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会社にふさわしい1人を採用するなら、広告ではなく「狭告」で!【小さくても最強の会社をつくる 人材戦略講座】

企業の求人において数百人を一気に採用するような大企業と違って、中小企業の採用はせいぜい数人、あるいは1人ということもあります。

万人にアピールするなら最大公約数的なメッセージを打ち出す必要がありますが、自社にふさわしいたった1人に届けばいいのなら、内容を絞り込んだ極端なメッセージを考えてみてもいいでしょう。

今回は求人の「広告」戦略ならぬ「狭告」戦略についてお伝えします。

執筆者:田中 和彦

株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、リクルートに入社し、4つの情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

1万人に届けるより、たった1人に響くメッセージを

中小企業の人材獲得で重要なことの1つが「メッセージの打ち出し方」です。求人サイトに広告を出すにしても、会社のウェブサイトに採用ページを設けるにしても、自社のアピールポイントをメッセージとして打ち出す必要があります。

この打ち出し方によって、採用が成功するかどうかが決まってくるといっても過言ではありません。ここで訴求する対象を明確に絞り込むことが、優秀な人材獲得に大きな影響を及ぼします。

さて、いきなり話はガラリと変わりますが、数年前に私の知人が中古のマンションを買って大規模なリフォームをしました。

部屋を仕切る壁という壁を取り払い、リビングも寝室もキッチンも、どこからも丸見えという風変わりで大胆なリフォームです。「自分の家族が一番住みたい間取りにしたらこうなった」と、子どもがまだ幼いことから思いついたそうです。

不動産仲介業者の担当者は驚き「こんな間取りでは、いざ売るときに売れないから、もう少し普通のリフォームにしたらどうですか?」とアドバイスしてきたそうですが、知人は自分の思いを貫きました。

数年後、子どもが大きくなってきたのでマンションを売りに出したところ、すぐに問い合わせがあり、内覧後に即決で売れたそうです。しかもマンション取得時の価格にリフォーム代を上乗せした金額よりもだいぶ高く売れたというではありませんか。即決で購入した人は「こんなマンションが理想で、ほかではなかなか探せなかった」と笑顔で話していたそうです。

つまり最大公約数的な万人受けする間取りは、多くの人たちの購入対象になり得る半面、競合物件も数多く存在するため、さほど強い印象は残せません。逆に思い切り特徴のある物件は万人には評価されなくても、ハマる人には強烈にアピールできるわけです。

マンションの購入者はたった1人(あるいは1組、1家族)ですから、売りたい自分と同じ考え方、同じ嗜好の相手にだけ訴求できればいいのです。

なぜこんな話をしたのかというと……もうおわかりですよね。中小企業の人材採用もまったく同じことが言えるからです。数百人も採用する大企業のように広くアピールする必要はなく、本当に入社してほしいたった1人に響けばいいのです。

これは恋愛や結婚にも似ています。何万人ものファンを対象とするアイドルになるわけではありませんから、美男美女でもなくスタイルが抜群にいいわけでなくとも、ありのままの自分を好きになってくれるたった1人の相手を見つけ出せばいいのです。

「広告」ではなく、ピンポイントで訴求する「狭告」戦略

ピンポイントで届いてほしい人だけに届けばいい広告の例といえば「尋ね人広告」でしょう。

『浩之 父危篤すぐ帰れ 母』という広告は、「浩之」という名前の人以外には他人事の内容です。しかし、もし何かしらの事情で家族と音信不通の「浩之」という人が見れば、この広告に反応するはずです。

広告とは読んで字のごとく、不特定多数の人たちに広く告げることです。しかし尋ね人広告は、そういう点では「広告」ではなく「狭告」だと言えます。訴求する相手を選り分ける名指し広告と言ってもいいでしょう。

かつて私が転職情報誌の編集長を務めていた頃、こんな求人広告を掲載したことがあります。

『6KVの変電所のシーケンスのわかる人』

「KVはキロボルトかな?」くらいは文系出身の私にも理解できますが、シーケンスについては想像もさっぱりつきません。でも、それでいいんです。この会社にとって私のような人材は完全に対象外なわけですから。

