住宅借入金等特別控除申告書とは?書き方や住宅ローン控除などを解説

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

マイホームを購入したりリフォームをしたりして住宅ローンを支払っている人は、所定の要件を満たすと住宅借入金等特別控除を受けられます。住宅借入金等特別控除は住宅ローン控除とも呼ばれ、適用すると税負担を軽くすることが可能です。

住宅ローン控除は、1年目は納税者本人による確定申告が必要ですが、2年目からは「住宅借入金等特別控除申告書」を使って年末調整で手続きすることになります。そのため、年末調整の担当者は、住宅借入金等特別控除申告書について正しく理解しておく必要があるでしょう。

ここでは、年末調整で必要になる住宅ローン控除の手続きや、住宅借入金等特別控除申告書の書き方を、2023年(令和5年)以降の変更点と併せて解説します。

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住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームの購入やリフォームなどをした際、所定の要件を満たすと、ローン残高に応じた金額を所得税から控除できる制度で、「住宅ローン減税」とも呼ばれます。

住宅ローン控除を利用すると、新築住宅購入の場合は年末のローン残高の0.7%にあたる金額を、最大13年間、所得税から控除することができます。さらに、所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税からも控除が可能です。

住宅ローン控除の主な適用要件

住宅ローン控除の適用要件は、新築住宅と中古住宅で異なります。いずれも細かい適用要件が定められているため、あてはまるかどうかの確認が必要です。

新築住宅の場合

新築住宅の場合の主な適用要件は、下記のとおりです。

新築住宅の適用要件

  • 自らが居住するための住宅
  • 住宅の床面積が50平方メートル以上
  • 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下(2023年末までに建築確認を受けた新築物件は、合計所得金額1,000万円以下の場合に限り、床面積40平方メートル以上に要件が緩和)
  • 住宅ローンの借入期間が10年以上
  • 引き渡しまたは工事完了から6か月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること
  • 贈与された住宅ではないこと など

中古住宅の場合

中古住宅の場合は、新築住宅の要件に加え、主に下記のような適用要件が定められています。

中古住宅の適用要件

  • 建築後使用された住宅
  • 1982年以降に建築された住宅(新耐震基準に適合している住宅)
  • 住宅や土地が、生計を一にする親族などからの取得ではないこと など

住宅ローン控除はさまざまな条件を満たしていないと適用されないため、不明な場合は税務署や税理士などの専門家に相談をすることがおすすめです。

2022年度(令和4年度)の税制改革による住宅ローン控除の変更点

2022年度(令和4年度)の税制改正によって、住宅ローン控除に関する見直しが行われました。主な変更点は、下記のとおりです。

控除率が1%から0.7%へ引き下げ

住宅ローン控除の控除率が、年末時点のローン残高の1%から、0.7%に引き下げられました。改正前に比べると、控除額は少なくなったことになります。

控除期間が最大13年に延長

新築住宅を取得した場合の控除期間が、10年から13年に延長されました。なお、中古住宅は10年のまま変更はありません。

適用対象となる入居期限を4年間延長

住宅ローン控除の適用対象となる入居期限が4年間延長されました。従来、控除を適用するには、2021年12月末までに入居する必要がありました。改正後は、この入居期限が4年間延長され、2025年12月末までに入居すれば控除を受けられるようになりました。

所得要件の引き下げ

住宅ローン控除を適用できる人の所得要件が、「合計所得金額3,000万円以下」から「合計所得金額2,000万円以下」に引き下げられました。要件の範囲が狭くなり、所得が2,000万円を超える場合は控除が受けられなくなりました。

借入限度額が住宅性能・居住開始年別に変更

住宅ローン控除の対象となる借入限度額が、住宅性能や居住開始年別に細かく設定されるようになりました。新築住宅・中古住宅共に、環境性能が高いほど多くの控除を受けられます。また、控除限度額は、入居を開始した年によっても変わります。

住宅性能・居住開始年別の借入限度額は、下記のとおりです。なお、2024年1月以降に建築確認を受ける新築住宅で控除を受けるには、省エネ基準適合が必須条件となります。

住宅ローン控除の概要[2022年度(令和4年度)税制改正後]
新築/既存等 住宅の環境性能等 借入限度額 控除期間
2022~2023年
入居
2024~2025年
入居
新築住宅買取再販※1 長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 13年間※2
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅※2 3,000万円 0円※2
既存住宅
(中古住宅)
長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円 10年間
その他の住宅 2,000万円
  • ※1宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋。
  • ※2省エネ基準を満たさない住宅。2024年以降に新築の建築確認を受けた場合、住宅ローン減税の対象外(2023年末までに新築の建築確認を受けた住宅に2024~2025年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年間)。
  • 国土交通省「住宅ローン減税の概要について(令和4年度税制改正後)新規タブで開く

