2023年(令和5年)の年末調整の変更点は?必要な対応などを解説

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

税に関わる制度は、毎年のように改正があります。そのため、年末調整を行うときには、税制改正にも十分注意を払わなければなりません。2023年(令和5年)の年末調整においても、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)に関する見直しなど、いくつかの変更点があります。年末調整をスムースに進められるように、変更点と必要な対応をしっかり把握しておきましょう。

ここでは、2023年(令和5年)の年末調整における変更点と、変更に伴って必要になる対応、2024年以降に予定されている変更点などについて解説します。

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国外居住親族の扶養控除における適用範囲の変更

2023年(令和5年)の年末調整から、扶養控除の対象になる扶養親族のうち、国外居住親族の適用範囲が変更されます。

従来は、国外居住の扶養親族について扶養控除を申告する場合は、国内の扶養親族と同様に「納税者と生計を一にする16歳以上の親族で、年間の合計所得金額が48万円以下」という要件が定められていました。しかし、2023年1月からは、扶養親族のうち、「30歳以上70歳未満の人」が、扶養控除の適用範囲から除外されます。つまり、国外に居住する親族で扶養控除を適用できるのは、その扶養親族が「16歳以上30歳未満」または「70歳以上」である場合に限られるということです。

ただし、下記のいずれかの要件を満たす場合は、30歳以上70歳未満の国外居住親族でも、従来どおり扶養控除が適用されます。

従来どおり扶養控除が適用される要件

  • 留学で国外に居住している人
  • 障害者
  • 扶養控除の適用を受けようとする納税者から、生活費や教育費にあてるために年38万円以上の送金を受けている人

各種申告書の書式変更

年末調整で必要な給与所得者の扶養控除等(異動)申告書や源泉徴収簿も、書式にいくつかの変更点があります。該当の箇所を詳しく確認していきましょう。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の変更点

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、給与所得者である従業員が、扶養控除や配偶者控除などの控除を受けるために必要な書類です。年末調整を行うには、対象となる従業員が申告書を提出していることが前提となります。令和5年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書式には、下記のような変更点がありました。

「控除対象扶養親族」区分に「非居住者である親族」欄が追加

国外居住(非居住者)である扶養親族の適用範囲の変更に伴い、「控除対象扶養親族」区分に「非居住者である親族」欄が追加されました。扶養控除の要件を満たす国外居住親族がいる場合は、「16歳以上30歳未満又は70歳以上」「留学」「障害者」「38万円以上の支払」のいずれかの項目にチェックを入れます。

令和5年分扶養控除等(異動)申告書の非居住者である親族欄

「住民税に関する事項」に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」「寡婦又はひとり親」欄が追加

申告書下部の「住民税に関する事項」に、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が追加されました。扶養対象の配偶者や親族の合計所得金額を計算するとき、所得税では退職金などの退職所得を含みますが、住民税では含みません。そのため、退職金を受け取った配偶者や扶養親族がいる場合、住民税でも控除が適用できるケースがあります。このような場合の適用漏れを防ぐために、退職手当を有する配偶者・扶養親族の情報を記載する欄が追加されました。

また、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」と併せて、「寡婦又はひとり親」欄も追加になっています。これは、退職金の扱いが所得税と住民税で異なることから、寡婦控除やひとり親控除にも影響が出る可能性があるからです。

令和5年分扶養控除等(異動)申告書の退職手当等を有する配偶者・扶養親族欄、寡婦又はひとり親欄

源泉徴収簿の変更点

源泉徴収簿にも変更点があります。年末調整では、正しい所得税額を算出するために、源泉徴収簿をもとにさまざまな計算を行います。国税庁が提供する源泉徴収簿の「扶養控除等の申告」欄が「扶養控除等の申告・各種控除額」欄に変更され、各種控除額を記載する枠が追加されました。なお、源泉徴収簿は法律で義務付けられた帳簿ではないため、源泉徴収税額などが正確に記録されているものなら、賃金台帳で兼用することも可能です。

令和5年分給与所得に対する源泉徴収簿の扶養控除等の申告・各種控除額欄

2023年度(令和5年度)の税制改正では書類の電子交付に関する変更も

2023年度(令和5年度)の税制改正では、給与明細の電子交付に関する変更点がありました。

これまで、給与明細や源泉徴収票などを従業員に電子交付するときには、必ず事前に従業員の同意を得なければなりませんでした。しかし、2023年度(令和5年度)の税制改正によって、「給与支払明細書」および「給与所得の源泉徴収票」については、企業が従業員に同意を得ようとした際、「企業が定める期限までに回答がない場合は承諾があったものとみなす」旨をあらかじめ通知したうえで、期限までに回答がなかった場合は、電子交付の承諾があったものとみなして良いことになりました。

