新型コロナウイルス感染症の影響により、売り上げが前年同月比で50%以上減少している事業者に対して現金を給付する「持続化給付金」について、2020年5月1日より申請が開始されました。
今回はこの「持続化給付金」とはどのような制度なのか、どういう事業者が対象となるのか、どのくらい給付されるのか、どうやって申請するのか、などについて財務・資金調達コンサルタントの吉田学氏がわかりやすく解説いたします。
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執筆者:吉田 学(財務・資金調達コンサルタント) 株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。 |
目次
Q.持続化給付金とは? 対象となる事業者は?
A.持続化給付金とは、新型コロナの拡大による営業自粛等により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧とするために創設された事業全般に広く使える給付制度です。事業収入が前年同月比50%以上減少した事業者について、中堅・中小企業は上限200万円、個人事業主は上限100万円の範囲内で、前年度の事業収入からの減少額が給付されます。
具体的には、新型コロナの影響により売上が前年同月比で50%以上減少している事業者であり、資本金10億円以上の大企業を除く、中堅・中小法人、個人事業者となっています。また、医療法人、農業法人、NPO法人など、会社以外の法人についても、商工業に限らず幅広く対象となります。
なお、申請要領によりますと「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する性風俗関連特殊営業、当該営業に係る接客業務受託営業を行う事業者」や「給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断した者」は給付対象外となっています。
【追記】
新たに「主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等」および「2020年1月から3月に創業した中小法人等・個人事業者等」が持続化給付金の対象者として追加されています。詳細はこちらの記事をご確認ください。
【続報!持続化給付金】対象者拡大につき要件をもう一度チェックしよう
Q.どれくらい給付される? 持続化給付金の計算方法は?
A.支給額は最大で法人は200万円、個人事業者は100万円となっています。ただし、昨年1年間の売上からの減少分が上限となっています。
<売上減少分の計算方法>
前年の総売上(事業収入)―(前年同月比▲50%月の売上げ×12ヶ月) |
なお、前年同月比▲50%月の対象期間に関しては、2020年1月から2020年12月のうち、2019年の同月比で売上が50%以上減少したひと月について、事業者が選択することになっています。これを「対象月」といいます。
また、前年の総売上(事業収入)については、個人事業主の場合は「2019年の年間事業収入」、法人の場合は「対象月の属する事業年度の直前の事業年度の年間事業収入」となっています。たとえば、3月決算の法人が対象月を2020年2月とした場合、前の事業年度は2018年4月から2019年3月となります。
以下、具体的な事例にてご説明いたします。
【ケース1 前年の総売上(事業収入)が600万円の個人事業主】
<2019年および2020年の実績>
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
2019年 | 50万 | 50万 | 50万 | 50万 | 50万 |
2020年 | 55万 | 50万 | 40万 | 25万 |
・2020年4月に前年同月比▲50%以上の減少となった。
・よって、600万円-(25万円×12か月)=300万円
・売上減少分は「300万円」と算定されますが、個人事業主は100万円が上限なので、給付額は「100万円」となります。
【ケース2 前年の総売上(事業収入)が1,200万円の法人】
<2019年および2020年の実績>
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
2019年 | 100万 | 100万 | 100万 | 100万 | 100万 |
2020年 | 100万 | 110万 | 80万 | 50万 |
・2020年4月に前年同月比▲50%以上の減少となった。
・よって、1,200万円-(50万円×12か月)=600万円
・売上減少分は「600万円」と算定されますが、法人は200万円が上限なので、給付額は「200万円」となります。
Q.創業したばかりで2019年の実績がない場合も対象になる?
A.2019年1月から12月までに新規開業した事業者や法人を設立した場合、対象月の月間事業収入が、2019年の月平均の事業収入に比べて50%以上減少していれば、特例が適用されます。特例の算定式は以下の通りです。
給付額=(2019年の年間事業収入÷2019年の開業後月数 ×12)-(対象月の月間事業収入×12) |
※給付額(上限:個人100万円、法人200万円)
※2019年の開業後月数(開業した月は、操業日数にかかわらず、1か月とみなす)
たとえば、2019年10月に開業して、2019年の事業収入合計が120万円(月平均の事業収入40万円)の個人事業主がいたとします。2020年3月を対象月とし事業収入が20万円の場合、50%以上減少なので対象となります。
給付額を計算すると
(120万円 ÷3か月 ×12ヵ月) -(20万円 ×12ヵ月)=240万円
となりますが、個人事業主ですので給付額は上限の「100万円」となります。
Q.申請期間や申請方法は?
A.持続化給付金は令和2年度補正予算の成立翌日である2020年(令和2年)5月1日から受付を開始しました。申請期間は2021年1月15日まで(※2021年2月15日まで延長となりました)となっています。
申請方法についてですが、原則として持続化給付金の申請用ホームページからの電子申請(オンライン申請)になります。必要に応じて、感染症対策を講じた上で完全予約制の申請支援(必要情報の入力等)を行う窓口も順次設置されます。なお、申請にあたってはGビズIDを取得する必要はありません。
申請手順は以下の通りです。
- 持続化給付金ホームページへアクセスします。
- 申請ボタンを押して、メールアドレスなどを入力(仮登録)します。
- 入力したメールアドレスに、メールが届いていることを確認して(本登録)します。
- ID・パスワードを入力すると「マイページ」が作成されますので、基本情報、売上額、口座情報を入力します。
- 必要書類を添付します。
申請内容については、持続化給付金事務局が確認します。万が一、申請に不備があった場合はメールとマイページへの通知で連絡が入ります。なお、通常2週間程度で、給付通知書を発送して、登録された口座に入金されます。
Q.申請に必要な書類は?
