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金融機関からの評価が上がるだけじゃない!小さな会社が「美しい決算書」を作るメリットとは?

銀行から融資を受ける際には、決算書の内容で判断されることも多いため、適正な内容の記載が求められます。ただし、決算書の役割はそれだけに留まりません。経営のかじ取りをするための重要な情報を読み取るという大きな意味があるのです。

しかしながら中小企業の経営者の中には、決算書の内容が自社の今後の経営にどのような影響を与えるのかあまり意識していない方もいるようです。

そこで今回は、プロ・ビジョン株式会社の方に「美しい決算書の作り方」「中小企業が美しい決算書を作るメリット」などについてお話を伺いました。

プロ・ビジョン株式会社

弥生会計と連動して月次決算書や分析帳票を作成できるアプリケーションソフト「参謀役シリーズ」を開発。「会計参謀」「決算参謀」は全国2,000を超える会計事務所で導入されており顧問先の経営指導に活用されている。2002~2005年:弥生会計AEの開発顧問として仕様検討(主にキャッシュフロー計算書)を請負う。2006年:弥生株式会社の経営診断サービスを開発。著書:弥生会計オフィシャルハンドブック「あなたの会社の実力、信用力がわかります!」中経出版。現在は、弥生PAP会員向け(会計事務所向け)セミナーである「経営支援アドバイザー研修」の研修企画および講師派遣を行っている。(延べ受講人数4,000人を超える人気のセミナー)

美しい決算書を作るメリットや美しさの条件

——美しい決算書とはどのような状態のものを指すのでしょうか?美しさの条件とその理由を教えてください。

美しい決算書とは「安全性と収益性の両方がバランス良くとれた決算書」です。

まず、安全性は貸借対照表のバランスで見ます。自己資本比率50%、流動比率150%以上、固定比率100%以下、現預金比率30%であればバランスが取れた形といえるでしょう。

〈安全性の高い貸借対照表のバランス〉

自己資本比率は高ければ高いほど良いのですが、中小企業の場合は自己資本比率だけではなく、実際にどれだけ現預金を保有しているのかという点が大切です。資金繰りが悪化したときに現金が用意できなければ、どこかから資金調達をしなくてはいけません。金融機関からの借入は利息がかかるため、自己資金の中から用意したほうがよいでしょう。

有利子負債を借りる場合は「有利子負債≦現預金」という状態にしておけば、いつでも返済できるような体制になるため安心です。つまり、現金の保有率が高ければ「実質無借金経営」となり、強い財務体質で安定性が高いと評価されます。

もちろん、業種によって貸借対照表の形は異なりますが、売掛債権や固定資産が多い業種ほど、たくさんの現預金を用意しておくと安心です。

また総資産が少ない会社は、現預金の割合だけではなく実際の額を考慮しなければいけません。例えば、総資産1,000万円の会社の現預金を30%にしても300万円にしか満たないため、何かあったら助からない可能性があります。

——収益性については、どのように考えればよいのでしょうか?

収益性は総資本経常利益率(ROA)という指標で図ります。ROAは会社の資本に対する利回り(年利)を表しますが、少ない資本で利益を生み出している状態が評価される点が特徴です。

ROAの計算式は以下の通りです。

ROA=経常利益÷総資産×100(%)

ROAが10%以上ある会社は、評価が高くなります。


——美しい決算書を作ることで中小企業が得られるメリットを教えてください。

美しい決算書を作るメリットは、金融機関からの融資が受けやすくなることです。金融機関は基本的に過去の情報から企業の状況を見ます(過去会計)。過去の実績が評価されれば金融機関との取引がしやすくなるため、美しい決算書と評価されることを目指しましょう。

また、売上先や仕入先と好条件でビジネスを展開できる点も、美しい決算書を作るメリットだといえます。決算書の内容が良くない場合は、取引を渋られたり与信の枠を狭められたりすることがあるため注意が必要です。

ただし財務体質改善の経営努力と、財務諸表を理解して会計処理に工夫するための手間はかかります。そのため、今まであまり意識していなかった方は大変に感じるかもしれません。

そこで次章以降では、美しい貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)を作成する方法を紹介します。

美しい貸借対照表(BS)とは?「利益剰余金」を意識しよう

——美しいBSとは、どのような状態のものを指すのでしょうか?

貸借対照表で金融機関から主に見られるのは、自己資本比率(純資産の割合)です。純資産は以下の3つで構成されます。

  1. 資本金(株主から集めてきたお金)
  2. 利益剰余金(自力で稼いだお金)
  3. 負債(他人から借りてきたお金)

これらの中で返済不要のお金が、資本金と利益剰余金です。中小企業の経営者の多くは、利益剰余金は会社が創業時から稼ぎ出して残してきたお金だということを、忘れてしまいがちです。資本金を増やすには限界がありますので、利益剰余金を積み増すことを意識しましょう。

なぜなら、利益剰余金は返済不要で利息もつかない一番安定した「お金」だからです。中小企業のほとんどが、株主が社長か親族というケースだと思われます。「利益の何%を内部留保にする」というルールは決めず、問題なければ会社が安定するまで、できるだけ多くのお金を内部留保に回すべきでしょう。

また中小企業の場合、自己資本比率は高ければ高いほど安心です。具体的には自己資本比率50%を目指すとよいでしょう。ただし、自己資本比率が高くても現預金が少ない場合は、資金繰りが悪化する恐れがあります。

自己資本比率だけではなく、キャッシュの保有率も中小企業は気にするべきです。よってキャッシュの保有率は30%を目指せると、倒産する心配も少なくなるでしょう。


——借入金月商倍率はどれくらいの水準が適正ですか?