この改正は、2023年4月1日以降に行う通知について適用されています。

住宅ローン控除における2023年(令和5年)分の年末調整への影響

2022年度(令和4年度)の税制改正によって、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)に関する見直しが行われました。住宅ローン控除は、初年度は従業員本人が確定申告を行い、年末調整で手続きができるのは2年目からとなります。そのため、年末調整には、2023年(令和5年)分から改正内容が影響してくることになります。

住宅ローン控除の変更は、従業員が年末調整で提出する住宅借入金等特別控除申告書の内容などに関わってくるため、2022年度(令和4年度)の税制改正の主な変更点を再確認しておきましょう。

控除期間が最大13年へ延長

新築住宅を取得した場合の控除期間が、10年から13年に延長されました。なお、中古住宅は10年のまま変更はありません。

借入限度額が住宅性能・居住開始年別に変更

住宅ローン控除の借入限度額が、住宅性能や居住開始年別に細かく設定されるようになりました。新築住宅、中古住宅共に、環境性能が高いほど多くの控除を受けられることになります。また、控除限度額は、入居を開始した年によっても変わります。

住宅性能・居住開始年別の借入限度額は、下記の表のとおりです。なお、2024年1月以降に建築確認を受ける新築住宅で住宅ローン控除を受けるには、省エネ基準適合が必須条件となります。

住宅ローン控除の概要[2022年度(令和4年度)税制改正後]
新築/既存等 住宅の環境性能等 借入限度額 控除期間
2022~2023年
入居
2024~2025年
入居
新築住宅買取再販※1 長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 13年間※2
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅※2 3,000万円 0円※2
既存住宅
(中古住宅)
長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円 10年間
その他の住宅 2,000万円
  • ※1宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋。
  • ※2省エネ基準を満たさない住宅。2024年以降に新築の建築確認を受けた場合、住宅ローン減税の対象外(2023年末までに新築の建築確認を受けた住宅に2024~2025年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年間)。

下記に、住宅ローン控除を受けるための主な要件を記載しますので、控除の概要と共に併せて確認してください。

住宅ローン控除を受けるための主な要件

  • 自らが居住するための住宅
  • 床面積が50平方メートル以上※3
  • 合計所得金額が2,000万円以下※3
  • 住宅ローンの借入期間が10年以上
  • 引き渡しまたは工事完了から6か月以内に入居
  • 1982年以降に建築または現行の耐震基準に適合 など

適用対象となる入居期限を4年間延長

住宅ローン控除の適用対象となる入居期限が4年間延長されました。従来、控除を適用するには、2021年12月末までに入居する必要がありました。改正後は、この入居期限が4年間延長され、2025年12月末までに入居すれば控除を受けられるようになりました。

控除率が1%から0.7%へ引き下げ

住宅ローン控除の控除率が、年末時点のローン残高の1%から、0.7%へ引き下げられました。改正前に比べると、控除額は少なくなったことになります。

所得要件の引き下げ

住宅ローン控除を適用できる人の所得要件が、「合計所得金額3,000万円以下」から「合計所得金額2,000万円以下」に引き下げられました。要件の範囲が狭くなり、所得が2,000万円を超える場合は控除が受けられなくなりました。

2024年(令和6年)以降に予定されている変更点

年末調整では、2024年以降もいくつかの変更が予定されています。変更点を早めに確認し、適切に対応できるよう、準備を進めておきましょう。

送金関係書類の範囲の変更

国外居住の扶養親族について扶養控除を受ける際には、親族関係書類や送金関係書類など、所定の確認書類の提出が必要です。このうち、送金関係書類に電子決済手段の移転による支払いを証明する書類が2024年以降追加され、使用できる書類の範囲が広がります。

給与所得者の保険料控除申告書の変更

生命保険料控除や地震保険料控除といった、保険料控除を受けるために必要な給与所得者の保険料控除申告書に変更が予定されています。

2024年10月1日以降の提出分は、保険金等の受取人と申告者の続柄などの記載が不要になります。

住宅ローン控除における借入金残高証明書の添付の変更

住宅ローン控除の適用にあたり、年末調整で提出する住宅借入金等特別控除申告書に添付が必要だった借入金残高証明書の提出や提示が不要になります。

これは、2023年1月1日以降に取得した住宅に適用される内容で、2024年以降の確定申告や年末調整では証明書が必要なくなります。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載方法の変更

年末調整の提出書類である給与所得者の扶養控除等(異動)申告書について、記載事項について前年の申告内容から変更がない場合は、変更がない旨の記載のみで提出が可能になります。

この改正は、2024年の年末調整で従業員から提出を受ける、2025年(令和7年)分の申告書から適用されます。

年末調整は早めの準備が大切

年末調整は、毎年の税制改正に伴いさまざまな変更があります。細かな変更点が多いため、見落としのないように早めに準備を進めておく必要があります。

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  • 本記事は「弥報Magazine」2020年7月号で掲載した内容の一部を再編集したものです。

この記事の監修税理士法人古田土会計
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