と判断できるかは、ケースバイケースなので、税理士のような専門家に相談しなければ自分ではわからない場合もあります。

また副業の収入が20万円を超える場合も、「副業収入が25万円だから確定申告しよう」と自己判断する前に税理士に、ご相談ください。「25万円の収入から引ける経費があり、所得は20万円未満になるため確定申告をしなくてもよいのではないか」とアドバイスを受けられます。

税金の細かなルールを熟知している専門家である税理士に相談すれば、確定申告される方が自分の権利を最大限に行使できます。

ICT化により自宅で簡単に確定申告できるからこそ、しっかりと税理士に確認しながら進めることをお勧めします。


――年末調整と確定申告のどちらも行っており、片方だけ税理士に依頼しているケース

では、税理士への依頼は両者をまとめて行った方がよいのでしょうか。

年末調整は経理が行っている会社もあり、その場合、確定申告だけ税理士に依頼するというケースがあります。逆に年末調整を一括して税理士に依頼しており、確定申告をしなければならないのは今年だけだからご自身で行うという方もいらっしゃいます。

確定申告は年末調整での源泉徴収票のデータを元に行いますし、年末調整での漏れがあるのかないのかという検算もできますので、まとめて税理士に依頼した方が正確だと思います。

会社の決算申告を税理士に依頼している場合には、決算申告、年末調整、確定申告をまとめて税理士に依頼する方も多くいらっしゃいます。


――確定申告はどの時期までに税理士に依頼できますか。2月中でも大丈夫なのでしょうか。

2月、3月に入ると確定申告業務で忙しい時期なので、新規の確定申告の依頼を受け付けないという会計事務所もあります。

当事務所では確定申告の内容にもよりますが、役員報酬が2,000万円を超えているので確定申告が必要医療費控除をしたい、ふるさと納税で寄附金控除をしたいという内容であれば、あまり手間もかからないので確定申告の直前でも大丈夫です。

副業で事業を行っていたり、不動産の賃貸をしていたりして、これも合わせて確定申告をしたいということであれば、その分の収入を集計するという作業が必要になりますので、早めに依頼していただけると助かります。書類を準備して送っていただく時期は可能であれば2月中旬まで、遅くても下旬くらいまでにはお願いしたいところです。直前になってしまう場合でも、可能な限り対応させていただきたいと思っています。

法人の顧問税理士となっていて日ごろからお付き合いしている場合には、定期訪問の際に会話の中で個人所得についてもお聞きし「では今年は確定申告をやりましょう」という流れになることが多いため、いつくらいまでに書類を準備していただきたいかを、秋頃からお話しさせていただくことができます。


――確定申告をしないと、税務署の調査が入ることがあるのでしょうか。

税理士と顧問契約をしているなどの場合には、税理士は確定申告が必要かどうかのアドバイスも行っていると思われますので、仮に税務署の調査が入ったとしても問題ないでしょう。しかし税理士とのお付き合いもなく、何年も確定申告をしたことがないという方に突然、税務署から税務調査の連絡があり、慌てて税理士に依頼されることもあります。ICT化が進み、税務署でも預金通帳などへ照会をかけて調べていますので、例えばメルカリの収入で利益が出ている方の通帳記録なども調べています。

確定申告をしなければならないにもかかわらず長年行っていない場合は、7年分さかのぼって確定申告をするとよいでしょう。税務調査は、通常5年、悪質な場合は7年さかのぼって行われるからです。

7年もさかのぼって確定申告をすることが難しい場合には、まずは直近から始めます。面倒だからと先延ばしにしないで、税理士と相談しながら、まずは3年分の確定申告をするとよいでしょう。いきなり3年分の確定申告を提出すると、確かに税務署もびっくりはしますが、まったく確定申告をしないよりはよいことです。

〈その他の確定申告記事は【こちら】から〉

著者:弥報編集部
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