借入金月商倍率に関しては、一般的には月商の3か月以内が適正で、6か月までが限度、12か月を超えると危険といわれていますが、私は違うと思っています。借入金が多いか少ないかはキャッシュ・フロー(CF)でチェックするべきです。

なお借入金月商倍率とは、借入金が月間売上高の何倍あるかを示すもので、借入金の返済余力を見る指標です。

借入金月商倍率=借入金÷(売上高÷12

上記計算式で求められ、月商の3倍までが健全な借入限度と考えることが一般的といわれています。

特に注目するべきポイントはフリーキャッシュ・フローです。フリーキャッシュ・フローが十分あれば、財務活動によるキャッシュ・フローの借入金返済へ充てられ、キャッシュと借入金のバランスが改善されます。

フリーキャッシュ・フローよりも借入返済額が多い場合は、会社の資金を圧迫してしまいますので、リスケジュールなど何らかの方法をとらなければ資金繰りが困窮するでしょう。フリーキャッシュ・フローは1年間で返済できる限度といえるため、借入金の限度額は貸借対照表ではなく、キャッシュ・フローで計算することが正しい方法です。


——フリーキャッシュ・フローはどのように確認すればよいですか?

フリーキャッシュ・フローは以下の計算式で算出できます。

フリーキャッシュ・フロー=営業キャッシュ・フロー+投資キャッシュ・フロー

こちらの図のように営業キャッシュ・フローがプラスで、投資キャッシュ・フローに充ててもキャッシュに余裕があれば、借入金の返済にフリーキャッシュ・フローが充てられる状態です。フリーキャッシュでの返済によって借入金の残高が減り、現金が増加していく状態が理想的であり、財務体質がどんどん改善されます。

また、貸借対照表を前期のものと比較することで、どのようなお金の流れがあったかが簡単に確認できるでしょう。

美しい損益計算書(PL)とは?「売上高利益率」を意識しよう

——美しい損益計算書とは、どのような状態のものを指すのでしょうか?数値的な特徴を教えてください。

まず売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期利益それぞれの特徴について説明します。

  • 売上総利益:売上から売上原価を差引いた利益
  • 営業利益:本業でどれだけ利益を残せたか
  • 経常利益:金融費用差引後で残せた利益(経常的に稼げる力を示す)
  • 税引前当期利益:特別利益と特別損失を計算に入れた、当期に残せた利益
  • 当期純利益:法人税などを差し引いた税引後の最終利益(その年に残せた最終利益)

それぞれの金額だけを見るのではなく、利益率を見ることが大切です。先ほども説明しましたが、利益率の中では特に売上高経常利益率が重要になります。

売上高計上利益率は、一概に「何%が良い」という基準はありません。業種によって水準が変わるからです。業種別の目標値は以下のようになっているため、参考にしてみてください。

「うちの会社の決算書美しくないかも……」そんな中小企業がとるべき改善策

——決算書を美しく見せるコツやテクニックがあれば教えてください。

まず、損益計算書から説明します。

金融機関は営業利益、そのほかのステークホルダーは経常利益を重視するため、この部分をきれいに見せることが大切です。今年だけ特別に発生した費用は特別損失に計上することで、営業利益と経常利益を増やせる可能性があります。

例えば貸倒損失、特別修繕費、在庫廃棄損、固定資産除却損なども特別損失です。税理士に丸投げすると、通常の費用に紛れてしまうこともあります。よって、経営者自身で特別損失に計上できる科目が紛れていないか確認しましょう。

また、過度な節税対策をすることもおすすめできません。基本的に所得を下げる節税対策は決算書が実際より悪く見え、金融機関からの評価も下がるからです。節税のために利益を減らして内部留保が減れば、会社の財務状況が悪くなったときに一気に倒産してしまう可能性があります。中小企業は節税よりも、会社の自己資本を積み上げることに注力するべきです。

役員報酬の決定も、法人と個人のバランスを考える必要があります。会社の節税のために経営者が多めに役員報酬をとれば、結局のところ個人の所得に対して課税されてしまうからです。普段の役員報酬はある程度の金額に設定しておき、退職金を多めに設定したほうが、退職所得の控除制度も使えるためお得だといえます。


——損益については期中に調整することも可能かと思いますが、いかがでしょう?

交際費など、多すぎる経費は削ることで損益の調整ができます。赤字にしたくないのであれば、期中の損益状況を細かく確認するようにしましょう。


——貸借対照表についてはいかがでしょうか。

貸借対照表はスリムな経営が評価されます。仮払金や貸付金などが大きいと問題視されるため、決算前には清算して、余計な資産負債を減らしてコンパクトにすることが必要です。

また、必要のない固定資産は売却し、リースなどを利用することで貸借対照表のスリム化ができます。貸借対照表をコンパクトにすれば、先ほども説明した総資本経常利益(ROA)も改善され、決算書も美しくなるでしょう。

決算書を美しくすることで、金融機関やステークホルダーの評価もよくなります。また、美しくしようと経営者が意識することで、財務面の改善点が見えて会社経営の舵が取りやすくなる点もメリットです。税理士に丸投げするのではなく、経営者自身がさまざまな視点から決算書の内容を確認し、より良い経営ができるように活かしていきましょう。

弥報編集部
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