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日本政策金融公庫の融資制度はどれがおすすめ?基本のものから業績悪化でも活用できるものまで

2020.02.20

中小企業や小規模事業者であれば融資を受ける際に「日本政策金融公庫」をすでに利用している方も多いかもしれません。しかしながら、どういう融資制度があって、どうやって活用すればよいのか?について詳しく知っている事業者は少ないことでしょう。

前回の記事「日本政策金融公庫は活用すべき?かしこく融資を受ける3つのポイント」では融資制度の基礎について解説しましたが、今回はより具体的に、スモールビジネス事業者の皆さんにぜひ利用してほしい融資制度をピックアップして説明します。

「一般貸付」は、ほとんどの業種で利用できる融資制度

現在、日本政策金融公庫(国民生活事業、以下「日本公庫」)にはどれくらい事業者向けの融資制度があるかご存じでしょうか。日本公庫の融資制度一覧ページを確認すると、事業者向けの融資制度は「44」もありました(2020年1月時点)。

これだけの融資制度があると、いったいどの制度をどのように活用すればよいのか悩んでしまいますよね。今回は、最低限知っていてほしい融資制度に限定して、活用のポイントやメリットなどについて紹介します。

まず基本として、知っておきたいのが「一般貸付」です。ほとんどの業種の中小事業者が利用することができます。

一般貸付は、日本公庫(国民生活事業)の融資を利用する際の最も基本的な制度になります。事業者なら誰でも利用できる“入口”的な融資制度だと理解してくださって大丈夫です。この一般貸付に対して、特別な状況に応じて利用できる制度が他にも多々あるというのが日本公庫の融資制度の体系になっています。通常の一般的な運転資金や設備資金などは、基本的には一般貸付を利用することになります。

担保・保証人については「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」となっていますが、要件によって「担保を不要とする融資」なども用意されています。

また「金融業、投機的事業、一部の遊興娯楽業などの業種の方は利用することができない」とされています。これは日本公庫の融資制度の基本的な考え方でもありますので、ぜひ覚えておいてください。例えば、法人成りや法人を新設する際に事業目的として、登記簿謄本に「金融業」などを記載してしまうと、それだけで融資対象として認められなくなる可能性がありますので十分に注意してください。

一般貸付

資金の使い道運転資金設備投資特定設備投資
融資限度額4,800万円7,200万円
返済期間5年以内(特に必要な場合7年以内)
<うち据置期間1年以内>
10年以内
<うち据置期間2年以内>
20年以内
<うち据置期間2年以内>
利率(年)基準利率
使いみち、返済期間または担保の有無によって異なる利率が適用される
担保・保証人相談ベースとなる

参照:一般貸付(日本政策金融公庫)

顧問税理士のいる事業者なら「中小企業経営力強化資金」もチェック!

続いて「中小企業経営力強化資金」は、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている方が対象となります。この「認定経営革新等支援機関」(認定支援機関)とは、国に登録されている中小企業支援の専門家のことをいいます。多くの税理士が登録していますので、まずは顧問税理士に問い合わせてください。そして、登録されているようだったら、支援をお願いしてみましょう。

本制度は、認定支援機関の指導が入るため、他の制度よりやや審査が甘いといわれています。年々、その基準が厳しくなっている(2020年1月現在)と感じますが、とてもありがたい制度です。

また、一定の要件を満たすと金利優遇を受けることもできます。さらに2,000万円以内ままでは無担保・無保証人です。顧問税理士のいる事業者の場合は、本制度の利用を最優先して検討することをおすすめします。

中小企業経営力強化資金

利用できる方次のすべてに当てはまる方
1、経営革新又は異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方
2、自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている方
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金20年以内
<うち据置期間2年以内>
運転資金7年以内
<うち据置期間2年以内>
利率(年)1. 2,000万円以内で無担保・無保証人にて利用→特別利率 S
2. 前1以外→基準利率
※「中小企業の会計」を適用・適用予定の方→基準利率-0.1%

参照:中小企業経営力強化資金(日本政策金融公庫)

売上が下がってしまったら「セーフティネット貸付」を

一般的に「売上・利益が悪化すると融資を受けることが難しくなる」といわれています。しかし日本公庫には「セーフティネット貸付」という制度が3種類あります。本制度は業績などが悪化している事業者を対象としています。

例えば「経営環境変化対応資金」については、「売上高が前期または前々期に比べて5%以上減少している方」、「最近3ヵ月の売上高が前年同期または前々年同期に比べて5%以上減少しており、かつ、今後も売上減少が見込まれる方」などを対象にしています。売上が下がってしまったら、日本公庫のセーフティネット貸付を検討されてみてください。