A.申請するにあたり以下の証拠書類等の提出が必要となります。スキャンした画像だけでなく、デジタルカメラやスマートフォン等で撮影した写真でも提出可能です。細かな文字が読み取れるようきれいな写真の添付を心掛けてください。(各データの保存形式はPDF・JPG・PNGと指定されています)
【個人事業主】
書類 | 説明 |
確定申告書類(青色申告) |
・確定申告書第一表(1枚) ・所得税青色申告決算書(2枚) ※少なくとも、確定申告書第一表の控には収受日付印が押されていること |
確定申告書類(白色申告) |
・確定申告書第一表(1枚) ※収受日付印が押されていること |
2020年分の対象とする月(対象月)の売上台帳等 |
・対象月の売上台帳等 |
口座情報 |
・金融機関名、金融機関コード、支店名、支店コード、口座種別、口座番号、口座名義人が確認できるもの |
本人確認書類の写し | ・本人確認書類(運転免許証、個人番号カードなど) |
【法人】
書類 | 説明 |
確定申告書類 |
・確定申告書別表一(1枚) ・法人事業概況説明書(2枚) ※少なくとも、確定申告書別表一の控えに は収受日付印が押されていること |
2020年分の対象とする月(対象月)の売上台帳等 |
・対象月の売上台帳等 |
口座情報 | ・金融機関名、金融機関コード、支店名、支店コード、口座種別、口座番号、口座名義人が確認できるもの |
2020年分の対象とする月の売上台帳等については、フォーマットの指定はされていません。会計ソフトから抽出した売上データ、エクセルで作成した売上データ、手書きの売上帳のコピーなどでも可能です。なお、書類の名称が「売上台帳」でなくても構いませんが、提出するデータが対象月の事業収入であることを確認できる資料を提出してください。(2020年〇月と明確に記載されている等)
弥生製品を利用した準備方法はFAQをご確認ください。
<やよいの青色申告/弥生会計>「持続化給付金」の申請に必要な情報」
<やよいの青色申告 オンライン>「持続化給付金」の申請に必要な情報」
<やよいの白色申告 オンライン>「持続化給付金」の申請に必要な情報」
<弥生会計 オンライン> 「持続化給付金」の申請に必要な情報」
Q.その他、注意点や問い合わせ先は?
A.最後に持続化給付金にまつわる注意点などについて解説します。
1.不正受給時の対応について
提出された証拠書類等について、不審な点が見られる場合、調査が行われる場合もあります。調査の結果によって不正受給と判断された場合、次の措置を講じられます。①給付金の全額に、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年3%の割合で算定した延滞金を加え、これらの合計額にその2割に相当する額を加えた額の返還請求。②申請者の法人名等を公表。不正の内容が悪質な場合には刑事告発。
十分に注意してください。
2.確定申告書類を提出できない場合
2019年分の確定申告の義務がない場合やその他相当の事由により提出できない場合は、2019年分の市町村民税・特別区民税・都道府県民税の申告書類の控えを提出するようにしてください。詳細については、申請要領にてご確認ください。
3.持続化給付金の詳細について
持続化給付金の詳細や不明な点などについては、「持続化給付金」事務局ホームページにて確認してください。申請される事業者の方は、必ず申請要領を精読してください。申請要領は下記のホームページからダウンロードすることができます。
4.第二次補正予算に基づく拡充について
なお、2020年6月29日より、第二次補正予算成立に基づいて、下記対象者の方の電子申請の受付を開始しました。
- 主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等向け
- 2020年1月〜3月に創業した中小法人等・個人事業者等向け
これまでは対象となっていませんでしたが、現在は対象となっています。
5.相談ダイヤルについて
持続化給付金の不明な点については、下記にご相談するようにしてください。なお、今回は「LINEでのお問い合わせ」も可能となっています。本制度は、過去に事例のない給付金制度ですので、担当窓口に問い合わせるのが最も正確な回答を入手することができると思われます。
・持続化給付金事業 コールセンター
フリーダイヤル 0120ー115ー570
IP電話等 03-6831-0613(通話料がかかります)
LINE ID:@kyufukin_line
受付時間は【5月・6月】全日8:30~19:00【7月】日曜日~金曜日8:30~19:00(土祝日を除く)【8月以降】日曜日~金曜日8:30~17:00(土祝日を除く)となっています。
【申請はこちらのページから】
・「持続化給付金」事務局ホームページ
※本記事の情報は2020年5月1日時点のものとなります。最新の情報は経済産業省「持続化給付金」ホームページもしくは「持続化給付金」事務局ホームページを確認するようにしてください。
※新たに「主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等」および「2020年1月から3月に創業した中小法人等・個人事業者等」が持続化給付金の対象者として追加されています。詳細は【続報!持続化給付金】対象者拡大につき要件をもう一度チェックしようをご確認ください。
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