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「物を売るバカ」著者に聞く ピンチの時こそ言葉の力で乗り切ろう

2021.06.15

著者:弥報編集部

監修者:川上 徹也

度重なる緊急事態宣言の発令によって、依然として多くの企業が苦境に陥っています。

売上回復へのヒントを得てもらうために、前回はベストセラー「物を売るバカ」著者であり、ストーリーブランディングの第一人者である川上 徹也氏に、「売上アップにつながる!『物を売るバカ』著者に聞く『ストーリー(物語)を売る』方法」というテーマで、モノではなくストーリーを売る重要性についてお話を伺いました。

そして2回目となる今回は、大きなピンチを「言葉の力」で解決した事例と、人の心を動かす言葉を生み出す方法について解説していただきます。

言葉は会社のピンチも救う力を持っている

コロナ渦で多くの会社や店が苦境に陥っています。どうすれば先の見えない状況を乗り切っていけるのでしょう?そんなピンチの時にこそ「言葉の力」が重要です。

今まで売れなかった物がネーミングを変えたり、キャッチコピーを変えたりしただけで売れることはよくあります。今回は大きなピンチを「言葉の力」で解決した事例と、「言葉を強くする方法」についてお伝えします。

壊滅的な大ピンチ、あなたならどうする?

想像してみてください。あなたがりんご農家だったとします。丹精込めて育ててきたりんごが、収穫直前に台風によってほとんどが地面に落ちてしまった。落ちたりんごは市場での商品価値ゼロ。加工品にするにしても二束三文。

あなたなら、どうしますか?

そのまま今年は収入ゼロだとあきらめますか?それとも、何かできないかと頭を使いますか?

これは実際にあった話です。今から30年前の1991年9月28日朝、最大瞬間風速50メートル以上の台風19号が青森県を直撃し、津軽地方に甚大な被害をもたらしました。中でもりんご農家は、まさにこれから収穫を迎える時期でした。99%のりんごが枝から落ちてしまった壊滅的な被害です。ほとんどの農家は、このまま続けていけるかどうか悩むくらい途方にくれました。

そんなとき、あるりんご農家からアイデアが出ました。それは「言葉の力」を使って大逆転する方法です。さて、どんな「言葉」を使ったのでしょう?

「空気コピー」でなく「強い言葉」を

そのりんご農家のアイデアと言葉はのちほど紹介するとして、まずは「言葉を強くする方法」についてお話しましょう。

当たり前ですが、どこにでもある「平凡な言葉」を書いても、だれの注目も浴びません。人の心を動かすためには「強い言葉」である必要があります。「強い言葉」を使うと、受け手の心に刺さります。そうなると、受け手がその商品を買いたくなるといった行動に繋がる可能性が大きくなるのです。

言葉を強くする方法はいろいろあります。最低でも、以下の2つのことを意識してみてください。それだけでも言葉は強くなります。

  1. 常套句をさける
  2. 言葉の組み合わせを考える

1.の「常套句」とは、そのジャンルでよく使われる言葉です。例えば、食品や料理などを紹介する際、最も多く使われる常套句とはなんでしょうか?

それは「こだわり」「厳選した」などの言葉です。とても便利なフレーズですし、十数年前であれば一定の効果がありました。しかし現在においては、どこでも使われているため、お客さんに何の印象も残しません。コンビニに行けば「こだわり」というコピーが書かれた商品であふれています。

私は「こだわり」「厳選した」などの常套句を「空気コピー」と呼んでいます。文字が書いてあってもなくても変わらないからです。

まずはチラシ・POP・メニューなどで商品を紹介する場合、このような「空気コピー」を使わないと決意しましょう。すべてはそこからです。きっと大変だと思います。しかし、そうやって脳に汗をかきながら考えることで「強い言葉」が生まれてくるのです。

言葉を組み合わせ化学反応を起こす

続いて2.の「言葉の組み合わせ」を考えてみましょう。

「強い言葉」といっても、普段使わないような特別な言葉を使うわけではありません。平凡な言葉であっても組み合わせ次第で、化学反応によって言葉が強くなり印象的になることがよくあります。

例えば、英会話学校のNOVAのキャッチコピーは「駅前留学」です。「駅前」も「留学」も平凡な言葉ですが、普通では合わない言葉だったため化学反応が起きました。このコピーはもう30年以上も使われています。

新国立競技場を設計した隈 研吾氏のモットーは「負ける建築」です。周囲の環境から目立ちすぎない、調和する建築という意味だと思います。しかし「調和する建築」では誰の心にも残りません。普通では組み合わされることのない「負ける」と「建築」を組み合わせたからこそ、強いフレーズになっているのです。

実は冒頭のりんご農家が使ったものも、この「言葉の組み合わせ」で化学反応を起こすという手法でした。

「落ちないりんご」神社で祈祷して受験生のお守りに

ある町のりんご農家が出したアイデアは以下のようなものです。

「ほんのわずかではあるが、落ちないで木に残ったりんごがある。このりんごに別の名前をつけ、落ちないことを付加価値に売るのはどうだろう」

その町の生産者たちはワラにもすがる思いで、そのアイデアにかけました。そうして残ったりんごに、以下の名前をつけました。

「落ちないりんご」

実際それらのりんごは、50メートルの強風に耐えて落ちなかったりんごです。そして「落ちないことを喜ぶのは誰だろう?」と考えたときに、受験生が思い浮かびました。そこから「全国の神社で受験生向けの縁起物として販売してみよう」というアイデアが生まれたのです。

化粧箱に入れて合格という朱印を押し、協力してくれた全国の神社でご祈祷してもらい、1個1,000円で販売しました。受験生やその親に大人気で、用意した落ちないりんごはあっという間に完売したそうです。結果としてその町のりんご出荷量は大きく減ったものの、販売額ではそれほど落ち込まずにすみました。

もちろんこれは、苦境に陥ったりんご農家が頑張っているという物語が背景にあったからこそで、神社も協力し、多くの人が買ったという部分もあったのでしょう。しかし黙って何もしなければ、ただの「傷もののりんご」でした。その価値を大きく変えたのは「1行の言葉」です。

あなたも、もし今何かピンチを抱えているとしたら、「言葉の力」で解決できないか考えてみましょう。自分で考えることができたら原価はゼロです。

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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

川上 徹也(コピーライター 湘南ストーリーブランディング研究所代表)

大手広告代理店勤務を経て独立。企業や団体の「理念」を1行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られている。著書『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)など、海外にも多数翻訳されている。

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