セーフティネット貸付

融資制度経営環境変化対応資金金融環境変化対応資金取引企業倒産対応資金
利用できる方売上が減少するなど業況が悪化している取引金融機関の経営破たんなどにより、資金繰りに困難を来している方取引企業などの倒産により経営に困難を来している方
融資限度額4,800万円別枠4,000万円別枠3,000万円
融資期間設備資金:15年以内(3年以内) 運転資金: 8年以内(3年以内)設備資金:15年以内(3年以内) 運転資金: 8年以内(3年以内)運転資金: 8年以内(3年以内)

参照:融資制度一覧(日本政策金融公庫)

また、日本公庫では、大きな自然災害などが発生した場合に「災害貸付」「特別貸付」などが実施されます。もし、被災された場合は、速やかに日本公庫に相談してください。実際のところ、被災企業はとても借りやすいといえます。

その他、小規模事業者が知っておくべき融資制度

他にも、日本公庫には多くの融資制度があります。上記で取り上げた以外にもぜひとも知っておいてほしい制度については、以下の一覧表をご確認ください。

その他、おすすめの融資制度

融資制度対象者融資限度額
IT活用促進資金情報化投資を行う方7,200万円(うち運転資金4,800万円)
ソーシャルビジネス支援資金社会的課題の解決を目的とする事業を営む方など別枠7,200万円(うち運転資金4,800万円)
食品貸付食品関係の小売業・製造小売業または花き小売業を営む方で、店舗の新築・増改築、機械設備の導入、フランチャイズチェーンへの加盟などを行う方7,200万円
マル経融資(小規模事業者経営改善資金商工会議所、商工会または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている方であって、商工会議所等の長の推薦を受けた方2,000万円
小規模事業者経営発達支援資金経営発達支援計画の認定を受けた商工会議所・商工会から事業計画の策定・実施の支援を受け、持続的発展に取り組む小規模事業者の方7,200万円(うち運転資金4,800万円)

まずは「IT活用促進資金」ですが、情報化投資を行う事業者を対象としています。コンピュータやソフトウェアなどを購入する際に、他の制度でも設備資金として借りることができますが、一定の要件を満たせば本制度を利用することができます。

なお、情報化推進の一環のための弥生会計などの会計ソフト、またIoT導入や軽減税率対応のための設備なども対象となりますので、ぜひ日本公庫のホームページで要件を確認してみてください。本制度は、通常の設備資金より低金利で借りることができることもあるため、情報化投資の場合はおすすめです。

次に「ソーシャルビジネス支援資金」ですが、その名称の通りソーシャルビジネス事業を行う事業者を対象としています。一見、NPO法人向けの融資制度のように思われますが、株式会社でも要件を満たせば利用することができます。現在、日本公庫はソーシャルビジネス支援に相当な力を入れています。例えば、新規事業にソーシャルビジネス的要素があれば、本制度を利用することができるかもしれません。

ちなみに、ソーシャルビジネスとは、高齢者や障がい者の介護・福祉、子育て支援、地域活性化、環境保護など、地域や社会が抱える課題の解決に取り組む事業のことをいいます。一言でソーシャルビジネスを説明するのは難しいのですが、日本公庫の「社会的企業・NPO向けソーシャルビジネスお役立ち情報」がヒントになると思います。よかったら参考にしてみてください。

「食品貸付」については、主に「食料品小売業」を対象としています。また、資金使途としては、店舗の新築・増改築、機械設備の導入、フランチャイズへの加盟などの資金を対象としています。食料品関係のFC加盟(コンビニエンスストアなど)の際はよく利用されています。食品業界などへの事業進出などの際には検討してみてください。

そして、「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」及び「小規模事業者経営発達支援資金」ですが、これらの制度は、日本公庫と商工会議所や商工会等が連携して実施している融資制度です。特に「マル経融資」は、無担保・無保証人制度なので、ぜひ利用したいものです。

また、商工会議所や商工会などから指導を受けて申請するスキームになるため、「融資審査に通りやすい」という見方もできないわけでもありません。商工会議所や商工会などの会員になっている事業者は、(商工会議所や商工会等の)窓口に相談されてみてください。

このように日本公庫には多くの融資制度があります。事業者の皆さんがすべての制度を熟知することは非常に困難だと思われます。まずは、ここで取り上げた融資制度だけでも内容を知っておいてください。また、日本公庫に融資の相談・申請をされる前に、制度の選択や活用方法については、ひとまず「顧問税理士」に相談をしてみてください。そして、顧問税理士で対応できない場合は、できれば資金調達の専門家に相談されることをおすすめします。

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この記事の著者

吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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