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36年のブランクを経て「60歳で再スタート!」経理担当者物語

2019.01.24

著者:弥報編集部

普段は縁の下の力持ちとして、表舞台に出ることはあまりない経理のお仕事。けれど、よくよく話を聞いてみると実は面白い経歴を持っていたり、独自の働き方をしている経理さんもいるのです。そんな個性的な経理担当者にフォーカスを当てる「◯◯な経理担当者物語」。

第1回は、寿退社後に36年のブランクを経て60歳で再就職を果たし、現在では会社の看板娘兼お母さん的存在になっているMogic株式会社の三浦久美子さんをご紹介します。

60歳で「もう一度働きたい」とハローワークへ

「60歳になったときに、もう一度仕事がしたいと思ってハローワークへ行ったところ、紹介されたのがMogicでした。高校時代に取得した簿記2級に加えて、2003年ごろにパソコン教室へ通っていてWordとExcelは使えたので応募資格はクリア。しかも家から近いのでちょうどいいわ! と応募しましたが、今思えばよくぞ雇ってくださったなと思いますね(笑)。結婚前の2年間、経理の仕事をしていたとはいえ、そのあと36年間のブランクがあったわけですから」

三浦さんが勤めるMogic株式会社は、クラウドを利用したeラーニングサービスやスマホアプリなどの開発・提供を手がける企業。36年前の経理といえば帳簿に手書きの時代。パソコンの基本操作はできるとはいえ経理業務は初体験だったので、入社後しばらくは社長の隣の席でみっちり基礎を教わることに。

「WordとExcelの資格は持っていましたが、それらを仕事に活かす術を知らなかったのです。たとえば経理作業でスプレッドシートをどう使うかがわからないなど、持っている知識を現場の仕事にうまく活かせませんでした。数字自体は好きなので経理仕事を大変に思ったことはありませんが、パソコンを使った経理の実務に慣れるまでは、少し大変でしたね」

現在、バックオフィスを担当しているスタッフは3人。うち一人はデザイナーと兼務なので、実質的には三浦さんともう一人のスタッフで、経理に加えて総務、庶務、さらに採用まわりの仕事などもこなしているそうです。

現金支給だったころは、お給料袋に現金を入れるのが大仕事

三浦さんが最初に経理の仕事に就いたのは大学卒業後の昭和51年。神奈川県でスーパーマーケットをチェーン展開している会社に正社員として入社し、本部の経理事務職として働きはじめました。入社してしばらくの間は、給料日に社員全員分のお給料を袋に入れるのが大仕事だったといいます。

「当日、銀行からアタッシュケースでお給料が届くんです。それを私たち経理担当者が数えて、社員全員分の給料袋に分けていく。支店がいくつもあったのでお給料も何百人分。大きな部屋にざーっとお給料袋を並べて、そのうえに大きなお札から数円単位まで順に置いていき、最後に残りがなければOKというわけです」

当時はお給料が現金支給から銀行振り込みに変わる過渡期でした。

「私が入社してしばらくするとこの作業もなくなりましたから、今思えばいい経験ですね。店舗の売り上げ合計も、伝票の金額をひとつひとつ計算機で足していました。だから計算機を打つのは早かったですよ。そうでなければ仕事になりませんでしたから。ただ今の計算機は昔と数字の並びが変わってしまったので、使いづらいんです」

その会社を2年と少しで寿退社。当時はまだ女性は結婚したら会社を辞めるのが一般的で、三浦さんの先輩女性社員にも既婚者は一人もいなかったといいます。

「私の場合は、同居することになる主人の母が少し病弱だったこともあって、結婚後はずっと専業主婦をしていました」

「年の功」が、会社をうまく回す手助けに

36年という長いブランクの末に再就職をしてから4年が経ち、現在は64歳。社長を筆頭に社員の方々の年齢も比較的若く、さらに大学生のインターンも多く採用しているMogicのなかでは最年長です。

けれど、そんな年の差をまったく感じさせない若々しさと可愛らしさを持つ三浦さん。取材に同席してくださったバックオフィスのチーフによれば「今やMogicになくてはならない存在」だといいます。

たとえば美化活動としてスタッフのゴミ箱からゴミを集めるついでに、一人一人に声をかけてコミュニケーションを図ったり、取引先へ花などを贈る際の細かな心配りなど、「年の功」とも言える気遣いが、まだ若い会社にとってはとてもありがたいとのこと。インターンの面接後、担当者がその人の印象を三浦さんに聞く、通称“三浦チェック”などもあるのだとか!

頼りにされている一方で、コードレスの電話機を逆さまに取って「声が聞こえないのですが」と、天然ぶりを発揮するネタの宝庫でもある三浦さん。経理の仕事にとどまらず、存在そのものが会社をうまく回す潤滑油的な存在になっているようです。

働くことで、時代の流れを素肌で感じられる

勤務形態は、基本週3日出勤。ただし毎月、締め日近くは週に4日出勤して経理の処理をこなしています。とにかく経理でもっとも大切なのは「ミスがないこと」。備品の購入などでは、うっかり注文を間違えて同じものを2つ買ってしまったりすることもあるといいますが、経理の仕事でそれは絶対に許されません。

「売り上げあっての会社なので、経理に関してはミスがないように、きちんと時間をかけてきちんと処理していこうという意識は強いですね。毎月、会計事務所さんへ書類を提出した後、問い合わせがなければ、よし! 今月もミスはなかったね!と、もうひとりの経理担当者と喜んでます。それが経理仕事をしていて一番楽しい瞬間かもしれません」

三浦さんから見たMogicという会社は、常に新しいことをしている最先端の場所という印象だそう。

「会社にいると、今、世の中がどんな風に流れているのかということの一端がとてもリアルに感じられるんです。もちろん流れの全ては読み切れませんが、普通に家でニュースを見ているだけではわからない時代の流れを肌で感じられる。それがとても刺激的ですね」

社長は「いつまででもいていいですよ」と言ってくれているので、ボケないようにしなければ、と笑う三浦さん。

Mogic株式会社では「クラウド見積・納品・請求書サービス」Misocaを活用。

「Mogicのオフィスは上下移動が階段しかないので、足腰も鍛えておかないといけませんね。うちの会社には70代の経理がいるんですよ、と言ってもらえるのが目下の目標です」

すかさず「80代の経理がいます、を目指してください!」と同僚からの声がかかりました。

取材協力:Mogic(モジック)株式会社
2009年12月16日設立、従業員数 21名(2018年10月現在)
本社所在地 東京都練馬区 URL:http://www.mogic.jp

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弥報編集部

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