逆に「6KVの変電所のシーケンス」にピンと来た人は「あ、自分を求めている会社が世の中にあるんだ」と、この広告に間違いなく目を留め、興味を持つはずです。その会社からすれば、関心を持ってくれる人こそ欲しい人材なわけですから、広告もその人にだけ届けばいいのです。

『大きな組織で多くの仲間と世界を舞台に働きませんか?当社ではあなたのために素晴らしい環境や制度を用意しています』

これは、いかにも大企業が打ち出しそうなメッセージです。この手の広告に興味を持つ人は、中小企業には目もくれないかもしれません。

他方、次も実際にあった中小企業の求人広告のメッセージです。

『求む! おさまりきれない人。求む! 出る杭』

大きな組織の歯車にはなりたくない人に強く響く内容です。大手志向・安定志向の人には響かないと思いますが、それでいいんです。中小企業が求めているのは、ベンチャースピリットにあふれる人材なのですから。

ネガティブ情報も、伝え方次第でアピールポイントに

MEN WANTED for Hazardous Journey.
Small wages, bitter cold, long months of complete darkness, constant danger, safe return doubtful.
Honor and recognition in case of success.
Ernest Shackleton

求む男子。至難の旅。
僅かな報酬、極寒、暗黒の長い日々、絶えざる危険、そして、生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る。
アーネスト・シャクルトン

これは「世界一有名な求人広告」と呼ばれており、人類初の南極点到達にチャレンジしたアーネスト・シャクルトンが、1914年に新聞に掲載した乗組員募集の広告です。前半はネガティブ情報のオンパレードです。しかし、それが嘘偽りのない情報であるからこそ、成功したときに得られるものは大きいと訴えています。この求人広告には応募が殺到したそうです。

さあ、ここまで読んでいただいた勘の良い中小企業の経営者なら、どういうメッセージを打ち出せば本当に欲しい人材に響くのか、そろそろ頭の中に自社のアピールポイントが浮かんできているのではないでしょうか。

中小企業と大企業を比較すると、制度面、環境面、待遇面など、中小企業に足りない要素は数え上げればきりがありません。制度・環境・待遇を大企業並みにしようとしても、そもそも現実的ではないのです。

むしろ足りない面は応募者に正直に伝えたうえで、中小企業だからこそ大企業には絶対にマネできない点を訴求ポイントとすればいいのです。

中小企業ならではの「特徴」が、応募者の心を揺さぶる

次も実際の求人広告です。応募数は多くなかったものの、応募者の熱量は相当高かったそうです。

「うちの社屋はボロいわよ。制度も未整備だし、正直な話、給料もそこそこかな。でもね、社長の社員に対する愛情はほかの会社に負けないわよ。新人を一人前に育てようとする情熱は、事務員歴30年の私が保証するから。人情味あふれる温かい会社で一緒に働きたい人、ぜひ面接に来て、自分の目で確かめてちょーだい。待ってるね」

事務員歴30年の女性が語る求人広告ですが、大企業の合理的かつクールな(殺伐とした?)ところが苦手な人には「愛情・育てる・情熱・人情味・温かい」というキーワードが、ビシビシ刺さるに違いありません。

この広告を見て何も感じない人や「ダサッ」と切り捨てるような人は、会社側から願い下げてもいいと思います。

皆さんが経営する会社の「何」が、たった1人の心を揺さぶるのか。

大企業には絶対にない、中小企業ならではの「特徴」が必ずあるはずです。万人の心を揺さぶる必要はありません。会社のアピールポイントを探し出し、打ち出すことが、本来採用すべきたった1人と出会うために最も重要なことなのです。

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田中 和彦(たなか かずひこ)/ 人材コンサルタント
著者:田中 和彦(たなか かずひこ)/ 人材コンサルタント
株式会社プラネットファイブ代表取締役。人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、リクルートに入社し、4つの情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

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