住宅ローン控除の申請手続き

初めて住宅ローン控除を利用する年は、確定申告が必要です。勤務先の会社で年末調整を行ったとしても、別途、従業員自身で確定申告が必要なので注意しましょう。確定申告を行う時期は、年末調整を終えて源泉徴収票が発行された後になります。

1年目は本人による確定申告

住宅ローン控除の1年目は従業員本人による確定申告が必要となり、確定申告書の他にさまざまな書類を提出します。確定申告の期限は、入居した年の翌年3月15日です。住宅ローン控除を初めて申請する際の主な必要書類は、下記のとおりです。

住宅ローン控除の確定申告における必要書類

  • 確定申告書
  • マイナンバーカードなど本人確認ができる書類の写し
  • 給与所得の源泉徴収票
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅ローンの年末残高等証明書
  • 建物・土地の登記事項証明書
  • 土地・建物の売買契約書や建物の工事請負契約書の写し

この他、必要書類は新築住宅、中古住宅、リフォームの場合などによって変わってくるため、上記はいずれも共通で必要となる書類となります。

2年目以降は年末調整による申請

住宅ローン控除の2年目以降の適用については、年末調整で手続きを行います。年末調整で手続きをするときに必要な書類は、下記のとおりです。

住宅借入金等特別控除申告書

住宅借入金等特別控除申告書は、初年度に確定申告をした人宛てに、対象年数分がまとめて税務署から送付されます。年末調整のときに必要事項を記載のうえ、会社などに提出する必要があります。

住宅ローン年末残高証明書

住宅ローン年末残高証明書は、その年の年末時点での住宅ローン残高を証明するための書類で、金融機関から発行されます。一般的には「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」と記載されていることが多いですが、金融機関によっては名称が違うため確認が必要です。住宅借入金等特別控除申告書と併せて、年末調整の際に従業員から会社に提出します。

なお、9月以降に繰上返済や借り換えをした場合には、「年末残高(予定額)」と「実際の年末残高」が異なります。その場合は再発行が必要になるため注意しましょう。

住宅借入金等特別控除申告書の書き方

住宅借入金等特別控除申告書の、具体的な書き方を解説します。従業員から質問があった場合でも適切に対応できるよう、しっかり確認しておきましょう。

まずは、申請書の上部の「令和◯年分」の年が合っているかを確認します。住宅借入金等特別控除申告書は控除を適用する年数分がまとめて送られるため、誤って違う年の用紙を使わないように注意が必要です。

その後、会社名や会社の所在地、従業員本人の氏名、住所などを記載します。

続いて、各証明書をもとに控除額を計算していきます。

新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高(1)

12月末日時点のローンの残高を記入します。「住宅のみ」の住宅ローンであればA欄、「土地等のみ」であればB欄、「住宅及び土地等」であればC欄です。2か所以上の金融機関からローンを借りている場合は、合算した金額となります。

住宅借入金等の年末残高(2)

連帯債務者がいない場合は、(1)の金額をそのまま転記します。連帯債務者がいる場合は、申請者の負担する割合と、その負担割合に応じた金額を記入します。

(2)と証明事項の取得対価の額または増改築等の費用の額のいずれか少ない方の金額(3)

(2)の金額と、申告書の用紙下部に記載のある「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」の「取得対価の額(ロ欄+ホ欄)」を比較して、金額が少ない方を記入します。

(3)×「居住用割合」(4)

(3)の金額に居住用の割合を掛けた数字を入れます。例えば、住宅を全て居住用として使用しているなら、用紙下部の住宅借入金等特別控除証明書の「居住用割合(へ欄)」は100%になります。その場合は、(3)の金額をそのまま転記します。

住宅借入金等の年末残高等(5)

(4)の金額を転記します。「住宅のみ」と「土地等のみ」の両方を記入している場合は、2つの(4)の金額を合算した金額を記載します。

特定増改築等の費用の額(6)/特定増改築等の費用の額に係る住宅借入金等の年末残高等(7)

(6)と(7)は、特定増改築等住宅借入金等特別控除を受ける方のみが記載する項目です。該当しない場合は空欄にしておきます。

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額(8)

(5)の金額に、0.7%を掛けた金額を記入します。100円未満は切り捨てです。

住宅ローン控除はいつ還付される?

年末調整を行った住宅ローン控除の還付金は、一般的に、12月の給与に上乗せされて振り込まれます。また、会社によっては、年末の賞与や1月または2月の給与に上乗せされるケースもあります。

従業員に対しては、還付金をいつどのような形で支払うのか、あらかじめ伝えておきましょう。そのうえで、事前に定めた還付時期に間に合うように年末調整業務を進めていくことが大切です。

住宅借入金等特別控除申告書の内容を知ってスムースな手続きを

住宅ローン控除は、初年度は確定申告で申請しますが、2年目からは年末調整で手続きを行います。住宅ローンを利用している従業員がいる場合は、住宅借入金等特別控除申告書の確認が必要です。最新の変更点や住宅ローン控除の適用要件などを理解し、適切に手続きを進めることが大切です。

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